1.連結財務諸表

(1)意義

連結財務諸表とは、親会社が当該企業集団の財務内容を総合的に報告するために作成する。

(2)親会社と子会社

親会社とは、1つ以上の企業を支配する企業いい、その他の企業により、直接に又は間接に支配される企業を子会社という。

(3)連結基礎概念

連結財務諸表作成する考え方を連結基礎概念といい、親会社説と経済的単一体説がある。

単一の指導下にある企業集団全体の資産・負債と収益・費用を連結財務諸表に表示するという点では違いはない。

しかし、資本に関しては、親会社説は、連結財務諸表を親会社の財務諸表の延長線上に位置づけて、親会社の株主持分のみを反映させる。

これに対して、経済的単一体説は、連結財務諸表を親会社とは区別される企業集団全体の財務諸表と位置づけて、企業集団を構成するすべての会社の株主持分を反映されるものであるという点で異なっている。

(4)連結財務諸表

①連結貸借対照表②連結損益計算書及び連結包括利益計算書③連結株主資本等変動計算書④連結キャッシュ・フロー計算書がある。

2.連結財務諸表作成に関する会計基準

(1)一般原則(「連結基準」第9~12項)

①真実性の原則②個別財務諸表基準性の原則③明瞭性の原則及び④継続性の原則がある。

(2)一般基準

連結決算における「連結の範囲」、「連結決算日」、「連結会社間における会計処理の統一」について規定している。

(a)連結の範囲

親会社は、原則としてすべての子会社を連結の範囲に含めなければならない。

連結の範囲の判断基準は、他の企業の議決権株式の50%超を実質的に所有しているか、議決権株式の50%未満であっても、一定の要件に該当すれば子会社となる。

(b)連結決算日

連結財務諸表の作成を行う連結会計期間は1年とし、親会社の決算日を基礎として、連結決算日とする。

子会社の決算日と連結決算日と異なる場合には、子会社は連結決算日において正規の決算に準ずる合理的な手続きによる決算を行う。

子会社の決算日と連結決算日との差異が3か月を超えない場合には、子会社の正規の決算を基礎として連結決算を行うことができる。

(c)連結会社間における会計処理の統一

親会社と子会社が採用する会計処理の原則及び手続は、原則として統一しなければならない。

3.連結決算手続き

親会社及び子会社の個別財務諸表を単純合算した上で連結修正仕訳を行い連結財務諸表が作成される。
この手続きを連結決算手続きという。

4.支配獲得日の連結決算手続

(1)親会社の子会社に対する投資額と子会社の資本勘定を相殺消去する。この手続きを資本連結という。

①子会社の資産・負債の時価評価

資本連結の手続きに際して、子会社の個別貸借対照表上の資産・負債を支配獲得日の公正な評価額(時価)で評価される。

時価評価方法には、部分時価評価法と全面時価評価法がある。

全面時価評価法は、「子会社の資産・負債のすべてを支配獲得日の時価によりで評価する方法」である。

これに対して部分時価評価法は、「子会社の資産・負債のうち、親会社の持分に相当する部分だけを時価評価する方法」である。

部分時価評価法は、持分法や子会社が有するその他有価証券に適用されている。

上記の方法による評価差額が生じた場合は、子会社の資本ともに親会社の投資勘定と相殺消去される。

なお、支配獲得日や株式の取得日及び売却日が子会社の決算日以外の日である場合には当該支配獲得日等の前後いずれか近い子会社の決算日に支配獲得等があったとみなして連結決算を行う。

②投資と資本の相殺消去

親会社の子会社に対する投資額とこれに対応する子会社の資本の相殺消去を行う。

親会社の子会社に対する投資額は支配獲得日の時価を用いる。

子会社の資本は、子会社の個別財務諸表上の純資産の部における株主資本及び評価・換算差額等と評価差額になる。

消去差額が生じる場合には、のれん(又は負ののれん)として計上する。

③非支配株主持分への振替

子会社の資本のうち親会社に帰属しない部分は、非支配株主持分とする。

(2)段階取得における資本連結

株式を複数回にわたって取得することにより子会社とする場合は、資本連結に際して、子会社に対する投資の累積額を支配獲得日の時価に評価替えして、差額が生じたときは「段階取得に係る損益」として処理する。

この処理はすでに持分法を適用している場合であっても同様であり、持分法評価額を子会社に対する投資とみなして相殺消去を行う。

そして、子会社を一括で取得したとみなして、親会社の子会社に対する投資額と子会社の資本勘定を相殺消去を行う。

5.支配獲得後の連結決算手続

(1)開始仕訳

各年度の連結決算において、支配獲得日から前期末までの連結修正仕訳を引き継いて繰り越してくる「開始仕訳」という処理か必要となる。

これは、連結財務諸表が個別財務諸表のように会計帳簿に基づいて作成されるものではなく、連結財務諸表を作成する都度、個別財務諸表に連結修正仕訳を行い作成される。

そのため、支配獲得日から前期末までの連結修正を個別財務諸表に反映されていないから再度仕訳する必要がある。

開始仕訳では、前期末までの損益項目は、利益剰余金期首残高として調整する。

(2)子会社の当期純利益の振替

支配獲得日以降の子会社が計上した純利益は、持分比率によって親会社に帰属する部分は利益剰余金に加算し、非支配株主に帰属する部分は非支配株主持分に計上する。

(3)のれんと負ののれん

のれんは、原則としてその計上後20年以内に定額法その他合理的な方法により償却を行い、償却額は販売費及び一般管理費に計上される。

負ののれんは、原則として特別利益に「負ののれん発生益」として表示する。

(4)配当金の修正

子会社が利益剰余金を財源として支払った配当金のうち親会社が受取配当金として計上した額は、連結会社相互間の内部取引として相殺消去し、非支配株主に支払った配当金は連結上、剰余金の配当金に含めないので非支配株主持分の減少とする。

6.内部取引の相殺消去

連結会社相互間での取引がある場合、その取引が内部取引である資産と負債、収益、費用、株式配当、キャシュフローは全額消去する。

7.未実現損益の消去

連結相互間取引によって取得した棚卸資産、固定資産に含まれる未実現損益は全額消去される。

非支配株主が存在する子会社に未実現損益生じた場合には、未実現損益は、親会社の持分と非支配株主の持分比率に応じて、親会社持分と非支配株主持分とに配分する。

8.取得関連費用の取り扱い

個別財務諸表上では子会社株式の取得原価に含める。

連結上では、以前は対価性が認められるので取得原価に含めていたが、現行の取り扱いは、発生した連結会計年度の費用とする。

国際的な会計基準に基づく財務諸表との比較可能性を改善する観点(国際的会計基準の考え方)