ちゃんと、僕のこと見なよ。
誤魔化したりしないで。
ちゃんと、僕のことを。
君にする一つ一つの証を。


「ねぇセブルス、何を怒っているのさ?」

ジェームズは肘を立て、掌に顎を乗せながら、隣に座り本に目を落とすセブルスをじっと見ていた。ページを捲るセブルスの指はいつもよりも繊細さに欠け苛立ちを示していた。

「何を…?貴様本気で言ってるのか?」

セブルスは顔は上げなかったものの、様子を伺うに表情を堅くさせているようだった。

「うん、どうして怒ってる?」

「昨日あんなことをしておいて、よくも飄々と……」

やはり顔は上げず、本に目を落としたまま、眉をひくひくとさせ怒りを露わにしていた。

「あんなこと?そんな怒らせるようなことしたかなぁ?」

「当り前だろう!僕を馬鹿にしてるのか?!」

苛立ちも限界に来たのか、大きな音をさせて机を叩き、顔を上げてジェームズを睨む。


「だから、何をしたのか教えてよ」

ジェームズは待っていましたとばかりに、自分に向いたセブルスの腕を掴んで引き寄せた。

「…っ…」

「僕が、君に、何をした?」

セブルスの目をジェームズは射る様にじっと見つめる。この男はこうして人の深い部分に踏み込むときに随分と深い瞳の色を輝かせるのだろうとセブルスは思った。見つめる瞳の力に耐えられずセブルスは目を伏せる。

「…だから…僕に……」

さっきまでの勢いはどこへ行ったのか、セブルスの声は随分と小さく、震えて居た。

「ちゃんと言って、キスしたって」

「わかってるなら…っ!」

「言って、セブルス」

ジェームズの声は優しく、そして逃げ場のない強さを持っていた。

「僕に…キ……キスをした…」

セブルスは口にした言葉の恥ずかしさに顔を背け、掴まれる腕を払おうと必死に力を篭める。が、細い腕はクィディッチで鍛えられたジェームズの力に勝てることなど出来ず。
セブルスが必死になればなるほど、ジェームズも力を篭めて引き寄せる。

「そう、僕は君に、キスをした…」

ジェームズはそう小さく囁いて、俯くセブルスの顎を取って上げさせ、唇を重ねた。
行為を、セブルスの身体に刻み込むように何度も、重ねた。

「何か最近お前達おかしくないか?」


普段と変わらず過ごすある日、
パースがそんなことを言う。


「おかしいところなんてないさ、なぁジョージ?」

「最近お勉強お勉強で疲れが溜まってきているんだよ、パースは」


なんてまたいつものように茶化したりして。
茶化されたパーシーは少し首を竦めて小さく息をつく。

「なら、いいんだけど。まぁ少しおかしくて悪戯が少なくなるくらいがいいんだけどな」

どうやら心配をしてくれいたらしい。
パーシーは憎まれ口を叩きながらも、僕らのことをよく見てくれている。

僕らにはそれが心地良い。


でも、たまに、困る。


僕らにも気付かないことに気づいてしまうから。
僕らが気付きたくないことも、気付いてしまうから。
でもきっと、肝心なことには気付かない。


僕らが君を好きなこと。

いつもの声、いつもの顔、いつもの笑い方、いつもの悪戯。
何も変わった気なんてしない。
二人ともそっくりなのも、変わらない。


「何か最近お前達おかしくないか?」


そう言ったのは一番年の近い兄。
僕らは少し驚いて顔を見合わせた。

「おかしいところなんてないさ、なぁジョージ?」

「最近お勉強お勉強で疲れが溜まってきているんだよ、パースは」

なんて茶化して笑う。
ほら、同じだ。
…そう、思いたい。


違うことはわかってた。
その原因は、自分自身にある。




すきなひとができたんだ。




相手は何を隠そう兄なわけで、
ずっと昔から一緒にいるわけで。
でも、気付いていなかった。
それはきっと僕自身が子供だった証拠。
初めてだった、心が騒ぐ、この気持ちは。


そして何より初めてだった。


もう一人の僕に、秘密にするのが。


秘密にする理由が、僕自身にもわからない。
恥ずかしいから?
君の外に大事な人が出来たのが言いづらいだけ?


いや……


きっと君も、同じ気持ちだから。