1.ファイナンス・リース取引

解約不能及びフルペイアウトの条件を満たすリース取引をファイナンス・リース取引であり、この条件を満たさないものはオペレーティング・リース取引である。

フルペイアウトは、借手がリース物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引をいう。

ファイナンス・リース取引の判断基準として現在価値基準と経済的耐用年数基準がある。

2.ファイナンス・リース取引の種類

(1)所有権移転ファイナンス・リース取引とは、リース期間後にリース物件が借手に移転するファイナンス・リース取引をいう。

(2)所有権移転外ファイナンス・リース取引とは、所有権が借手に移転しないファイナンス・リース取引をいう。

3.ファイナンス・リース取引の会計処理(借手側)

通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理による。
リース開始日にリース資産とリース債務を計上する。

(1)リース資産の取得原価

所有権移転外ファイナンス・リース取引は、貸手の購入価額が明らかな場合は貸手の購入価額とリース料総額の割引現在価値のいずれかの低い方による。

貸手の購入価額が不明の場合
はリース物件の見積現金購入価額とリース料総額の割引現在価値のいずれかの低い方による。

所有権移転ファイナンス・リース取引は、貸手の購入価額が明らかな場合は貸手の購入価額による。

貸手の購入価額が不明の場合
はリース物件の見積現金購入価額とリース料総額の割引現在価値のいずれかの低い方による。

(2)支払リース料

リース料総額を元本の返済額部分と利息相当額に区分して処理する。

利息相当額は、リース資産の取得原価とリース料総額の差額から算定し、原則として利息法により各期に配分する。

(3)リース資産の減価償却

所有権移転外ファイナンス・リース取引は、原則としてリース期間を耐用年数として残存価額をゼロとして算定する。

所有権移転ファイナンス・リース取引は、自己所有の固定資産と同一の方法による。

4.所有権移転外ファイナンス・リース取引(借手)の重要性に乏しい場合の会計処理

(1)利息込み方法

リース料総額から利息相当額の合理的見積額を控除しない方法。

リース資産及びリース債務はリース料総額で計上し、支払利息は計上せず減価償却費のみ計上する。

(2)利息相当額のリース期間定額法

利息相当額の総額をリース期間中の各期に配分する方法。

5.オペレーティング・リース取引

通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理による。

6.セール・アンド・リースバック取引

賃貸借契約付売却であり、借手が所有する物件を貸手に売却し、貸手から当該物件のリースを受ける取引をいう。

ファイナンス・リース取引に該当するセールアンド・リースバック取引である場合、通常のファイナンス・リース取引に係る会計処理に加え、資産の売却に伴う利益について、長期前受収益として繰延処理し、減価償却費の割合に応じて減価償却費に加減して損益に計上する。

7.ファイナンス・リース取引の会計処理(貸手側)

通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理により、所有権移転外ファイナンス・リース取引はリース投資資産が計上され、所有権移転ファイナンス・リース取引はリース債権が計上される。

利息相当額は、リース料総額と見積残存価額の合計から取得原価を控除して算定し、原則として利息法によりリース期間に配分する。
この場合に用いる利子率は、貸手の計算利子率を用いる。

ファイナンス・リース取引の貸手の会計処理は、次の方法から選択する。

(1)リース開始時に売上高と売上原価を計上する方法

(2)リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法

(3)売上高を計上せず利息相当額を各期へ配分する方法


問題
次の文章の(ア)~(ス)に当てはまる適切な語句又は数字を答えなさい。

1.ファイナンス・リース取引は、解約不能及びフルペイアウトの条件を満たすリース取引である。
また、現在価値基準又は経済的耐用年数基準のいずれかに該当する場合、ファイナンス・リース取引となる。

現在価値基準は、解約不能のリース期間中の(ア)が、当リース物件を借手が現金で購入するものと仮定した場合の合理的見積額の概ね(イ)%以上であること。

経済的耐用年数基準とは、解約不能の(ウ)が、当該リース物件の(エ)の概ね(オ)%以上であること。

2.ファイナンス・リース取引のうち所有権移転条項・割安購入選択権・特別仕様リース物件のいずれかの基準に該当する場合には、(カ)ファイナンス・リース取引となる。

3.所有権移転ファイナンス・リース取引のリース資産の取得原価は、貸手の購入価額が明らかな場合は(キ)による。

貸手の購入価額が不明の場合
はリース物件の(ク)とリース料総額の割引現在価値のいずれかの低い方による。

4.リース資産の減価償却は、所有権移転ファイナンス・リース取引については、(ケ)にわたって(コ)の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により算定する。

所有権移転外のファイナンス・リース取引については、リース物件の取得と異なりリース物件を使用できる期間がリース期間に限定されるという特徴があるため、原則とし(ウ)にわたって(サ)をゼロとして減価償却を算定する。

5.オペレーティング・リース取引は、借手も貸手も通常の(シ)に係る方法に準じた会計処理を行う。

解約不能なリース取引については、未経過リース料を貸借対照表日後1年以内と1年を超えるものとに区分して(ス)しなければならない。

ただし、重要性が乏しい場合には、当該(ス)を要しない。


解答
(ア)リース料総額の現在価値
(イ)90(ウ)リース期間
(エ)経済的耐用年数(オ)75
(カ)所有権移転(キ)貸手の購入価額(ク)見積現金購入価額
(ケ)経済的耐用年数
(コ)自己所有(サ)残存価額
(シ)賃貸取引(ス)注記