子どもや、障害のある方に対して、
「厳しく躾けなければならない」
という言葉を、今でもよく耳にします。

例えば

やってはいけないことは
きちんと叱って教えなければならない。


甘やかすと社会に出て困る。

というものです。

だから
厳しく躾けることが必要だ。

このような論調です。



しかし私は、この考え方には
とても大きな違和感を持っています。

そして、様々な研究を調べてみても、
実はこの「厳しく躾ける」という方法には

それが効果的であるという明確な科学的エビデンスが、

ほとんどありません。


むしろ心理学や発達科学の分野では、


強い叱責や罰を中心としたしつけは、

長期的には逆効果になる可能性が高い


という研究が数多くあります。



◇「叱る教育」は本当に効果があるのか

発達心理学では、
親や教育者の関わり方は大きく4つに分類されます。


・権威主義型(厳格で罰中心)
・権威的養育(ルールはあるが説明と対話がある)
・放任型
・無関心型


この中で最も良い結果が出るのは、

権威的養育(Authoritative parenting)

と言われています。


これは

・ルールはある
・しかし威圧しない
・説明する
・子どもの理解を促す

という関わり方です。


一方で、

「厳しく叱る」「罰を与える」ことを

中心とする教育は、

・不安の増大
・攻撃性
・自己肯定感の低下

と関連することが多いと報告されています。

つまり


「厳しく躾ける」という方法は、

科学的根拠が乏しいのです。



◇日本社会に残る「躾の神話」

では、なぜ日本では

「厳しく躾けることが必要だ」

という考えが、これほど強く残っているのでしょうか。


その背景には、

日本社会の歴史的価値観があります。

たとえば

・軍隊教育
・家父長制度
・昭和型の学校教育

そして、もう一つ大きいのが

「儒教思想」の影響です。


江戸時代、徳川幕府は

 

万人による闘争状態であった

戦国時代を乗り越えて
社会秩序を安定させるために

朱子学(儒教)

を統治思想として推奨しました。

明治以降も

この価値観が再解釈されて、

「規律=厳しさ」と言う図式が、

強化された側面もあると思います。



そこでは

・長幼の序
・上下関係
・親への絶対的服従

といった価値観が重視されました。

つまり


上の者が
下の者を
厳しく統制する


という社会構造です。

この価値観は、長い年月をかけて

家庭
学校
組織

の中に深く入り込みました。


そして

「厳しく躾けることは善である」

という社会的な空気を作っていったのだと

私は思います。



◇障害支援の世界では危険な発想

この考え方は、
特に障害のある方への支援の場面では
大きな問題を生むことがあります。

 

その代表的なものが、

二次障害である

「強度行動障害」の状態を

作り出してしまうことです。



現在、世界の支援の主流は


ポジティブ行動支援(PBS)


という考え方です。

これは

いわゆる「問題行動」を叱るのではなく

・なぜその行動が起きるのか
・どんな不安があるのか
・どんな環境が影響しているのか

を分析し、

環境を調整することで行動を変えていく

というアプローチです。


つまり

「叱る」のではなく

理解する

という方法です。



◇一番大切なもの

私が最も大切だと思っているのは、


「自己肯定感」を毀損しないことです。


人は、
否定され続けると
自分の行動を見直す力を失います。

しかし、

尊重され
安心できる環境の中にいると、

人は自然に

「自分で気づき」
「自分で修正していく」

力を持っています。


本当の意味での成長は、
躾けや恐怖からは生まれません。


安心から生まれるものだと思います。




◇社会が変わる必要がある

「厳しく躾けるべきだ」

という言葉は、

一見すると
正しいことを言っているように聞こえます。

称賛されることさえあります。


しかし、その裏側には

・儒教的な上下関係
・支配と統制
・古い社会構造

が、まだ色濃く残っているのではないでしょうか。
令和になって、

大分、薄れてきたのは好ましいことですが、

さらに、多くの人が気付くべきだと思います。


これからの社会に必要なのは、
厳しい躾け、ではなく

理解と尊重

だと思います。