「グリフィンドールの勝利ーーーーーーー!!!」
場内にわぁっと歓声が上がる。オリバーは満面の笑みを浮かべハリーとがっちり腕を組んで喜ぶ。
サイッコーーに嬉しそうだ。
……格好いいなと、素直に思う。
僕は自慢じゃないが勉強が出来る。そこが取り柄だって自覚してる。
兄さん達だって勉強が出来ないわけじゃないけれど、好きなものに精通していたり、また違う魅力を持っていて、身内ながらに兄さん達は格好いいと思う。
僕はそうはなれなくて、でも僕にだって出来ることがあるって、そう必死になって勉強した。確かに僕に向いていたのもあるかも知れない。そうして学校では首席になって、人望もそこそこある。僕だからこそこうしていられるって誇りはある。
……けどやっぱり僕には絶対になれないものもあって、そこへの憧れがないわけじゃあない。
彼は……僕と違っていたんだ。
クィディッチの試合で勝った後は、彼のオーラはいつもと違って、輝きが増す。
「オリバー、昨日の試合見たわ!凄かった!」
「私も!物凄く胸がどきどきする試合だったわ!」
そんな彼を周りが放っておく筈もなく。
「ありがとう。皆に応援して貰って頑張れたんだ」
試合のときとは違う、優しい表情は、綺麗な顔立ちをより引き立てる。
文句なく、格好いいのはわかっているんだけれど、どうにも気持ちが落ち着かない。
……それだけが、オリバーじゃないんだぞって、言ってやりたい。
僕とオリバーと、全く違うタイプだけれど、気が付くと仲良くなっていた。
オリバーは人気者だし、僕も周りとはそつなく関係を作ることが出来るから、逆に違うタイプだからこそお互いに気になっていたのかも知れない。四六時中傍に居て、オリバーのことならきっと僕が一番知ってるって、思ってる。
オリバーって、ああ見えて肝心なときに勇気が出ないんだ。
オリバーのことはわかってる。どんなこと考えてるかもわかってる……つもり。
傍に居て、もっと近くに行きたいって僕が思ったときも、オリバーだってそう思っていた。意外と言葉に出すのが苦手で、上手く表せない姿に笑ったっけ。
お互いまだ勇気が出なくって、一緒に歩いてて手の甲が触れ合っただけでどきどきした。
何度も掠る体温。
いっそ握ってくれればいいのにって思って見た君は、僕の方を見ることも出来ずに、顔を少し赤くしながら緊張していた。
……格好悪い。
いつも格好いい君のそんな姿が僕にはとても愛しかった。
手を伸ばして、小指を絡ませると、偶然ではない体温に君は驚いて身体を強張らせた。
「……オリバー…」
そう名を呟いて絡ませた指を催促するように軽く引くと、オリバーは顔を更に赤らめながらも大きな手で握ってきてくれた。
その掌はとても熱かった。
「ねぇねぇ、オリバーってどこに遊びに行くのが好きなの?」
そんなオリバーに興味津々な女の子達に、普段じゃ見れないオリバーも教えてあげたいところだけれど、それはそれで癪だったりもする。
きっとあんなオリバーは、僕しか見たことがないのだから。
「ねぇオリバー、今度のホグズミート週末のとき一緒に―――」
「オリバー、僕はそろそろ寮に戻るけど?」
女の子の言葉を遮るように言葉をかける。
「あ、パーシー待って、僕も戻るから」
オリバーは慌てるように教科書を抱えて準備をする。女の子は不満顔だ。
「えー、もうちょっといいじゃない」
「ごめんね、暫く練習につきっきりだからあまり勉強してなくて、教えて貰う予定なんだ」
申し訳なさそうに嗜めるオリバーに更に詰め寄ることなど出来るわけもなく。
「じゃあ、またね」
笑顔で軽く手を挙げる姿は、完璧だなと思う。
僕以外の前で、そんなに格好よくなくていいのに、なんて思ってることは本人に言えるわけがない。
落ち着かずに早足で寮へ向かう。オリバーは少し遅れて追いかけるように付いてくる。
「パーシー、待ってよ」
勿論聞こえちゃいるけれど、なんだか意地悪したい気持ちになる。
「何か、怒ってる?」
「何も?」
必死で早足で歩いても、足の長いオリバーにとってはそんな大変なことでもなくて、すぐに追いつかれてしまう。
僕がこうして何かしらでムキになっているときは、オリバーは何も言わない。何を言ったらいいのかわからないからだ。でも僕の傍を離れることはしない。ずっと一緒に居てくれる。
何も言わないまま、部屋に着く。
ちらりとオリバーの顔を一瞥すると、やっぱり何を言ったらいいのかわからない困り顔。
「……別に、話してて良かったのに」
「でも…勉強教えてくれるって…」
「別に今でなくても大丈夫だろっ」
本当はこんなことが言いたいわけじゃないのに、素直になれない自分がどうかと思う。
「もしかして……ヤキモチ…?」
図星。
こんな小さなことで妬いて、困らせて、そんな自分は見せたくないと思ってもなかなかそうはできなくて。
「良かった、僕が何か怒らせるようなことしたかと思ったよ」
こんな僕の姿を見て、オリバーはくすくすと笑いを零す。
「だって、……だって、オリバー、君は僕と約束してたのに、女の子に愛想を振り撒いて…」
「愛想って……、でも、こうして一緒に来たよ?」
オリバーは傍に寄り添って微笑みかける。
その笑顔は卑怯だ。
「――――――うん」
それ以上言葉が言えなくて、何だか気恥ずかしくて俯く。
暫く訪れる静寂。
沈黙に耐え切れず、そっと伺うように目線を上げると、ずっと僕の様子を眺めていたらしくオリバーとしっかり目が合ってしまう。
途端に身体の中を何かが走るように熱くなる。
それはどうやら、僕だけではなかったらしい。
さっきまで落ち着いていたのに、じっと見ていた視線を外し、泳がせるオリバー。静寂を打ち破りたいのか、何度も喋ろうとするものの、言葉にならず口が微かに動いている。
何を考えているのか、あの時と一緒で、バレバレだ。
手を伸ばして、ネクタイを引っ張り身体を引き寄せる。突然の行動にオリバーは驚き気味で顔をあげるが、至近距離で合う視線に戸惑い、少し顔を赤らめる。
「パ…パーシー…?」
困惑気味のオリバーに合図を送るように、くい、と再度ネクタイを引く。
「……僕に、恥をかかせないでよ」
小さく呟いて目を伏せると、オリバーは覚悟を決めたように喉を鳴らした。
ゆっくりと、ゆっくりと近付いてくる気配。
そっと触れてくる唇は、優しく、そして微かに震えていた。
その体温は、あの時の手のように熱かった。
君のその体温は、僕だけのものだ。