1.減損会計

減損とは、収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態をいう。

減損会計とは、そのような場合に帳簿価額を一定の方法で減額する会計処理である。

2.減損会計の対象資産

原則として、全ての固定資産が対象となる。

土地・建物・機械装置等の有形固定資産、のれん等の無形固定資産、投資不動産等の投資その他の資産が対象となる。

のれんについては、期待した超過収益力を発揮しなければ減損処理の対象になり、特許権等の無形固定資産も同様に対象となる。

投資不動産については、事業用固定資産として考え方で減損処理の対象になる。

3.減損会計の処理手続き

①資産のグルーピング②減損損失の認識の判定③減損損失の測定である。

①資産のグルーピングとは、他の資産又は資産グループのキャシュ・フローから概ね独立したキャシュ・フローを生み出す最小の単位で行うとされている。

②減損損失の認識の判定

減損の兆候がある当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識すべきと判定される。

減損の兆候とは、資産又は資産グループについて減損が生じている可能性を示す事象のこと。

③減損損失の測定

減損の兆候があると認識された資産又は資産グループの帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として特別損失に計上する。

4.原則として当該減損損失相当額を固定資産の帳簿価額から直接減額する。

5.回収可能価額とは、当該資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い金額をいう。

正味売却価額とは、資産又は資産グループの時価から処分費用見込額を差し引いて算定する。

使用価値とは、資産又は資産グループの継続的使用と使用後の処分によって生ずると見込まれる将来キャシュ・フローの現在価値をいう。

使用価値の算定には、将来キャシュ・フローの割引現在価値とする。

6.資産グループに対して減損処理を適用した場合には、資産グループの帳簿価額と回収可能価額の差額を減損損失として特別損失に計上する。

なお、資産グループについて認識された減損損失は、帳簿価額に基づく比例配分等の合理的な方法によりグループの各構成資産に配分する。

7.減損処理を行った資産については、減損処理後の帳簿価額に基づき減価償却を行う。

8.共用資産の減損損失の配分方法

共用資産とは、複数の資産又は資産グループの将来キャシュ・フローの生成に寄与する資産のうちのれん以外のものをいう。

共用資産に関して「より大きな単位」でグルーピングを行う方法を採用した場合は、減損の兆候の把握、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定は、共用資産を含まない各資産又は資産グループにおいて算定された減損損失控除前の帳簿価額に共用資産の帳簿価額を加えた金額と割引前将来キャッシュ・フローの総額とを比較することによって、減損損失を認識するかどうかを判定する。

その結果、減損損失を認識することによって算定される減損損失の増加額は、原則として、共用資産に配分する。

ただし、共用資産に配分された減損損失が、共用資産の帳簿価額と正味売却価額の差額を超過することが明らかな場合には、当該超過額を合理的な基準により各資産又は資産グループに配分することとなる。

9.のれんや共用資産がある場合には、これらの資産については複数の資産又は資産グループを加えて、「より大きな単位」でグルーピングを行う方法が原則であるが、のれんや共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分して、配分後の各資産又は資産グループについて減損損失の認識と測定を行う方法でもよい。