◇「問題行動」をどう捉えるか
強度行動障害の状態にある方への支援について、
👉ポジティブ行動支援(PBS:Positive Behavior Support)
をご紹介したいと思います。
他害、自傷、物損、パニック。
こうした行動が起きたとき、
・「悪いことだと分からせる」
・「我慢させる」
・「力ずくで制止する」
という対応では、根本的な解決にはなりません。
むしろ、
本人の不安や恐怖を強め、
状態を悪化させるおそれがあります。
では、どうすればよいのでしょうか。
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◇行動には「理由」がある
PBSは、応用行動分析(ABA)の知見を基礎とし、
行動の背景にある理由を理解して、
本人の生活の質(QOL)を高める支援の考え方です。
行動の背景にある機能は、代表的には次の4つに整理されます。
① 要求・獲得:欲しいものや、やりたいことがある。
② 回避・逃避:嫌なことや、不快な刺激から逃れたい。
③ 注目・関わり:誰かに気づいてほしい、関わってほしい。
④ 感覚的な要因:特定の感覚を得たい、不快感を和らげたい。
例えば、言葉で「やめて」と伝えることが難しい人が、
相手を叩いてしまう。
その行動は、
本人にとって切実な意思表示なのかもしれません。
ただし、すべての行動が意思表示とは限らず、
痛みや体調不良、過去のトラウマなども考慮する必要があります。
大切なのは、
👉「どうやって行動をやめさせるか」ではなく、
「なぜ、その行動が起きているのか」
を考えることです。
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◇PBSの基本は「予防」と「代替手段」
PBSでは、
行動が起きてから対処するよりも、
起きにくい環境をつくることを重視します。
基本的な取り組みは、次の3つです。
① 環境を調整する
大きな音や強い光を避ける。
予定を分かりやすく伝える。
疲れているときには無理をさせない。
本人が安心できる環境を整えます。
② 別の伝え方を身につける
「やめて」
「休みたい」
「これが欲しい」
こうした意思を、
言葉、カード、ジェスチャーなど、
本人に合った方法で伝えられるよう支援します。
③ 本人の意思表示に適切に応える
本人が「休みたい」と伝えたら、
きちんと休めるようにする。
その経験を積み重ねることで、
より安全な意思表示が使いやすくなります。
もちろん、
危険な行動が起きた場合には安全確保が必要です。
しかし、
本人の苦痛や切実な要求まで無視することが、
PBSではありません。
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◇「行動をなくすこと」が目的ではない
PBSの目的は、
支援者にとって都合の悪い行動をなくすことではありません。
・本人が安心して生活できること。
・自分の意思を伝えられること。
・好きな活動を楽しめること。
そして、何より…
👉本人の生活の質が高まることです。
👉行動障害を減らすことは「手段」であって「目的」ではないのです。
この順番を間違えてはいけないと思います。
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◇虐待によって、さらに状態が悪化することもある
私の長男は、
過去に障害者支援施設で虐待を受け、
PTSDを発症しました。
その経験から、感じることは……
叱責や威圧、
力ずくの対応によって、
本人が支援者を恐れるようになれば、
支援そのものが不安の原因になってしまいます。
本来、
安心を提供するはずの支援が、
恐怖を生み出してしまう。
これでは、
何のための支援なのか分かりません。
強度行動障害は、
本人の人格ではなく、
様々な要因によって行動上の困難が強く表れている
👉「状態」
です。
だからこそ、本人を変えようとする前に、
支援のあり方や環境を見直すことが必要なのです。
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◇国の研修でも、PBSにつながる考え方で行われています。
現在、国の強度行動障害支援に関する研修でも、
PBSにつながる考え方となっています。
本人の障害特性や行動の背景を理解する。
行動の原因となる環境を調整する。
本人に合ったコミュニケーション方法を支援する。
こうした科学的な支援方法が重視されているのです。
しかし、残念ながら、
すべての現場で実践されているとは限りません。
いまだに叱責や威圧、
力ずくの制止によって、
本人を従わせようとする支援が行われることもあります。
”言葉”は優しくしようとも…同様です。
国が示している支援の方向性と、
実際の支援現場との間に、
まだ隔たりがあるのではないでしょうか。
研修で学んだ知識を、
実際の支援に結びつけることが重要なのだと思います。
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◇支援者全員が同じ理解を持つこと
PBSを実践するためには、支援者間の連携も欠かせません。
ある支援者は本人の意思を尊重する。
別の支援者は叱って従わせようとする。
これでは、本人は混乱します。
行動の背景をアセスメントし、
支援方法を共有し、
実践した結果を確かめながら改善する。
支援者個人の経験や勘だけに頼るのではなく、
チームとして取り組む必要があります。
また、
行動の背景にPTSDなどがある場合には、
トラウマに配慮した支援や医療との連携も重要です。
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◇支援の出発点は「権利擁護」
PBSは、単なる行動改善の技術ではありません。
私は、
👉その土台に本人の尊厳と権利擁護
がなければならないと思っています。
本人を支援者の思いどおりに動かすのではない。
本人が何に困っているのかを理解し、
安心して暮らせるようにする。
そのために、科学的な知見を活用する。
これが、
本来の専門的支援ではないでしょうか。
強度行動障害の状態にある方は、
👉「困った人」ではなく、「困っている人」
なのです。
叱って従わせる支援から、理解して支える支援へ。
PBSの考え方が、研修の中だけではなく、
すべての支援現場に根づいてほしい。
切に、そう願っています。
