問題

次の資料に基づいて、(ア)~(オ)に当てはまる適切な語句又は金額を求めなさい。


P社の当期末の連結損益計算書における法人税等調整額は(ア)万円及び非支配株主持分に属する当期純(イ)は(ウ)万円である。

連結株主資本等変動計算書における非支配株主持分の期首残高(エ)万円、当期変動額(純額)(オ)万円である。

なお、法定実効税率30%とする。


1.P社は、前期末にS社の発行済株式の60%を800万円で取得し、連結子会社とした。

その時点のS社の資本金700万円、利益準備金265万円であった。


2.前期末のS社資産のうち土地(簿価400万円)の時価550万円で、当期末に子会社はこの土地を650円で外部へ売却した。

また、備品(簿価300万円)の時価200万円であり、当期末にこの備品に対して減価償却(残存簿価÷残存耐用年数2年)を行った。


3.当期におけるS社の当期純利益は200万円であった。


解答

(ア)30(イ)利益(ウ)12(エ)400(オ)12


解説

1.個別財務諸表上の修正

(1)子会社の資産・負債の簿価と時価の差額に法定実効税率を乗じた金額が税効果額である。

当該税効果額は、法人税等調整額に計上せず、直接評価差額から控除する。

また、時価評価により評価差額が実現した場合には、連結上の損益を修正するためそれに伴い税効果を解消させる。


(2)土地及び備品の評価差額は、それぞれ150万円、100万円に対する税効果額(30%)を控除した額である。

土地について

(借)土地150、(貸))繰延税金負債45、評価差額105である。

備品について

(借)繰延税金資産30、評価差額70(借)備品100である。


2.連結財務諸表上の修正

(1)当期末の投資と資本の相殺消去

以下の連結修正仕訳を行う。

(借)資本金700、利益剰余金

期首残高265、評価差額35、のれん200(貸)子会社株式800、非支配株主持分期首残高400である。

非支配株主持分の額は

(700万円+265万円+35万円)×40%=400万円となる。


(2)土地評価差額の実現

土地を外部へ売却を行うことにより、支配獲得時の含み益を評価している。


①個別上の簿価と連結上の簿価との差額に関する修正

連結上、評価後の時価に基づいて売却損益を計上する。

個別上の土地の売却原価400万円、連結上の土地の売却原価550円、土地の売却価額650万円である。

以下の連結修正仕訳を行う。

(借)土地売却益150(貸)土地150


②上記の修正に係る前期まで計上された繰延税金負債を取り崩して、法人税等調整額を計上する仕訳は(借)繰延税金負債45(貸)法人税等調整額45となる。


③上記に対する非支配株主持分の仕訳は(借)非支配株主持分当期変動額21(貸)非支配株主に帰属する当期純損益21となる。

非支配株主持分の額は

(150万円ー45万円)×20%=21万円となる。


(3)備品評価差額の実現

備品の償却に伴い、支配獲得時の含み損を認識している。

連結上、評価後の時価に基づいて償却費を計上する。


①個別上の償却費と連結上の償却費との差額に関する修正

個別上の備品(簿価300円)に対する減価償却費150円(300円÷2年)、連結上の備品(簿価200円)に対する減価償却費100円(200円÷2年)である。

連結上、以下の連結修正仕訳を行う。

(借)備品50(貸)備品減価償却費50となる。


②上記の修正に係る前期まで計上された繰延税金資産を取り崩して、法人税等調整額を計上する仕訳は(借)法人税等調整額15(貸)繰延税金資産15となる。


③上記に対する非支配株主持分の仕訳は(借)非支配株主に帰属する当期純損益7(貸)非支配株主持分当期変動額7となる。

非支配株主持分の額は

(50万円ー15万円)×20%=7万円となる。


3.当期純利益の振り替え

非支配株主持分への按分の仕訳は、(借)非支配株主に帰属する当期純損益40(貸)非支配株主持分当期変動額40である。


4.連結財務諸表固有の一時差異

連結上の利益が減少した場合には、将来減算一時差異に該当し、連結上の利益が増加する場合には、将来加算一時差異となる。


(1)子会社の資産負債の時価評価により評価差額が生じた場合は、子会社の資産負債の簿価と時価の差額において、評価差益は、将来加算一時差異、評価差損は、将来減算一時差異となる。


(2)連結会社相互間の取引から生ずる未実現損益を消去した場合は、未実現利益の消去に伴い、連結上の利益が減少するため、将来減算一時差異となる。


(3)連結会社相互間の債権債務の相殺消去により貸倒引当金を減額修正した場合は、連結上の貸倒引当金が小さくなるので、連結上の利益が増加するため、将来加算一時差異となる。


5.評価差額の実現

資本連結に際して時価評価した結果、評価差額を生じた資産が売却、償却、決済等により減少した場合、評価差額の実現である。

連結上、これを時価に基づいて計算した損益に修正する必要がある。


(1)評価差額の実現は支配獲得時に計算した評価差額を修正しない。(投資と資本の相殺消去に影響するため)


(2)時価評価により生じた評価差額に係る繰延税金資産又は繰延税金負債を実現した部分だけ取り崩、法人税等調整額を計上する。