ドラマの会話を抜粋し、解説しています。
ネタバレにご注意ください注意
 
前回からの続きです。

 

コーラとロバート夫妻は屋敷の外を散歩をしながら頭の痛くなる遺産相続問題について話し合いをします。
 
その後、執事カーソンがやってきてロバートの母でコーラの姑であるバイオレットの訪問と、ロバートではなくコーラへの面会を告げられます。
Cora: I wonder what I've done wrong this time.
今度は何をしでかしちゃったのかしら。
 
この一言でコーラがクローリー家に嫁いでから20年以上に渡る嫁姑関係が見えますピリピリ
 
そんなコーラに夫ロバートは以下を伝えます。
 
Robert: Tell her about James and Patrick. She won't have heard. 
ジェームスとパトリックのことを伝えてくれるか。まだ知らないだろうから。
 
will not have heardは未来完了形で、通常はby やbeforeなど未来の特定の期間を付け足し、何かがその時まで起きる(起きてない)だろうと仮定します。以下がその一例。
 
今回の会話では、バイオレットがジェームスとパトリックの親族に起きた事故について、タイタニック号の事故が起きてからの過去から現在を過ぎた未来のどこかの時点までの時制を示す丁寧な文法を使っています。
シンプルに別の言い方をすると、
She doesn't know about it yet.でしょうか。

 

 

シーン変わって、応接室。全身黒い服に身を包んだ姿で暖炉の前に立つバイオレットは初登場でいきなり捲し立てます。
Violet: Of course I've heard! What else would I be here?
勿論聞いてますとも!それ以外で何のためにここにいるというの?
 
それに対してコーラはあーあ、また怒らせちゃった的な表情を見せます。
 
Cora: Robert didn't want you to read it in a newspaper and be upset.
ロバートは新聞を読んで知って驚かせなくなかったんですよ。
 
Violet: He flatters me. I'm tougher than I look. 
嬉しいこと。こう見えて私は強いのよ。
 
flatterの意味は褒めるですが、complimentやpraiseとの違いに、おべっかともし、取り繕うコーラ(とロバート)への嫌味です。
 
上記の画像の威厳ある姿と叱るような言い方で視聴者から見てもバイオレットはかなり強そうという印象づけられます。
 
それを新聞を読んで動揺するような儚げな貴婦人扱いしてくれてどうも、というのをflatterの一言だけで表し、見た目より強いのよとだめ押しで2つ目の嫌味を加えています不安
 
一言目に怒り、二言目に嫌味の応酬をしますが、切り替えも早いバイオレットは話し続けます。
 
Violet: I'm very sorry about poor Patrick of course. He was a nice boy. 
もちろんパトリックのことはほんとに可哀想で悲しいわ。あの子はいい子だったわね。
 
Cora: We were all so fond of him.
私達も皆彼がとても好きでした。
 
fondはlikeにも言い換えられそうですが、よく今回のようにvery/so fond ofと副詞をつけて表現されるとlikeとloveの間くらいで、言い方や文脈で愛着度合いが変わります。
 
今回のはただの親戚としてではなく、家族同然に可愛がっていた的な表現でしょうか。
 
Violet: But I never cared for James. He was too like his mother and a nastier woman never drew breath.
ですがジェームスは全く好きでもなかったわ。あまりにも母親に似すぎたの、あの人ほどいけ好かなかった女はこの世にいないわ。
 
loveは個人的に愛着、careは客観的な愛着、そこからI don't careは無関心となり、
don't care forは嫌い以外にも、ここでは死んだら今となってはもうどうでもいい相手という含みも伝えているようです。
 
・nastyは意図的に悪さする人のこと。性悪。
 
・draw breathは息をするで、
直訳すると、"彼女以上に根性の捻じくれた女性は息をしていなかった"→"生きている女性の中で彼女ほど不愉快な人間はいなかった。"
、と言っています。
 
ジェームスとその母親はバイオレットの夫側の親戚で、バイオレットとは血のつながりのない人間をボロクソ言ってます驚き
 
ここから本題に入っていきます。
 
Violet: You agree this changes everything.
このこと(ジェームスとパトリックの死)が全てを変えるとあなたも思うわね。
 
Cora: My words entirely.
全く仰る通りです。
 
"Your words are entirely same as mine."の言い換えです。

 

 

ここでバイオレットについて、
よく使用人からDawager(ˈdaʊə.dʒər/ダゥァジャア)と呼ばれてます。
これは爵位のある未亡人のことをさします。
 
ちなみにDawagerが住む家をDower (ˈdaʊə/ダゥア) House (亡き夫の遺産の屋敷)と言い、Dawagerと似ていますが違う単語です。
 
下矢印はバイオレットが独りで(+ 執事、レイディメイドと恐らく料理人も) 住んでいる家。
 
引退した貴族一人だけがこんな屋敷に住めるのは、バイオレットが当時のイギリスにおいて、第二期産業革命、もしくは技術革命により蒸気機関車/電報/蒸気船 (このエピソードに全部出てます) が普及されたことでこれまでより、何倍、何十倍の早さで移動・伝達を可能にし、そこから生産率が上がり、物流も向上しつつ、植民地化していくことで世界中の富がイギリスの王侯貴族に集まり繁栄をもたらしたことからです。
 
ピーク時のイギリス領地(1921年)と、独立した国とその年下矢印
 
かつて世界一と言われたイギリス大帝国時代を生きたバイオレットは、高慢とも言える気位が高い貴族を体現し、その生まれと自身の持つ能力を矜持としています。
 
他にもメアリーを含めた高慢な貴族が何人もこのドラマに出てきますが、各貴族とバイオレットとの考えや使用人に対する対応に違いがあるのもこのドラマの面白いところです。
 
また、バイオレットのセリフの半分くらいはイギリス文化、今回のようなirony(嫌味)やdry humor (無表情になることでの意味深なジョーク) から、色んな歴史/人物/文学の引用など多用されています。
 
そのため、バイオレットの言葉の理解するには教養も必要なのでイギリス人でも難しかったり面倒でもあります。
 
厄介ですが、わかると一気に会話に深みを出します。
 
今日はここまでです。少しでもドラマをより楽しむための英語理解のお役に立てればですニコニコ