1.予算実績差異分析

予測値と実績値を比較して差異を分析することを予算実績差異分析という。

予算管理は、期首に予算編成し、期中に予算執行し、期末に予算統制を行う。

予算編成とは、目標利益を獲得するために各部門の予算の決定を行う。

予算執行とは、予算案を達成するための営業活動を行うことをいう。

予算統制とは、目標利益と実際利益との差額を分析して必要な改善を行う。

2.営業利益差異分析

直接実際原価計算を予算管理に利用している場合、予算実績差異分析は以下の方法がある。

(1)販売量差異を予算単位販売価格で評価する方法は、損益計算書の項目こどに差異分析
を行う。

分析方法は、営業利益差異を売上高差異、変動売上原価差異、変動販売費差異、固定費差異に分析する。
その場合、売上高差異が販売価格差異と販売量差異に分析する。

販売価格差異=
(実際単位販売価格ー予算単位販売価格)×実際販売数量

販売量差異=
(実際販売数量ー予算販売数量)
×予算単位販売価格

(2)販売量差異を予算単位貢献利益で評価する方法は、単価や販売量の要因ごとに差異分析を行う。

分析方法は、貢献利益差異と固定費差異に分析する。
その場合、貢献利益差異を販売価格差異、販売量差異、変動売上原価価格差異、変動販売費価格差異に分析する。

販売価格差異=
(実際単位販売価格ー予算単位販売価格)×実際販売数量

販売量差異=
(実際販売数量ー予算販売数量)
×予算単位貢献利益

変動売上原価価格差異=
(予算単位販売価格ー実際単位販売価格)×実際販売数量

変動販売費価格差異=
(予算単位販売費ー実際単位販売費)×実際販売数量

3.同種製品の予算実績差異分析

製品こどの販売量差異をセールス・ミックス差異と総販売数量差異に分析する。

(1)セールス・ミックス差異

予算上の販売割合の増減が利益への影響を表す差異。

=予算単位販売価格×{実際総販売量ー(実際総販売量×セールス・ミックス率)

(2)総販売数量差異

予算販売量と実際販売量の増減が利益への影響を表す差異。

=予算単位販売価格×(実際総販売量×セールス・ミックス率ー予算総販売量)

4.市場占拠率差異と市場総需要量差異

総販売数量差異は、市場占拠率差異と市場総需要差異に分析する。

(1)市場総需要差異

市場規模の増減が売上高への影響を表す差異。

=予算加重平均販売単価×予算市場占拠率×(実際市場総需要量ー予算市場総需要量)

・1個当たり予算上の加重平均販売単価は、予算上の売上高を予算上の販売数量で割って計算する。

(2)市場占拠率差異

市場における企業シェアの増減が売上高への影響を表す差異。

=予算加重平均販売単価×実際市場総需要×(実際市場占拠率ー予算市場占拠率)

5.売価差異と数量差異

売上高の差異分析は、売価差異(売上高の増加か値上げによる原因)と数量差異(出荷増加による原因)に細分する。

6.売上品構成差異と売上数量差異

2種類以上の製品を販売製造している場合、製品の構成の変化によって利益が変化することがある。このような場合、販売数量差異を製品の構成の変化によって生じた部分(売上品構成差異)とその他部分(売上数量差異)に分析することがある。

(1)売上品構成差異

=予算上の単位限界利益×{(実際売上品数量ー(実際総売上数量×予定構成比率)}

(2)売上数量差異

=予算上の単位限界利益×{(実際総売上数量×予定構成比率)ー予定売上品数量}



問題
当社の資料により(ア)~(カ)の金額を答えなさい。

1.予算販売価格は、a製品300円、b製品400円である。

2.実際販売価格は、a製品310円、b製品405円である。

3.予算販売数量1250個は、a製品1000個、b製品250個である。

4.実際販売数量1200個は、a製品900個、b製品300個である。

5.予算市場占拠率20%、実際市場占拠率25%である。


問1
売上高差異は、販売価格差異(ア)円と販売数量差異(イ)円に分析できる。

問2
販売数量差異は、セールス・ミックス差異(ウ)円と総販売数量差異(エ)円に分析できる。

問3
総販売数量差異は、市場占拠率差異(オ)円と市場総需要差異(カ)円に分析できる。

解答

(ア)10500(イ)1000(ウ)6000
(エ)16000(オ)92800
(カ)76800

解説

(1)販売価格差異

a製品(310円-300円)×900個=9000円(有利差異)

b製品(405円-400円)×300個=1500円(有利差異)

a製品+b製品=10500円

(2)販売数量差異

a製品(900個-1000個)×300円=△30000円(不利差異)

b製品(300個-250個)×400円=20000円(有利差異)

a製品+b製品=△10000円

(3)セールス・ミックス差異
=6000円

・セールス・ミックス率
a製品1000個÷1250個=0.8
b製品250個÷1250個=0.2

a製品300円×{900個-960個(=1200個×0.8)=△18000円(不利差異)

b製品400円×{300個-240個(=1200個×0.2)=24000円(不利差異)

a製品+b製品=6000円

(4)総販売数量差異

a製品300円×{960個(=1200個×0.8)-1000個)=△12000円(不利差異)

b製品400円×{240個(=1200個×0.2)-250個)=△4000円(不利差異)

a製品+b製品=△16000円

(5)市場総需要差異

・1個当たり予算上の加重平均販売単価は、{(1000個×300円)+(250個×400円)}÷1250個
=320円である。

・実際市場総需要量は、1200個÷25%=4800個である。

・予算市場総需要量は、1250個÷20%=6250個である。

320円×20%×(4800個ー6250個)=△92800円(不利差異)

(6)市場占拠率差異

=320円×4800個×(25%ー20%)
=76800円(有利差異)