◇商法に定められた「適時性」

商法第19条第2項には、次のような規定があります。

👉 商人は、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。

私は税理士として、

この条文をとても大切にしています。

なぜなら、
この短い条文の中に、
商売を長く続けるために大切なことが、

詰まっているからです。



◇なぜ「適時性」が求められるのか

会計帳簿の記帳には、
正確性だけではなく、


👉「適時性」

 

も求められています。

「適時性」とは、
現金取引は、その日のうちに、
売掛金や買掛金などの信用取引は、

翌月末までに記帳することを、

目安としています。

では、

なぜ「適時性」が必要とされるのでしょうか。

それは、


適時に記帳された会計帳簿には、

👉 高い”信頼性”が生まれるからです。



◇後から作った帳簿は信用されない

例えば、毎日こまめに、

現金出納帳を記帳しているとします。

その帳簿は、
その時々の事実を記録しています。

一方、

一年分の現金出納帳を、

決算の時にまとめて記帳した場合は、

どうでしょうか。

そこには、

・記憶違いもあります。
・記録漏れもあります。

・日々の残高を合わせるのは不可能です。

場合によっては、

・後から都合よく作り変えることもできてしまいます。

つまり、

帳簿としての信頼性が、

大きく違ってしまうのです。

「適時に」作成された帳簿だからこそ、
改ざんすることが困難になり、
「証拠価値」が生まれるのです。



◇裁判でも”証拠”がものを言う

私は現在、

ある裁判を続けています。

その中で痛感することがあります。

それは、

👉「記録は”その時に”残して初めて証拠になる」

ということです。

・会議録
・支援記録
・ケース記録

・日報


そして

 

・会計帳簿

いずれも、
その時点で、適時に、

作成されたものだからこそ、
証拠価値のあるものとして、

評価されます。

後から思い出しながら作成したものは、
もはや「記録」ですらなく、

参考資料にはなっても、
「証拠」にはなりません。



◇適時な記帳は倒産防止につながる

商法が適時な記帳を求めている理由は、

債権者を保護するためです。

 

また、同時に

商人自身を守るためでもあります。


適時に帳簿が作成されていれば、
それに基づく会計データは、

👉 信頼に値する情報として

経営の現状を見せてくれます。

・利益が出ているのか。
・資金繰りは大丈夫なのか。
・売掛金は回収できているのか。

そして、トラブルが発生した時に、

・早期に発見することができます。

・証拠として使用することができます。

つまり、

適時な記帳は、
倒産防止のための

重要な仕組みなのです。



◇会計帳簿は経営者を守る

会計帳簿というと、
税務署のために作るものだと思われがちです。

しかし、
本来は違います。

会計帳簿は、
経営者自身を守るためにあります。
商取引のトラブルから守る。
経営判断を誤らないために守る。

そのために、

👉適時に、正確に

 

記帳することが求められているのです。

 

 

そして、

実は、適時に作成された会計帳簿には、

もう一つ重要な役割があります。

 

👉 それが「自己報告機能」です。

 

この続きは、またお話ししたいと思います。