◇会計帳簿の「自己報告機能」
先日の記事では、
商法第19条第2項に、
次のような規定があることをお話ししました。
👉 商人は、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。
そして、
適時に記帳された会計帳簿には、
高い信頼性が生まれ、
証拠価値があることをお伝えしました。
今回は、
その続きです。
会計帳簿には、
もう一つ大切な機能があります。
それが、
👉「自己報告機能」
です。
⸻
◇結果だけを見れば良いのか
経営に役立つのは、
最終的な会計データである。
だから、
決算書や試算表だけ見ればよい。
そう考える方もいらっしゃるかもしれません。
もちろん、
決算書や月次試算表は大切です。
しかし、
それだけでは足りないのです。
複式簿記に基づき、
日々、コツコツと、
適時に記帳された会計帳簿そのものにも、
経営を変える力があります。
それが、
会計帳簿の自己報告機能なのです。
⸻
◇レコーディングダイエットと同じ
分かりやすい例があります。
レコーディングダイエットです。
日々、
・食べたもの
・飲んだもの
・摂取カロリー
などを記帳することで、
自分の食生活を見える化し、
行動変容につなげる方法です。
例えばある日、
生ビールを5杯飲み![]()
チャーハン、ラーメン、餃子など![]()
炭水化物系をたくさん食べてしまったとします。
摂取カロリーも、
3,000キロカロリーを超えてしまった![]()
これを、日々記録していると、
翌日・・・・
私たちは、
自然と行動が変わります。
・「今日は休肝日にしよう」
・「炭水化物は控えよう」
・「良質なたんぱく質を少量にしよう」
・「カロリーを1500キロカロリーに抑えよう」
このような行動変容です。
⸻
◇記録するから客観視できる
頭の中だけでも、
昨日食べたものを思い出すことはできます。
しかし、
頭の中で思うことと、
実際に記録として目にすることは、
まったく違います。
帳簿の形にして、
目の前に出す。
数字として見る。
一覧として見る。
すると、
自分の行動を
👉「客観視」
できるようになるのです。
この「客観視」こそが、
行動変容を生むのです。
⸻
◇経営も同じ
これは、
経営でもまったく同じです。
日々、
適時に会計帳簿を記帳していると、
経営者は気づきます。
・「あれ?、今月は経費を使いすぎているな」
・「あれ?、売上が少し落ちてきているな」
・「あれ?、売掛金の回収が遅れているな」
・「あれ?、資金繰りが少し詰まりそうだな」
このように、
👉 帳簿が経営者に語りかけてくるのです。
このはたらきが、
👉 会計帳簿の自己報告機能です。
⸻
◇小さな会社ほど効果がある
特に小さな会社では、
社長自らが会計帳簿を記帳することに、
大きな意味があります。
日々の数字に社長自身が触れること。
月次の数字を自分の目で確認すること。
これは非常に大切です。
数字に触れることで、
経営の感覚が研ぎ澄まされていきます。
⸻
◇数か月分まとめて記帳しても意味がない
ここで、
レコーディングダイエットの話に戻ります。
もし、
毎日の食事記録を、
どこかの代行業者に委託して、
数か月分まとめて記録してもらったらどうでしょうか。
もちろん、
👉 痩せることはありません。
なぜなら、
食べたその時に記録していないからです。
記録を見て、
翌日の行動を変えることができないからです。
つまり、
👉 適時性を失っているからです。
これは会計帳簿も同じです。
数か月分まとめて記帳しても、
税務申告のための資料にはなるかもしれません。
しかし、
自己報告機能が働かないため、
経営を変える力は弱くなります。
⸻
◇だらしない帳簿は経営をダメにする
ドイツ税法学の権威であるクルーゼ教授の言葉として、
👉「だらしのない帳簿の記帳は破産者の特徴である」
(Die unordentliche Buchführung ist das Merkmal des Gemeinschuldners)
という言葉があります。
この言葉は、
とても厳しい言葉です。
しかし、
本質を突いていると思います。
だらしない帳簿は、
経営の現状を正しく映しません。
現状を映さなければ、
経営者は気づくことができません。
気づくことができなければ、
行動を変えることができません。
行動を変えることができなければ、
経営は望ましい方向には進まないのです。
⸻
◇会計帳簿は経営者に語りかける
会計帳簿は、
単なる記録ではありません。
適時に、正確に、
日々作成されることで、
経営者に語りかけてくれます。
今、会社はどこにいるのか。
どこに問題があるのか。
何を変えなければならないのか。
そのことを、
静かに教えてくれるのです。
適時に記帳しなければ、
レコーディングダイエットが効果を発揮しないように、
会計帳簿もまた、
経営を変える力を失ってしまいます。
適時に、正確に。
商法第19条は、
この当たり前の積み重ねが、
会社を守り、
会社を強くしていくのだということを
示しているのです。
