問題1
以下の意思決定における差額原価と埋没原価の説明について(ア)~(キ)に適切な語句を記入しなさい。

1.大量注文について値引を要求された受注の可否の意思決定において、その製品の生産するための直接材料費は変動費で(ア)原価である。

労務費について工員に支払われる時間給による賃金は変動費で(イ)原価である。

工員に支払われる固定給による賃金で、受注による残業がない場合、固定費で(ウ)原価でない。

機械の減価償却費(月割額)は経費で固定費である。
既存の機械を使用していれば(ア)原価ではない。

(エ)原価は、ある意思決定が行われても増減しない原価。

2.現在販売している製品に追加加工を行い、その製品を販売する意思決定では、追加加工するために投入された原料費は(ア)原価となる。

特殊な機械で製品を加工する必要がある。この機械を購入して新たに発生する減価償却費や新規工員の賃金(固定給)は(オ)原価となる。

解答
(ア)~(ウ)差額(エ)埋没(オ)差額

解説
1.特殊原価の概念
差額原価収益分析とは、ある意思決定を行った場合、当然ながら収益や原価が影響を受けて増減する。このように収益や原価がある意思決定によって変化した差分を差額収益及び差額原価と呼ぶ。
さらに差額収益から差額原価を差し引いたものを差額利益という。
ある意思決定を行った場合、増減しない原価を埋没原価と呼ぶ。

2.差額原価と埋没原価
直接材料費・原料費、基本給が時間給、ある意思決定によって発生した残業や休日出勤の支払は差額原価になる。

基本給が固定給、ある意思決定によって変化がない加給金や機械や設備による減価償却費は埋没原価である。

3.追加加工の意思決定では、追加加工する際に投入された原料費は差額原価である。
製品を加工するために特殊な機械を購入した減価償却費は差額原価になる。

4.操業度の増減に対して変動しない費用を固定費と呼ぶ。
生産量が増加すると製品単位の固定費負担額が減少し製品に対する売上総利益が増加する。


問題2
製品Aを製造販売し、毎月400万円の利益を計上している。
当社は、製品B、Cを製造販売を検討中である。

それぞれの毎月の利益は150万円、90万円であるが遊休生産能力の関係から1つの製品のみしか製造販売しかできない。

他の条件が等しければ、製品Aを製造販売する場合、機会原価はいくらになるか。

解答
製品Aが選択され、残る製品B、Cのうち、その最大の利益をもたらす製品Bの150万円の利益が機会原価となる。

解説
機会原価とは、複数の代替案があるときに、ある代替案をとることにより、選択することができなくる代替案の中からで最大の利益をもたらす代替案の利益である。

問題3
当社では、製品Aを生産販売している。本日、製品Aを1個6円で250個の特別注文があったが注文を引き受けるべきか否かを機会原価を用いて検討しなさい。

1.製品Aの製造及び販売量は、毎月900個であり、月間生産能力(キャパシティ)は1000個である。

2.製品Aの販売価格は、1個当たり10円である。

3.製品Aの製造に必要な標準変動費は4円/個、標準固定費は30円/個である。
なお、固定費の月間予算は20万円である。

4.特別注文を一部だけ履行することはできない。

5.特別注文1個生産すために必要な原価は、通常の製品1個を生産するのと同じである。


解答
追加注文を引き受けるべか否かの検討を行った結果、特別注文を引き受ける場合の差額収益1500円、差額原価1000円差額利益500円で、機会原価900円を考慮後の差額利△400円である。よって、特別注文を引き受けない方が400円有利である。

解説
1.月間生産能力を超える受注可否の意思決定。

特別注文を引き受けをする前の月間遊休生産能力(キャパシティ)は、月間生産能力1000個と既存製品900個から100個である。
250個の特別注文を一部だけ履行することはできないため、この引き受けするためには既存製品の生産量を調整する必要がある。

既存製品の生産量に影響がある場合は、特別注文250個による利益の額と特別注文の製品を提供するため、既存製品の生産量を引き下げた150個の利益額と比較して意思決定を行う。

3.特別注文を引き受ける場合、特別注文による差額収益と差額原価の比較に、特別注文のために生産を中止した既存製品150個の利益(900円)を機会原価として計算する。

(10円-4円)×150個=900円

4.特別注文を引き受ける場合の機会原価考慮後の差額利益

差額収益1500円(6円×250個)、
差額原価1000円(4円×250個)、
差額利益500円である。

500円-900円=△400円

よって、差額利益△400円のため特別注文を引き受けない方が400円有利である。

5.差額原価収益分析において遊休生産能力で製品を生産する場合を前提にしている。

受注可否の意思決定において、従来の製品の生産への影響がないときは、特別注文を引き受ける場合に増加する収益及ぶ原価だけで意思決定を行う。
従来の製品の生産量をコントロールしなければならない場合は、特別注文を引き受けるために従来の製品の生産量を引き下げた利益の額と特別注文を引き受ける場合による利益の額を比較し、意思決定を行う。

もし、特別注文の製品を生産する場合、新たに機械や設備を購入する必要がある場合は、製品の原価以外に機械や設備への投資額が発生するため設備投資の意思決定の問題になる。