◇自分が源泉


20代の頃、
私はある経営塾に参加していました。

その経営塾で、教わった、
とても印象に残っている言葉があります。

それが、

👉「自分が源泉」

という考え方です。

自分を取り巻く環境のすべてが、
自分を源泉としている。
そう捉える考え方です。

少し言い換えれば、

👉「当事者意識」

ということになるのだと思います。



◇当事者意識を持つことは難しい

よく、
「当事者意識を持ちなさい」
と言われます。

しかし、
当事者意識を持つことは、
実はなかなか難しいことだと思います。

誰でも、


👉「自分自身」
 

については、
当事者意識を持つことができます。

・自分の健康
・自分の仕事
・自分の人生

これは、
自分ごととして考えやすい。
当然ですよね・・・

自分のことですから。


少し広げて、


👉「家族」

 

についても、
多くの方は当事者意識を

持つことができると思います。

・家族の健康
・家族の幸せ
・家族の将来

これも、
自分ごととして受け止めやすい。



◇輪が広がると「他人ごと」になる

ところが、
その輪をもう少し広げて、

・「会社」
・「学校」

となるとどうでしょうか。

途端に、
他人ごとになってしまうことがあります。

・会社の問題
・学校の問題
・組織の問題

もちろん、
大切だとは思う。

しかし、
心のどこかで、

・「誰かがやってくれるだろう」
・「自分だけの問題ではない」

と思ってしまう。

さらに広げて、

・「地域社会」
・「日本」
・「世界」

にまで広げると、
どうでしょうか。

どうしても、
自己中心的な発想になりがち

ではないでしょうか。

・世界の問題は大切です。
・地域の問題も大切です。

しかし、

👉「自分のこと」

 

として感じるのは、
なかなか難しい。

本当は、

 

👉自分も地域社会や世界の一部なのに・・・

これが、
人間の自然な感覚

なのかもしれません。



◇心理学でいう「心理的所有感」

この当事者意識に近い考え方として、
心理学や組織論では、

👉「心理的所有感」(Psychological Ownership)

という概念があります。

実際に所有しているかどうかではなく、

「これは自分のものだ」
「これは自分に関係がある」
「これは自分が大切にすべきものだ」

と感じる心理です。

人は、
自分のものだと感じるものに対して、
関心を持ちます。
よく見ます。
よく考えます。

そして、

自然と責任を感じるようになります。

逆に、
自分とは関係がないと思えば、
見えているはずのものも見えなくなります。
気づけるはずのことにも気づけなくなります。



◇松下幸之助さんの逸話

松下電器の創業者である松下幸之助さんには、
このような趣旨の逸話が紹介されています。

ある日、
部下と、うなぎを食べに行ったとき、
 

松下さんが、


👉「この店は私の店や」
 

という趣旨のことを言われたそうです。

部下は、
松下電器は飲食店まで始めたのか、
と驚いた。

しかし、

実際に松下さんが

そのお店を経営していたわけではありません。

松下さんは、
まったく他人の店であっても、
自分の店だと思って見る。

そうすると、
いろいろなことに気づく。
お店の良いところも見える。
改善点も見える。
そして、
料理もより美味しく感じられる。
 

その方が得ではないか。
そのような意味のことを言われたとされています。

この逸話が、
私はとても好きです。



◇自分の店だと思うと景色が変わる

確かに、
他人の店だと思って食事をすれば、
私たちは単なるお客さんです。

・味がどうだった
・接客がどうだった
・値段が高いか安いか

その程度の見方になりがちです。

しかし、

これを、

👉「自分の店だったら」

と思って見ると、
景色が変わります。

・この照明は良いな。
・この接客は気持ちが良いな。
・このメニューの見せ方は分かりやすいな。
・ここは少し改善できるかもしれない。
・お客様はここで少し迷っているな。

そういうことに気づき始めます。

ちょっと助言してあげようか。

そんなことさえ感じます。

同じ店にいても、
見えている世界が変わるのです。



◇当事者意識とは、世界の認識を変えること

当事者意識とは、

👉世界の認識を変えること

 

なのだと思います。

これは自分に関係がある。
これは自分の人生とつながっている。
これは自分が少し良くできるかもしれない。

そう思った瞬間に、
人は観察を始めます。
考え始めます。
行動が変わります。

もちろん、
いきなり”世界全体”を自分ごとにするのは

難しいと思います。

そんなことをすれば、
心が疲れてしまいます。

だから、
大切なのは、
ほんの少しだけ、

少しずつ、輪を広げることだと思います。

・自分から家族へ
・家族から会社へ
・会社から地域社会へ
・地域社会から日本へ

一気に広げる必要はありません。
少しだけでよいのです。



◇自分が源泉という考え方

自分が源泉であるならば、
自分の見方を変えることで、
世界の見え方も変わる。

自分の関わり方を変えることで、
周囲との関係も少し変わる。

自分の一言、
自分の態度、
自分の行動が、
小さな波紋のように広がっていく。

そう考えると、
人生は少し豊かになるように思うのです。

私たちは、
どうしても自己中心的になります。

それは、
人間として自然なことです。

しかし、

そこでほんの少しだけ、
自分ごととして考えてみる。
 

この少しの視点の移動が、
とても大切なのだと思います。



◇人生を豊かにするために

私たちの人生は、
一回きりです。
 

せっかくなら、
少しでも豊かに生きたい。

そのためには、
自分のことだけに閉じこもるよりも、
少しだけ当事者意識の輪を広げた方が、
きっと楽しいのだと思います。

他人の店も、
自分の店だと思って見てみる。

会社の課題も、
自分の課題だと思って少し考えてみる。

地域の出来事も、
自分の暮らしとつながっていると思ってみる。

すると、
世界は少し違って見えてきます。

もしかすると、
うなぎも少し美味しく感じるかもしれません。