◇「聴く」ことは簡単なのでしょうか

以前、
「コーチング」のセミナーに参加して、
 

👉「傾聴」

 

の訓練を、
かなり本格的にしたことがあります。


それまで私は、
どちらかというと、

👉「話す能力が不足している」

と思っていました。

だから、まずは、

👉「聴く力」を身につけよう

と思ったのです。


ところが、
実際に訓練してみると、
これが、
とても難しい。

私は今では、
場合によっては、
話すことよりも、きちんと聴くことの方が難しい
と思っています。



◇傾聴とは「聴き届ける」こと

「聴く」というと、
なんとなく、
「受動的な行為」のように感じます。

相手が話す。
自分は黙っている。

だから、
話す側より、
聴く側の方が楽そうです。

でも、
本当の傾聴は、
そんなものではありません。

私は、傾聴とは、

👉相手の話を「聴き届ける」こと

だと思っています。

ただ音声として聞くのではありません。
相手が、

 

・何を経験したのか
・何を考えているのか
・何を伝えようとしているのか

それを、
できるだけ正確に受け取る。

そのためには、
かなり頭を使います。



◇私は頭の中に「絵」を描きながら聴きます

私が人の話を聴く時に、
意識していることがあります。

まず、

👉相手の話そのものに”興味”を持つ

そして、
適切に「相槌」を打ちながら、
相手が話していることを、
自分の頭の中で、
 

👉一つの「イメージ」

 

にしていきます。

・誰がいたのか
・どこで起きたのか
・何が起きたのか

その時、
相手はどう考えたのか。

話を聞きながら、
頭の中に、
少しずつ一枚の絵を描いていくような感覚です。



◇「靄」が出てきたら、質問する

ところが、
話を聴いていると、
時々、
頭の中のイメージに、

👉「靄(もや)」

がかかります。

「ここがよく分からない」
「この話と、さっきの話はどうつながるのだろう」
「この言葉は、どういう意味なのだろう」

そんな部分です。

そこで、
追加の質問をします。

「〇〇については、こういう理解でよいですか?」
「そこを、もう少し具体的に教えていただけますか?」

すると、相手は、
さらに詳しく話してくれます。

そうすると、

「なるほど!」と、
頭の中にあった靄が、
少しずつ消えていく。

私は、

👉黒板の靄を、黒板消しで少しずつ消していく

ような感覚で、
話を聴いています。

これを、
何度も繰り返します。



◇最後に、自分の言葉で返してみる

そして、最後、
相手の話を、
自分なりに整理して、
自分の言葉で言い換えてみます。

👉「つまり、こういうことなのですね?」

と……


そして、相手から、

👉「そうそう、そうなんですよ」ウインク

という言葉が返ってきたら、
私は、

👉「よし、きちんと聴き届けることができた」

と思います。

これは、


👉「積極的傾聴」(active listening)

 

で使われる、

・言い換え(paraphrasing)

・要約(summarizing)、
・確認(clarification)

 

といった技法にも通じる方法です。

弁護士の依頼者面談についても、

active listeningによって、

依頼者が「自分の話を理解してもらえた」と感じることが、

重要な情報を引き出すうえでも意味を持つと論じられています。

ただ……

そのような弁護士は、

私の経験上、かなり少数派だと思いますが。
実際に、active listeningの訓練をしている弁護士は、

どのくらいいるんでしょうかね……




◇裁判でも「聴く力」の大切さを感じました

実は最近、
裁判に取り組む中でも、
この「聴く力」の重要性を、
強く感じることがありました。

詳しいことは、
まだ係争中ですので書きません。

ただ、私自身、
弁護士の先生とのコミュニケーションで、

「もう少しこちらの話をきちんと聴いてもらえたら」

と思い、
とても苦労した経験がありました。

専門家は、専門知識を持っています。
法律なら、法律の知識。
医療なら、医学の知識。
税務なら、税務の知識。

でも、

その専門知識を使う前に、

👉「そもそも、目の前の人に何が起きているのか」

を正確に把握しなければなりません。
その入口にあるのが、

👉「聴く力」

 

というスキルなのだと思います。



◇専門能力が高くても、「入力」を間違えたら

これは、税理士である私にも、
そのまま当てはまります。

どれだけ税法を知っていても、
お客様の話をきちんと聴けず、
取引の実態を間違って理解してしまえば、

その後に、
どれほど高度な税務知識を使っても、
正しい結論にはたどり着けません。

👉入力が間違っていれば、出力も間違う

これは、AIと同じです(笑)。

弁護士も、医師も、
税理士も、その他の専門家も、
同じなのではないでしょうか。

専門能力が高ければ高いほど、
その能力を正しく使うための、

👉「聴く力」

が必要になる。

私は、そう思っています。

医療分野でも、

最近の研究では、医師がしっかり話を聴くことで、

患者の信頼や満足度がぐっと高まることが分かっています。




◇「聴く力」は訓練できる

そして、
もう一つ大切なのは、

👉傾聴力は、訓練することができる

ということです。

「あの人は聞き上手だから」
という、
生まれつきの性格だけではありません。

・寄り添う
・質問する
・確認する
・言い換える
・要約する
・相手の反応を見る

こうした行動は、
意識して練習することができます。

実際、医療分野では、

コミュニケーション訓練を受けた医師において、

コミュニケーション行動が改善したという研究が蓄積されています。

だからこそ、
専門職の教育でも、
専門知識と同じくらい、
こうした訓練が重要なのではないかと思います。

しかし、残念ながら、

「聴く力」の訓練をしている専門家は、
少数派だと思います。

 

皆様もそう思いませんか?




◇私も、まだまだ訓練中です

もちろん、私は、

「傾聴が得意です」

と人に誇れるほどではありません。

今でも、
自分が話したくなってしまうことがあります(笑)

途中で、
「たぶん、こういうことだろう」
と決めつけそうになることもあります。

だから、意識します。
興味を持って聴く。
頭の中に絵を描く。
靄があれば、質問する。
靄を一つずつ消していく。

そして最後に、

自分の言葉で返してみる。

相手から、

ニコニコ「そうなんですよ~」

と言ってもらえたら、
ようやく、
聞き届けることができた。

👉「話す力」だけではなく、「聴く力」を

人を相手に仕事をする以上、
私も、
これからも訓練していきたいと思っています。