1.CVP分析

CVP分析は、計画した原価・営業量(又は販売価格)・営業利益がどのように変化するか分析することである。
経営の基本計画設定や予算編成の際して行われる技法。

2.CVP分析の仮定

(1)費用は変動費と固定費に分類できる。

(2)売上高及び原価総額は営業量の線形関数として表す。

(3)単一製品である。

(4)生産量と販売量はほぼ等しい。

3.CVP分析に関連した指標

企業の収益力の判断基準としてに用いる。以下の数値がある。

(1)損益分岐点売上高

営業利益がゼロとなる売上高である。損益分岐点比率や安全余裕率を計算する際に利用される。

(2)損益分岐点比率

企業の収益力の指標で、損益分岐点比率は低い方がよい。

=実際(計画)売上高÷損益分岐点売上高

(3)安全余裕率

企業の安全性の指標で、安全余裕率は高い方がよい。

=(売上高ー損益分岐点売上高)÷売上高

(4)経営レバレッジ係数

売上高もしくは販売量の変化に対する営業利益の変化を比率で表した企業の収益力の1つの指標である。

固定費の売上高に占める割合に着目する。この数値が高いということは固定費の利用度が高く、売上高の増加によってより多くの営業利益の増加することになる。

=営業利益の変化率÷営業量の変化率
=貢献利益÷営業利益
=経営レバレッジ係数

例えば、経営レバレッジ係数
A社4.0、B社3.0の場合

営業量10%増加すると仮定するとA社の営業利益は40%増加する。B社の営業利益は30%増加する。
よって、A社が売上高が増加した場合の営業利益の増加がより多くなる。

4.CVPの感度分析

販売価格・営業量・変動費・固定費・セールス・ミックスが変化したとき、営業利益や損益分岐点はどのような影響を及ぼすか分析することである。

5.多品種製品のCVP分析

多品種製品では、セールスミックス(製品の構成比率)が一定であると仮定して分析を行う。以下の2つの方法がある。

(1)加重平均貢献利益(=各製品の構成比率を考慮した平均貢献利益)で計算する方法。

(2)当該構成比率での販売量の最少セット(=1セット)での貢献利益で計算する方法。

問題1
以下の(ア)(イ)に当てはまる数字を答えなさい。

変動費率40%、月間固定費が120万円である製品の損益分岐点売上高(ア)万円である。

また、予想売上高が250万円である場合、安全余裕率は(イ)%になる。

解答
(ア)200(イ)20

解説
1.損益分岐点売上高は、営業利益がゼロとなる売上高高である。
120万円÷(1ー40%)=200万円

2.安全余裕率は、売上高から何%減収になると利益がゼロとなるかを示す。この比率が高いほど赤字になるリスクが小さい。

=(売上高ー損益分岐点売上高)÷売上高

{(250万円-200万円)÷250万円}÷100=20%

問題2
製品A、Bのセールス・ミックスの構成比率は1:2であると仮定した場合の各製品の損益分岐点販売量を計算しなさい。

(1)単位当たりの貢献利益は、製品Aは350円、製品Bは200円である。

(2)固定費225千円である。

解答解説6
①加重平均貢献利益(=各製品の構成比率を考慮した平均貢献利益)で計算する方法。
(イ)セールス・ミックス全体を1つの製品として考え、各製品の構成比率を考慮した平均貢献利益を計算する。
{(@350円×1個)+(@200円×2個)}÷(1+2)=@250円である。

(ロ)損益分岐点販売量
回収する固定費225千円÷@250円=900個
1セットにA製品は1個、B製品は2個なので、各製品の販売量は次のとおり。
A製品:900個×1/3個=300個
B製品:900個×2/3=600個

②当該構成比率での販売量の最少セット(=1セット)での貢献利益で計算する方法。

(イ)A製品とB製品の販売量の比率が1:2で一定であるという仮定から、「A製品1個とB製品2個」の組み合わせが1セットとして考え、1セットあたりの貢献利益を計算すると{(@350円×1個)+(@200円×2個)}=@750円である。

(ロ)損益分岐点販売量
回収する固定費225千円÷@750円=300セット
1セットにA製品は1個、B製品は2個なので、各製品の販売量は次のとおり。
A製品:300セット×1個=300個
B製品:300セット×2個=600個

6.最適セールスミックスの決定
一定の制約条件(最大生産可能量、作業可能時間)のもとで企業の利益を最大にする販売量の組合せを計算する。

①制約条件が1つの場合は、制約条件単位あたり貢献利益を算定し、最大の製品を優先に制約条件に割り当て製品の組合せを決定する。

②共通の制約条件が複数存在する場合は、制約条件ごとの単位あたり貢献利益を算定した結果、共通の制約条件によって優先すべき製品が異なる場合に線形計画法(LP:リニア・プログラミング)で売上を最大化する製品の組合せを決定する。


問題1
製品Xと製品Yを生産販売している。次の資料に基づき、(1)最適セールスミックスの販売量と(2)営業利益はいくらになるか答えなさい

製品Xと製品Yの単位当たりの貢献利益は、1200円と1000円になる。

製品Xと製品Yの単位当たりに必要とされる経営資源には、主要材料をそれぞれに2kgと4kgが必要である。
経営資源の主要材料は8000kgを超えることはない。
また、製品Xは2200個まで生産販売できる。


解答

(1)
製品Xは2200個
製品Yは900個

(2)営業利益354万円


解説
1.直接原価計算の損益計算書を前提とする問題は、(1)CVP分析(2)最適セールスミックス(3)意思決定(4)事業部制がある。

(1)CVP分析
操業度(販売量等)の増減に応じて比例的に増減する原価(変動費)と増減しない原価(固定費)という考え方をする。

(2)最適セールスミックスの決定
販売量や売上高に応じて増減する貢献利益を利用する。

(3)意思決定
意思決定における原価は、変動費と固定費に対応することが多いため、データとして直接原価計算の損益計算書が示される。

2.制約条件が1つの場合の最適セールスミックス

①主要材料単位当たりの貢献利益
製品Xは1200円÷2kg=600円
製品Yは1000円÷4kg=250円

製品Xの主要材料単位当たりの貢献利益が最大となるので優先して生産販売をする。
製品Xの2200個の生産販売をまず行い、残りの制約のもとで製品Yを生産販売する。

②製品XとYの生産販売数量
主要材料8000kgのうち製品Xのために4400kg(2200個×2kg)を生産しても3600kgが残るため製品Yの生産販売が可能である。
3600kgを製品Yのために生産販売すると900個(3600kg÷4kg)となる。

よって、(1)最適セールスミックスは製品Xは2200個、製品Yは900個である。

③最適セールスミックスにおける営業利益
製品Xの貢献利益は、264万円(2200個×1200円)である。
製品Yの貢献利益は、90万円(900個×1000円)である。
よって、共通固定費はないので、(2)最適セールスミックスにおける営業利益354万円
(264万円+90万円}である。


問題2
製品Xと製品Yを生産販売している。次の資料に基づき、最適セールスミックスの販売量を答えなさい。

製品Xと製品Yの単位当たりの貢献利益は、1200円と1000円になる。

製品Xと製品Yの単位当たりに必要とされる経営資源には、主要材料をそれぞれに2kgと4kg、直接作業時間をそれぞれに4時間と2時間が必要である。
経営資源の主要材料は8000kgと10000時間を超えることはない。また、製品Xは2200個まで生産販売できる。

解答
製品X2000個
製品Y1000個

解説
1.制約条件が複数の場合の最適セールスミックスは、問題の定式化をする。

(1)目的関数とは、各製品の生産販売量とそのときの貢献利益との関係式。

製品XとYの生産販売量をそれぞれxとyとすると貢献利益をZと仮定する。

MaxZ=Max(1200x+1000y)

(2)制約条件式とは、各製品に共通にかかる予算制約条件を数式化。

①主要材料8千kgを製品XとYの生産販売で使い切る数式。

(2x+4y)≦8000

②直接作業時間1万時間を製品XとYで生産販売を使い切る数式。

(4x+2y)≦10000

③製品Xは2200個まで生産販売できる数式。

x≦2200

④非負債条件とは、製品XとYを生産販売量するとマイナスはないこと(0の場合もある)。

0≦x、0≦y

(3)最適セールスミックスの決定をグラフ上で探す方法

領域内で傾きの直線の切片が最大となる条件を求める。

グラフ上に各直線と領域内の関係を書き、原点からMaxZを平行移動させ領域内を通る交点を探して最大となる売上を求める。

①②③④の制約条件を満たすZ=(1200x+1000y)を最大に
するxとyの値を求める。

MaxZ=Max(1200x+1000y)

(2x+4y)≦8000ー①
(4x+2y)≦10000ー②
x≦2200ー③
0≦x、0≦yー④

①②③④の制約条件を満たす領域内て直線Z=1200x+1000yは傾きー(6/5)である。

1000y=ー1200x+Z
y=ー(1200/1000)x+Z/1000
y=ー(6/5)x+Z/1000

よって、製品Xは2000個、Yは1000個である。