ドラマの会話を抜粋し、解説しています。
ネタバレにご注意ください注意
前回からシーン から下矢印

 

夕食前に白タイの礼服に着替えたロバートと、その上着の仕上げにブラシをかけるベイツ。
 
Robert: Thank you.
      ご苦労。
 
準備が終わりロバートから離れるとベイツはブラシを床に落とします。
 
Robert: I'll do that.
      取ろう。
 
何気ない優しさにも見えますが、これは本来あってはならないことです手
 
あくまで従者や使用人があらゆる雑用を雇用主の代わりにやるというのが仕事であり、役割。
 
例え自分でやったほうが断然早くても、あえて人にやらすのが雇用主の役割です。
 
そのため、ベイツは食い気味にブラシを取りますダッシュ
Bates: No, no, thank you, milord. I can do it.
   いえ、結構ですよ。取れますから。
 
Robert: I'm sure.
     そうだな。
 
Bates: I hope so, milord. I hope you are sure.
   そう信じていただければです、旦那様。
 
Robert: …Bates, we have to be sensible. I won't be doing you a favour in the long run if it's too much for you. No matter what we've been through, it's got to work.
ベイツ、分別はつけよう。荷が重いようならこの先もずっと君に(私の好意によって)頼むつもりはない。いくら我々の仲とはいえ、なされることはされなければならないのだ。
 
sensibleは知識や経験など何かしらの根拠によって判断すること。
 
・we have toと言っていますが、人を諭す時や嫌なことを言わないといけない時、you have toの代わりにweにすることでワンクッション置いた表現。
 
ロバートのひいきや情にはすがらないでくれ、と暗に言っているようです。
 
・do someone a favour = help someone.
 
・it's too much for someone 重責、力不足、君にはまだ早いなど。
 
・What we've been through は過去に起きたこと。そこから意訳しています。
 
・it's got to work は己の持てるものを使って何かを遂行させること。
 
Bates: Of course it has, sir. I mean, milord.
   もちろんそうあるべきです、上官殿。いえ、旦那様。
 
it has はit's got to workのit's部分。
 
・sirはここでは軍隊で上官に対して使う言葉。
 
Robert: Do you miss the army, Bates?
      陸軍に戻りたいか、ベイツ?
 
Bates: I miss a lot of things, but you have to keep moving, don't you?
懐かしく思うことはたくさんあります、ですが前を向いて進まなくては、でしょう。
 
Robert: You do, indeed.
      ああ、全くその通りだ。
 
Bates: I'll show you, milord, I promise. I won't let you down. We've managed so far, haven't we?
証明してみせます、旦那様、お約束します。期待に応えてみせます。これまでもずっと二人で乗り越えやってきていますよね?
 
manage ここでは難しい何かをこなす事。
 
Robert: Yes, we have. Of course we have!
      ああ、そうやってきた。もちろんだ!
 
ベイツに丸め込まれたかくらいに嬉しそうに頷いたロバート。この後妻コーラに顔を見せにいくとまた状況が変わっていきます。
 
Robert: You look very nice.
      とても綺麗だよ。
 
Cora: Thank you, darling. Did Murray make the matter clearer?
ありがとう、あなた。マーレイとは例の件、はっきりしたかしら?
 
Robert: Yes, I'm afraid he did.
      ああ、残念だが。
 
それを聞いた時の反応下矢印
Cora: …By the way, O'Brien says Bates is causing a lot of awkwardness downstairs. You may have to do something about it.
そういえば、オブライエンがベイツは階下で色々やらかしていると言ってるわ。何とかしたほうがいいんじゃなくて。
 
downstairsは階下で、このドラマの屋敷では使用人らは下の階に用事がない時は控えていることが多いので使用人らの間でという意味になります。
 
Robert: She's always making troubles.
      彼女がいつも面倒を起こしているじゃないか。
 
Cora: Is that fair? When she hasn't mentioned it before now.
     そう?今までそのこと黙っていたわよ。
 
before now 今より前、これまで、先立って。
 
Robert: I don't know why you listen to her.
     なぜ彼女の言うことに耳を貸すんだかわからないな。
 
コーラは自分に仕えるオブライエンの言うことを鵜呑みにしがちです。これはロバートにも言える事で、それぞれのレイディ・メイドや従者は仕える相手と朝から晩まで毎日密接に接します。
 
ですので気に入らないと即解雇、気にいると心を許し、プライベートや秘密を知られるのはもちろん、時にはこのように情報操作され操られたりするようです驚き
 
Cora: Is it quite eccentric, even for you, to have a cripple valet.
ちょっと異常じゃない?いくら貴方でも、不具の従者を持つなんて。
 
Robert: Please... don't use that word.
      頼むから…そんな言葉は使わないでくれ。
 
Cora: Did he tell you he couldn't walk when he made his application?
この仕事を志願した時に、歩けないってちゃんと申告された?
 
Robert: Don't exaggerate.
      大げさな。
 
Cora: Doesn't it strike you as dishonest not to mention it?
伝えないなんて不誠実だとは思わない?
 
Robert: I knew he'd been wounded.
     ケガのことは聞いていた。
 
Cora: You never said.
     聞いてないわ。
 
Robert: You know I don't care to talk about all that.
あの(頃の)ことを口にしたくないことを知っているだろう。
 
Cora: Of course, I understand what it must be like to have fought alongside someone in a war.
ええ、戦争中に共に戦った仲間というのがどうあるものかわかっているわ。
 
Robert: Oh, do you understand that, do you?
      へえ、わかってるんだ?
 
Cora: Certainly I do. You must form the most tremendous bonds. Even with a servant.
当然よ。かけがえのない絆を作るんでしょう。使用人とさえ。
 
Robert: Really? With a servant?
      そうか?使用人か?
 
Cora: Oh, Robert, don't catch me out. I'm simply saying I fully see why you want to help him.
ああ、ロバート、揚げ足を取らないで。ただ、あなたがベイツを助けたい理由をちゃんとわかっているって言っているだけよ。
 
catch someone out はイギリス英語でその人の過ちを指摘すること。
 
Robert: But?
(わかっているけど)でも?
 
Cora: But...is this the right way? To employ him for a job he can't do? Is it any wonder the others noses are put out?
でもね…それは正しいこと?できない人間を雇うって?他の使用人たちのやる気をくじくとは思わない?
 
pull someone's nose out pull someone's nose out of joint で人を苛つかせる、嫌な気持ちにさせる。
 
Robert: I just want to give him a chance.
     チャンスを上げたいだけだ。
 
屋敷のもう一人の主でもあるコーラにベイツへの対応に関して釘を刺されるロバート。しかし直ぐに別の小言を別の権力者から受けます驚き
先に応接間に向かったロバート、母バイオレットに気づきます。
Robert: Mama, I'm sorry. No one told me you were here.
母上、(一人にさせて)これは失礼。(既に)いらっしゃっていると聞いておらず。
 
mamとアクセントが最後にきてます。
これはイギリス貴族のフランス語風言い方のようです。
 
ロバートは母親に少し距離を感じるくらい丁寧な言い方をしています。
 
これはドラマをずっと見ているとわかりますが、
この当時のイギリス貴族の子女の中にはロバートのように生まれると乳母や家庭教師がつききりで世話をし、実の親とは3度の食事さえも一緒に取らず、母親とは午後のお茶の時間の後、父親は下手すると喋れるようになったら接するようになるなど、幼少期は実の親と接することがかなり少なかったようです。
 
話戻して、バイオレットは大仰に扇子を天井に向かってかざします。
Violet: Such a glare. I feel as if I were on stage at the Gaiety.
眩しいったらないわ。ゲイテイの舞台に立っているみたいだわ。
 
the Gaiety は昔ロンドンにあった劇場。第二次世界大戦の空襲で無くなったようです。
 
Robert: We're used to it. I do wish you'd let me install it in the Dower House. It's very convenient. The man who manages the generator could look after yours as well.
我々は慣れましたよ。ダワーの屋敷に設置させてくれればいいのに。とても便利です。発電機をみている者がそちら(の屋敷)もみてくれますよ。
 
the Dower House のdowerは寡婦の屋敷で、ダウントンアビーの屋敷が貴族の当主がする屋敷で、夫が亡くなり次期当主と入れ替わるようにダウントンアビーからそう遠くない場所にあるthe Dower House に移り隠居するようです。
 
Violet: No. I couldn't have electricity in the house. I wouldn't sleep a wink. All those vapours seeping about.
結構。屋敷の中に電気なんてあり得ないわ。眠れなくなるもの。そこら中に電気の何かが漏れ出てるんでしょう。
 
all those somethingで至る所にsomethingが。
 
・vapour (アメリカだとvapor)は蒸気とよく訳されますが、空気中に現れる気体や蒸気状の液体のような物質のことで、電気がまだ普及して間もないこの時代はこういう会話が普通にあったようです。
 
・seepは穴や何かからゆっくりと漏れ出たりひろがること。
 
Robert: Even Cora won't have it in the bedroom. She did wonder about the kitchen, but I couldn't see the point.
コーラでさえ寝室に取り付けるのは断固反対しています。キッチンはどうかと考えていたようですが、私には理解できませんでした。
 
Even Cora はここではアメリカ人の妻は、というニュアンスです。
 
対してロバートとバイオレットはイギリス人、伝統を重んじる、つまり変化を好まない人間と本人らも言っており、コーラのような新しいもの、変化を迎合する人間でも、寝室には電気(電灯)を取り付けないと伝えています。
 
これもイギリス・アメリカの歴史を知らないとわかりにくいです。ですが、このドラマを何度も見ていると気づけたりします。
 
・Cora won't は強い意思を示しています。
 
・I couldn't see the point も、see the point で(内容に関して)重要なこと理解する、要点を知る、で、コーラは寝室には電気をつけることをはっきりと拒否したのに、キッチンには興味を示すなんて、その二つになんの違いがあるんだと言っていますが、ロバートはお貴族様でキッチンの場所がどこすらわかっていないからの言葉でちょっと笑えます。
 
これもドラマを見るとわかってきますが、ダウントンアビーはめちゃくちゃ内容が濃いのでここで訳すまで流していましたニコニコ
 
Violet: Well, before anyone joins us, I'm glad of this chance for a little talk. ... I gather Murray here today?
そうね、ちょうどいいわ、まだ他の誰も来ていないうちに、ちょっと話しができるわね。マーレイが今日来たと聞いたけど?
 
Robert: News travels fast. Yes, I saw him, and he's not optimistic that there's anything we can do.
噂は早いな。ええ、会いました、そして残念ながらどうにもできそうにないのが彼の見解です。
 
Violet: Well, I refuse to believe it.
   そう、それは到底信じがたいことだわ。
 
Robert: Be that as it may, it's a fact.
     信じようがなかろうが、事実です。
 
Violet: But to lose Cora's fortune!
   でもそれはコーラの財産を失うということよ!
 
Robert: Really, Mama, you know as well as I do that Cora's fortune is not Cora's fortune anymore. Thanks to Papa it is now part of the estate, and the estate is entitled to my heir. That is it. That is all of it.
本気でおっしゃってますか、母上、今はコーラの財産が彼女のものでないとわかっているのかと。父上のお陰で、彼女の財産は所領の一部となり、その所領は私の相続人のものです。以上です。それ以外などありません。
 
はっきりと諦めろと言うロバート。バイオレットは全然納得しません。
Violet: Robert, dear, I don't mean to sound harsh...
ロバート、あなた、厳しいことを言うつもりはないけど…
 
Robert: You may not mean to, but I bet you will.
そんなつもりではなくても、そうなるんでしょうね。
 
Violet: Twenty-four years ago, you married Cora against my wishes for her money! Give it away now, what was the point of your peculiar marriage in the first place?
20年前、私の意思を無視してお金の為に結婚したでしょうが!今になってそれを手放すなんて、何のためにあたたはその変な結婚をしたというの?
 
Robert: If I were to tell you she's made me happy, would that stretch belief?
ここで私がコーラが私を幸せにしてくれたと言った、こじつけですかね?
 
streach truth はあるもの(今回は結婚した理由)をよく見せるため、大げさにや誇張して何かを言う事。
 
Violet: It's not why you chose her... above all those other girls who could've filled my shoes easily.
それがコーラを選んだ理由ではないでしょう…他の私の跡を立派につげる女の子たちを差し置いて。
 
Robert: If you must know, when I think of my motives for pursuing Cora, I'm ashamed. There's no need to remind me of them.
どうしてもとおっしゃるなら、ええ、コーラを求婚した理由は今でも恥じています。これ以上は蒸し返さないでいただきたい。
 
There's no need to remind me of something でsomethingを思い出させる必要はない。→わかっているから言わなくていいです。思い出させないで、という意味。
 
Violet: Don't you care about Downton?
ダウントンのことはどうでもいいの?
 
この一言にロバートはキレます。
Robert: What do you think? I've given my life to Downton. I was born here, and I hope to die here. I claim no career beyond the nurture of this house and the estate. It is my third parent and my fourth child. Do you care about it? Yes, I do care!
どう思っているかって?ダウントンに人生を捧げてきました。ここで生まれ死ぬことを望んでいる。屋敷と所領を育むことに全てを捧げています。ここは第3の親で4人目の子です。どうでもいいかのですって?どうでもいいわけがない!
 
career は仕事ともよく訳されますが、ロバートは貴族なので仕事はしておらず、ここでは人生おいて一番力を尽くしていること。
 
ここでコーラや三姉妹がきて話は終わります。
 
今日はここまでです。少しでも英語理解のお役に立てればですニコニコ