ワーグナーというと、巨大な劇場、
神話、権力、思想、革命、楽劇、
というイメージがありますよね![]()
《ニーベルングの指環》
《トリスタンとイゾルデ》
《パルジファル》
その音楽は、
人間の情念や世界の運命まで飲み込むような、
巨大な力を持っています。
しかし、
ワーグナーにも、
私的な生活があって、
それを教えてくれる曲があります。
👉《ジークフリード牧歌》
です。
⸻
◇愛する妻の目覚めのために書かれた音楽
《ジークフリード牧歌》は、
ワーグナーが妻コジマのために作曲した、
私的な音楽です。
1870年12月25日の朝。
スイス・ルツェルン湖畔のトリープシェンの邸宅で、
その日誕生日の、
コジマが目覚める朝に、
家の階段で、
友人たちによって演奏されたと伝えられています。
つまりこれは、
たった一人の妻のために書かれた、
極めて私的な曲なのです。
⸻
◇コジマの様子を想像すると・・・
私はこの逸話を知るたびに、
コジマはどのような様子で、
この曲を聴いたのだろうか、
と想像してしまいます![]()
誕生日の静かな朝
自宅の階段から聴こえてくる音楽
最初は夢の中で聴こえたのかもしれません。
やがて目が覚め、
それが自分のために
用意された音楽だと分かる。
愛する夫が、
自分の誕生日のために、
友人たちを集め、
家の中でこの曲を初演している。
そのことに気づいた瞬間、
コジマはどのような表情をしたのでしょう。
・驚いたのか。
・微笑んだのか。
・涙ぐんだのか。
その姿を想像すると、
聴いているこちらまで、
何となく幸せな気持ちになりませんか![]()
皆さんは曲を聴いて、
コジマのどのような
表情を想像しますか?![]()
⸻
◇私的なワーグナー
私は、
この曲を聴くたびに思います。
ここにいるワーグナーは、
妻と子を想う、
一人の人間です。
家庭の中にある静かな幸福。
朝の光。
子どもの誕生。
愛する人が目覚める時間。
そうした、
日常の中にある小さな幸せが、
この曲の中には満ちています。
木管の柔らかい響き。
弦楽器の穏やかな流れ。
遠くから聴こえてくるようなホルン。
そのすべてが、
朝の光の中に少しずつ溶けていくように感じます。
静かな幸福を、
そっと表現してくれる音楽ですよね。
⸻
◇私の大学時代の記憶
私は大学時代、
「ジュネス」というオーケストラで、
この《ジークフリード牧歌》を
演奏したことがあります。
会場は、
NHKホールでした。
指揮は、
有名な指揮者である現田茂夫先生。
私はクラリネット奏者として、
この曲の中にいました。
今でも、
・現田先生の華麗な指揮
・NHKホールの照明
・客席に広がる大勢のお客様
・ステージの空気。
学生だった私にとって、
それはとても大きな経験でした。
⸻
◇若い頃には分からなかったもの
あの頃の私は、
まだ学生でした。
もちろん、
この曲が
ワーグナー作曲の曲なのに、
とても優しい雰囲気の曲であることは
分かりました。
穏やかで、
柔らかくて、
どこか幸せな音楽だということも感じていました。
曲の由来も、
現田先生が練習の中で、
話してくれたように思います。
しかし、
家族をもち、還暦を迎える
今になってみると、
この曲に込められた
ワーグナーの思いが、
より深く胸に入ってくるように感じます。
この曲が表現しているように、
何気ない日常を大切にしていきたいですね。
