1.差額原価収益分析

差額原価収益分析の方法には、以下の2つがある。

総額法とは、代替案から発生する原価と収益を全て計算し利益を算定しで代替案を選択する方法。

差額法(増分法)とは、代替案間で共通する部分(埋没原価)を除外し、代替案の差額原価と差額収益から差額利益を算定して、差額利益が大きい代替案を選択する方法。


2.特別注文受注可否の意思決定

問題
当社では、製品Bを販売している。

製品Bの1個当たりの販売価格、直接材料費がそれぞれ900円、700円である。

直接工はすべて固定給であり、直接労務費と製造間接費は全て固定費である。

直接労務費予算は100万円、製造間接費予算は400万円である。

本日、製品Bを1個当たりの販売価格800円で900個の特別注文があった。
この特別注文を引き受けるべきか否かについて検討しなさい。

この特別注文の製品1個を生産するのに必要な原価は、通常の製品1個を生産するのと同一である。


解説
差額原価収益分析の具体的な手順

手順1.問題の把握

特別注文を引き受ける案の利益が引き受けない案の利益より大きければ特別注文を引き受ける案を選択する。

手順2.代替案の評価

(1)差額原価収益分析では、遊休生産能力がある場合を前提にしている。
遊休生産能力内で特別注文の生産が足りる場合には、従来の製品の生産への影響がないので、特別注文を引き受ける場合の差額収益、差額原価を比較する。

(2)追加分の売上高、直接材料費は、代替案間の関連収益や関連原価の変化した差分の差額収益、差額原価になる。

固定費である直接労務費と製造間接費は、いずれも代替案の選択しても同一であるから意思決定に関係ない原価に該当するので埋没原価になる。差額原価収益分析では除外する。

(3)特別注文を引き受ける案の差額利益9万円である。

差額収益72万円(800円×900個)差額原価63万円(700円×900個)
差額利益9万円

手順3.代替案の選択

特別注文を引き受けるべか否かの検討を行った結果、特別注文を引き受ける前に比べて利益が9万円増加する。
この特別注文を引き受けるべきである。


3.部品の自製か購入かの意思決定

問題
現在、自製している部品Aを
将来的に購入してゆくべきか検討しなさい。

当工場は部品Aを1,000個製造しているが、購入すると1個あたり800円で購入できる。

部品Aの1個当たりの標準原価(変動費720円、固定加工費300円)である。固定加工費の標準配賦額は年間固定費を正常操業度で除じたものである。

部品Aを購入する場合、部品Aを生産していたラインの設備に関連する固定費10万円が全額削減できる。


解説
差額原価収益分析の具体的な手順

手順1.問題の把握

部品の自製する案と購入する案の原価を比較して原価が節約される案を選択する。

手順2.代替案の評価

(1)単位あたりの固定加工費は、いずれも代替案の選択しても同一であるから意思決定に関係ない原価に該当するので埋没原価になる。差額原価収益分析では除外する。
しかし、「部品Aを生産していたラインの設備に関連する固定費10万円」は、部品Aを購入することで、固定費10万円が節約できるので差額原価となる。

(2)部品Aの自製する案は、自製原価72万円(1,000個×@720円)になる。

(3)部品Aの購入する案は、購入原価は80万円(1,000×@800円)から10万円を差し引いて70万円になる。

手順3.代替案の選択

部品Aの自製か購入かの検討を行った結果、自製原価72万円と購入原価70万円を比較し、購入する場合は、2万円の原価が節約されるため有利なので購入するべきである。