問題1
次の文章の(ア)~(コ)に当てはまる適切な語句又は数字を答えなさい。

1.ある企業を構成する(ア)を他の企業に(イ)することを事業分離という。

2.事業分離では、当該企業を構成する事業を移転する企業を(ウ)企業といい、その事業を受け入れる企業を(エ)企業という。

3.会社の分割にあたって、分離元企業の受け取る対価が分離先企業の株式のみであり、事業分離によって分離先企業が新たに分離元企業の子会社や関連会社となる場合、個別財務諸表上、分離元企業は、分離先企業から受け取った株式の取得原価を移転した事業に係る(オ)相当額に基づいて算定して処理する。

4.会社の分割にあたって、分離元企業の受け取る対価が分離先企業の株式のみであり、事業分離によって分離先企業が新たに分離元企業の子会社や関連会社以外の場合、個別財務諸表上、分離元企業は、分離先企業から受け取った株式の取得原価を株式の時価をもって認識し、(カ)を認識する。

解答
(ア)事業(イ)移転(ウ)分離元
(エ)分離先(オ)株主資本
(カ)移転損益

解説
1.事業分離
ある企業を構成する事業を他の企業に移転させることをいう。

2.分離先企業の会計処理
「企業結合基準」に準じて行われる。

3.分離元企業の会計処理

(1)投資の継続と清算の概念
事業分離基準で規定では、分離元企業の会計処理を分離した事業に関する投資が継続か清算で考える。

(2)個別財務諸表上の会計処理
①投資が清算されたとみる事業分離の場合
分離元企業が受け取った財を時価で評価し移転した事業に係る株主資本相当額との差額を移転損益として認識する。

②投資が継続している事業分離の場合
分離元企業では、移転損益を認識せず、その事業を分離先企業に移転したことにより受け取る資産の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額(移転し直前の適正な簿価)に基づいて算定される。

問題2
1.E社は吸収分割によってa事業をF社に移転し、その対価としてF株式120株を取得した。

2.a事業の分割直前における事業資産は簿価500円(時価600円)である。
なお、a事業に係る株主資本相当額は、適正な簿価に基づき500円と算定される。

3.会社分割日のF株式の時価は1株当たり6円である。

4.F社は増加すべき資本を全額資本金とする。

5.F社がE社の子会社及び関連会社とならない場合には、E社はF社株式をその他有価証券として処理する。

下記の(1)、(2)による場合のE社とF社の個別財務諸表上の仕訳をしなさい。
(1)F株式を取得した結果、事業分割後のE社はF社発行済株式の20%を所有している場合
(2)F株式を取得した結果、F社発行済株式の30%を所有している場合

解答(単位:円)
(1)
E社
(借)投資有価証券720
(貸)事業資産500
   事業移転損益220
F社
(借)事業資産600
   のれん120
(貸)資本金720

資本金は、720円(@6×120株)になる。

(2)
E社
(借)関連会社株式500
(貸)事業資産500
F社
(借)事業資産600
   のれん120
(貸)資本金720

E社の受取対価は簿価による。

問題3
次の(ア)~(ウ)に当てはまる数字を答えなさい。

事業分離後のA社の個別財務諸表上において計上するC社式は(ア)円となる。また、事業分離後作成する連結財務諸表において、のれん及び非支配株主持分の額は、それぞれ(イ)円及(ウ)円となる。

(1)A社はC社にS事業(諸資産の簿価500円、時価600円)を移転した。

(2)C社は事業分離に際し、A社に対して株式120株(時価720円)を発行し、全額を資本金とした。

(3)事業分離前にはA社とC社には支配関係がない。

(4)C社の事業分離前の貸借対照表

諸資産350円(時価400円)
諸負債50円
資本金250円
利益剰余金50円

(5)事業分離前のC社の発行済株式80株でC社の時価は480円である。

解答
(ア)500(イ)78(ウ)340

解説
1.A社個別財務諸表の会計処理

事業分離前、C社とA社は支配関係がない、S事業を移転した結果、C社はA社に株式120株を発行したのでC社の発行済株式は、事業分離前80株から事業分離後は200株になったので保有割合60%(120株/200株)になるのでA社は親会社でC社は子会社になる。

A社は、S事業に対する投資の継続とみなすので、受取ったC社株式の取得原価をS事業の株主資本相当額で計上。

(借)C社株式500
(貸)(S事業)諸資産500


(参考)
C社個別財務諸表上の会計処理は、事業分離により分離先企業が子会社となるため、逆取得に該当。

C社はS事業の資産及び負債を事業分離日前日の適正な帳簿価額で受け入れる。

(借)(S事業)諸資産500
(貸)資本金500

2.連結財務諸表上の会計処理

①事業分離前の子会社(C社)の資本に対して60%取得したと考える。

(1)C社の事業分離前の貸借対照表に計上されている諸資産の時価と簿価の差額を評価差額に計上し、投資勘定と資本を相殺消去。

(借)諸資産50
(貸)評価差額50

(借)資本金250
   利益剰余金50
   評価差額50
   のれん78③
(貸)C社株式288①
   非支配株主持分140②

(2)分離先企業に投資したとみなされる額=分離前のC社の時価(480円)X取得割合(60%)=288円

(3)C社(事業分離前)純資産時価(250円+50円+50円)X非支配株主持分割合(40%)=140円

(4)貸借差額で計算
又は288円-(350円X60%)=78円

②事業分離したS事業を時価により40%売却したと考える。

(1)S事業について投資と資本の相殺消去。

(借)資本金500
(貸)C社株式212①
  非支配株主持分200②
  持分変動差額88③

(2)C社株式500円を取得したがそのうち288円はC社(事業分離前)の取得に要した額、残額はS事業の取得に要した額。

C社株式500円-288円=212円

(3)S事業の資本(500円)X非支配株主持分割合(40%)=200円

(4)S事業が移転したとみなされる額(時価X非支配株主持分比率)-S事業に係るA社持分の減少額(株主資本X非支配株主持分比率)
(720円X40%)-(500円X40%)=88円

3.企業結合会計

(1)連結財務諸表上、連結グループ内での組織再編は、企業結合の前後で支配関係が変わらないため内部取引として処理され、全て消去するのが原則である。
ただし、企業結合で株式保有割合が変わる場合は、子会社株式の追加取得や一部売却の会計処理を行う。
(企業結合基準37~44)

(2)個別財務諸表上、組織再編に関する会計基準である企業結合に関する会計基準及び事業分離に関する会計基準に従って会計処理を行う。

(3)企業結合に関する会計基準

合併、株式交換、会社分割等の企業結合における結合企業に係る会計処理を規定し、企業結合を取得、共同支配企業の形成、共通支配下の取引の3つに区分している。

(4)事業分離に関する会計基準

会社分割や事業譲渡等における分離元企業の会計処理や合併、株式交換等の企業結合における被結合企業の株主に係る会計処理を規定している。

4.分離元企業の会計処理

分離元企業は、「事業分離基準」で規定されている。

①移転資産に対する投資が継続している否かによって会計処理が決定される。

(1)移転した事業と明らかに異なる資産(現金やその他有価証券)を受領した場合には、移転された事業を売却されたとみなすことになるので「投資の清算」とみなされる。

(2)子会社株式又は関連会社株式を受領した場合には、分離元企業が事業分離後も引き続き分離した事業に対する支配を継続していると認められるので「投資の継続」とみなされる。

5.分離元企業の事業分離日に次のように会計処理を行う。

①事業分離によって移転した事業に関する投資が清算されたとみる場合

受け取った財を時価で評価し、移転事業にかかる株主資本相当額との差額を移転損益として認識する。

②移転した事業に関する投資がそのまま継続しているとみる場合

移転事業にかかる株主資本相当額(移転し直前の適正な簿価)に基づき受け取った対価とすることにより移転損益を認識しない。

6.連結財務諸表上の会計処理

分離先企業が分離元企業に対して株式を交付することにより新たに分離元企業の子会社となる会社分割の場合。

①分離先企業に対する持分の増加についてパーチェス法を適用。(事業分離前の資本で処理)

分離先企業に投資したとみなされる額と分離先企業の持分の増加との差額をのれん又は負ののれんとして計上。

②移転した事業について投資と資本の相殺消去。

事業を移転したとみなされる額と事業に対する持分減少額との差額は持分変動差額として処理。