先日の市民無料税務相談会で出会った、
96歳の「申告納税制度の妖精」さん🧝‍♀️

彼女は、
その日あることに怒っておられました💢

理由は、
 
「青色申告決算書の”用紙”の配布は、今年で最後になる」
「もう税務署では用紙をもらえない」
 
と、税務署の担当者に説明されたことです。

来年からは、

「PDFをダウンロードしてください」😫

とのこと。

96歳の方にとって、
パソコンでPDFをダウンロードし、
印刷して申告書を作成する――

それが現実的でないことは、
誰の目にも明らかです。



■ これは「わがまま」ではありません

まず、はっきり書いておきたいことがあります。

これは、
• 高齢者のわがままでも
• 時代に取り残された人の問題でも
• 本人の努力不足でも

ありません。

社会が生み出した「社会的障壁」の問題です。



■ 障害者差別解消法が対象とする「障害者」とは

障害者差別解消法でいう「障害者」は、
広く定義されていて、
いわゆる身体障害・知的障害・精神障害のある方だけを指しません。

法律が「障害者」として、
対象にしているのは、

本人の心身機能 × 社会の仕組み
によって、権利行使が妨げられている状態の方

です。

96歳の方の場合、
• PCやスマホを所有していない
• 操作が困難
• PDFを印刷できる環境がない

これは本人の能力の問題ではなく、
完全デジタル化という制度設計が作り出した障壁です。



■ デジタル・ディバイドは「社会的障壁」

DX推進そのものを否定するつもりはありません。

しかし、

「原則デジタル」
「紙はもうありません」

と、代替手段を一切用意しないことは、

高齢者や障害のある方に対して、
社会的障壁を放置している状態と言えます。

これは、
障害者差別解消法上の
「合理的配慮の不提供」に該当する可能性が、
極めて高い事案です。




■ 国税庁自身の指針とも矛盾している

実は、国税庁自身が公表している
「障害者差別解消法に基づく対応要領」には、
次のような趣旨が明記されています。

• 障害の特性に応じた柔軟な対応
• 代読・代筆・分かりやすい説明
• 書類作成の補助

つまり、

「画一的な対応をしてはいけない」

と、国税庁自身が定めているのです。

「PDFを自分でダウンロードしてください」
 
という一辺倒の対応は、
この指針の対極にあります。



■ 問題は「結論」ではなく「プロセス」

合理的配慮の本質は、
「必ず紙を用意しなければならない」
という結果論ではありません。

重要なのは、

建設的対話のプロセスです。

本来あるべき流れは、
1. 納税者が「ダウンロードできない」と伝える
2. 行政が事情を理解する
3. 「今回は紙で対応します」「郵送します」と代替案を示す

これをせず、

「決まりですから」

と即答することは、
対話義務そのものの放棄です。



■ 税務署は、より高い遵守水準が求められる

2024年4月から、
民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化されました。

しかし、
公的機関である税務署は、もともと義務の主体です。

しかも、
• 確定申告の場で
• 目の前に96歳の高齢者がいて
• 困難を認識していながら

配慮を行わないとすれば、
差別的取扱いと評価されるリスクは、
決して小さくありません。



■ 税理士として、私が伝えたこと

私はこの件について、

「これは障害者差別解消法上、
合理的配慮の提供義務に抵触する可能性が高い事案です。
必ず上に上げてください」


と、税務署の担当者にお伝えしました。

96歳の方が怒られたのは、
当然だと思います。

それは「感情」ではなく、
極めてまっとうな権利の主張だからです。
 
私は、憤る”妖精さん”こう伝えました。
 
「きっと、税務署さんは、来年も紙を用意してくれますよ」
「困っている人がいることは、必ず伝わります」
 
根拠のある約束ではありませんが、
当然、行われるべき「合理的配慮」だからです。
 
”妖精さん”は、安心した顔をなさって、
お帰りになりました🤗

■ おわりに

申告納税制度は、
国民一人ひとりの協力によって成り立っています。

96歳で、
自ら申告書を書き、
納税義務を果たそうとする方に対して、

「デジタルについて来られないなら、自己責任」

そんな制度であっていいはずがありません。

DXは、
人を置き去りにしないためにこそ、使われるべきものです。

「申告納税制度の妖精」さんは、
とても大切なことを、
私たちに教えてくれたのだと思います。