1.構造的意思決定

工場の拡張、設備設備などをすべきか否かの決定する長期的な意思決定をいう。

2.構造的意思決定の考え方

(1)投資開始時点から投資終了時点の期間を意思決定期間とする。

(2)収益及び費用の認識は発生主義ではなく、不確実性を減らすためキャッシュ・フローによって評価する。

現金収入額をキャッシュ・イン・フロー(CIF)といい、現金支出額をキャッシュ・アウト・フロー(COF)という。
現金収入額と現金支出額の差額のことを正味のキャッシュ・フロー(CF)という。

(3)投資の効果が長期にわたる場合は、将来のキャッシュ・フローについて貨幣の時間価値を考慮する必要がある。

投資上では、現在100万円で買える物が3年後に同じ金額で買えるとは限らない。時間の経過により貨幣の価値は変わると考える。このことを貨幣の時間価値を考慮するという。

3.設備投資の意思決定

企業が事業のために用いる建物や機械などの有形固定資産に対する設備投資では、投資によるキャッシュ・フローの総額と投資額を比較して投資案を選択する。

4.キャッシュ・フローの計算

(1)毎年発生するキャッシュ・フローの計算

設備投資によって予測される売上などの現金収入から原材料などの現金支出費用を差し引いた金額や設備投資による節約額はキャッシュ・イン・フローとして取り扱う。

法人税の支払額は、会社が得た所得(利益)に基づいて計算され、キャッシュ・アウト・フローとして取り扱う。

(2)減価償却費の法人税額の影響

減価償却費は、現金支出を伴わない費用のためキャッシュ・フローに含めない。
しかし、減価償却費を費用計上することは法人税の税額によるキャッシュ・アウト・フローが減少すると考える。
従って、法人税の税額が節税される。その節税額をタックス・シールドといい、キャッシュ・イン・フローとして取り扱う。

タックス・シールドは、減価償却費×実効税率で求める。

(3)投資開始時点及び投資終了時点のキャッシュ・フロー計算

投資開始時点の設備の投資額は、キャッシュ・アウト・フローとして取り扱う。

投資終了時点では、処分される設備が売却可能な場合、その金額はキャッシュ・イン・フローとして取り扱う。

固定資産売却損(又は固定資産除却損)は、減価償却費と同様に現金支出を伴わない費用のためキャッシュ・フローに含めない。しかし、タックス・シールド(法人税の節税額)を考慮し、キャッシュ・イン・フローとして取り扱う。

固定資産売却益は、現金収入を伴わない収益のためキャッシュ・フローに含めない。しかし、法人税の支払が増加するのでキャッシュ・アウト・フローとして取り扱う。


問題
×1年度の期首に新規の機械の導入を検討している。

機械の取得原価は450万円で耐用年数3年、3年後の残存価額0円として定額法によって減価償却を行う。

2.年間の現金売上から現金支出費用を差し引いた税引後のキャッシュ・フローは210万円を見込んでいる。

3.法人税の実効税率40%とする。

4.機械を導入後、同社は赤字になることはなく、税金を含めた全てのキャッシュ・フローは当該年度末に一括して生じるとみなす。

×2年度末に2年間使用していた機械を100万円で売却できると見込まれている場合の税引後キャッシュ・フローは×1年度期首△(ア)万円、×1年度末(イ)万円、×2年度末(ウ)万円である。


解答
(ア)450(イ)270(ウ)390

解説

1.「当社は赤字になることはなく」から黒字会社(税金を納めている)であるのでタックス・シールドを計算する。

2.投資開始時点から投資終了時点の期間は、税法上の法定耐用年数を使用することもあるがそれよりも短い経済的に稼動することが可能である期間を設定することもある。

3.機械を導入時点のキャッシュ・アウト・フロー
取得原価450万円

4.毎年の税引後のキャッシュ・イン・フロー210万円

5.減価償却費に対するタックス・シード
(1)減価償却費
450万円÷3年=150万円
(2)タックス・シード
(1)×40%=60万円

6.機械の除却に対するキャッシュ・フロー

(1)機械売却収入100万円

(2)除却時における機械の簿価
450万円×1年/3年=150万円

(3)固定資産除却損
100万円―(2)=△50万円

(4)タックス・シード
(3)×40%=20万円

(5)機械の除却に対するキャッシュ・イン・フロー
(1)+(3)=120万円

7.×1年度期首・×1年度末・×2年度末の税引後キャッシュ・フロー計算

(1)×1年度期首△450万円

(2)×1年度末
210万円+60万円=270万円

(3)×2年度末
210万円+60万円+120万円=390万円