最近、ニュースを見ていると、
障害者福祉サービス事業所、社会福祉法人、高齢者介護施設などでの

・横領
・金銭トラブル

・不正受給

・虚偽記載
・虐待
・不適切支援

といった報道を、ほとんど毎日のように目にします。

もちろん、
行政のチェック体制が強化された結果、表に出やすくなった
という側面はあるでしょう。

けれど、それだけでは説明がつかない
“共通する心理的な背景” があるように、私は感じています。



◇「モラル・ライセンシング効果」という罠

それが、
「モラル・ライセンシング効果」(Moral Licensing Effect)
と呼ばれる心理です。

 

2000年代初頭に英語圏で報告されたそうです。


簡単に言うと、

「自分は良いことをしている」
「社会的に立派な役割を担っている」

「マナーを守っている」

という意識が、
無意識のうちに

「多少のことは許される」
「これくらいなら問題ない」

「これくらい自分勝手でも良い」

という“免罪符”を与えてしまう心理現象です。

 

実は、私自身も、この心理と無縁ではないと感じています。



■福祉の現場は、特に起きやすい

福祉の仕事は、間違いなく大変です。

・重い障害のある方の支援
・感情労働の連続
・責任の重さ
・人手不足



その中で、

「こんな大変な障害のある人を、家族に代わって支援している」
「自分たちは社会にとって必要不可欠な存在だ」

という思いを抱くこと自体は、
決して悪いことではありません。


しかし、その善意であるはずの心理が、

・お金の扱い
・権限の使い方
・利用者への態度

に対するブレーキを、
少しずつ緩めてしまうことがあります。



■本当に怖いのは「自覚がない」こと

モラル・ライセンシングの最も怖い点は、
本人が、自分の行動を「ひどいこと」だと認識できなくなること
です。

・「このくらい、みんなやっている」
・「自分はこれだけ頑張っている」
・「理解できない方が悪い」

こうした思考が重なり、
気づいた時には、取り返しのつかない行為に至ってしまう。

本人に悪意がないケースほど、
問題は深刻になります。


行政処分がなされた後にもかかわらず、なお

「私たちは悪くない」と言う方々がいる位です。

(私はこの光景を嫌と言うほど見ています)



■必要なのは「メタ認知」

だからこそ、私たちに必要なのは、
「自分も、この心理に陥っているかもしれない」
という
メタ認知(自分を一段上から見る視点) です。

・自分の行動を客観視する
・記録を残す
・第三者の視点を入れる
・自分の「善意」を過信しない


これは、
福祉の現場に限らず、
教育、医療、経営、そして家庭においても同じだと思います。



■善意だけでは、人は守れない

「良い人だから大丈夫」
「志があるから問題ない」

残念ながら、それだけでは人は守れません。

だからこそ、

・法律・制度
・仕組み
・記録
・チェック体制
・対話

・罰則

が必要になります。

それは人を疑うためではなく、
人が人であることを前提に、

従事者の皆様自信を、守るためのものなのだと思います。




福祉という、尊い営みを、
本当に尊いものとして続けていくために。

私たちは時々、
自分の「善意」そのものを、
そっと疑ってみる必要があるのかもしれません。