サンラサーのカレーが教えてくれること | オクムラカナの「時にはカナリヤのように」

オクムラカナの「時にはカナリヤのように」

ベーシスト、オクムラカナのオフィシャルブログです。
音楽のことや日々思ったことなどを気ままにつづります。

このブログでは、私にしては珍しく、

メニュー一つ一つの、私なりの感想と解説をご紹介します。

 

本当は、あんまりしたくない。

気になったら自分で調べるものだったり、

作ったご本人に聞くことだと思うので。

 

けどこういう時なので、特別にね。

サンラサーのお皿に乗ってる食べ物たちには、

ぜーんぶちゃんと意味があるからね。

それを、今回は伝えたくなりました。

 

 

 

6月3日 テストラン お品書き

・キーママタール(豚ひき肉とグリーンピースのカレー)

・ココナッツえびクリーミーカレー

・今日のひとくちおかず ミニトマトの甘酢漬け

・いつものサラダといつものマンゴードレッシング

・アチャール各種 えのき ごぼう 牡蠣 ホタルイカ 砂肝

・群馬 氷室豚 低音調理 マサラの香りで

・いつものコーヒー、おしゃべり店主のマシンガントーク

 

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【キーママタール】

 


キッチンスタジオペイズリーで最初に習う基本の基本なのだそうです。

 

そして、グリーンピースはインドでは高級品ということなので、

このキーマにはおもてなしの意味が込められています。

 

キッチンスタジオペイズリーは、サンラサー店主まりこさんの師匠、香取薫先生主催のスパイス料理教室。

まりこさんは現在こちらで講師もされています。

まりこさんにとって原点のひとつであり、とっても大切な場所。

ペイズリーへのリスペクトと、初心に帰る事、お客様へのおもてなしの気持ちなど、この日サンラサーに久しぶりにお客様を迎えるまりこさんの沢山の気持ちがつまったキーマでした。

 

作る工程も、普段のキーマより玉ねぎを炒める時間が長いそうで、普段お店ではあまり出せないようなので、かなりレアメニュー!

確かに、いつものキーマに比べると柔らかい茶色で、油も赤色というより、茶色っぽいですね。

スパイス遣いは最低限という印象。

豚肉の味と香りとジューシーさが優先されるように組み立てているのが分かります。

 

ああ、美味しかったなぁ・・・。

 

 

【ココナッツえびクリーミーカレー】

 

 

SPICE VILLAGE主催の後藤さんココナッツチキンカレーのインスパイアとのこと。

確かに、これまでいただいたサンラサーのクリーミーえびカレーに比べると、

濃厚クリーミーな感じが増しているように感じました。

それでもサンラサーらしい、スッキリした後味で飽きの来ない仕上がりになっていて、

とにかく美味しくてスプーンがとまらなくって感動しました。

 

【ミニトマトの甘酢漬け】

休業前から人気のひとくちおかずとして定着していたもの。

こちらは実は、まりこさんが敬愛する豚組さんのインスパイアメニュー。

カレーやスパイス料理の中にあるとほっと一息つける箸休めにもなるし、

ぷちっと潰してキーマに混ぜたりしても美味しい。

ミニトマトは最強。

 

【いつものサラダといつものマンゴードレッシング】

サンラサーのサラダはシャッキリとした水菜がメイン。

季節によってスナップエンドウなどが入ったりもします。

 

カレーの中に生野菜がある意味は、色々なカレー屋さんを巡って分かったことの1つです。

口の中がスパイスやお肉でいっぱいになると、ちょっと食べ飽きちゃうんです。

だから、サラダやトマトやベジアチャールなんかでバランスを取る。

日本の定食で言うと、お漬物やひじきの煮物みたいな位置付けのものと思っています。

一皿の満足度も一気にアップする。

 

だから私も、イベントでカレーを出すときは、

なるべくカレーのみではなくサラダや副菜を添えるようにしています。

 

【アチャール各種 えのき ごぼう 牡蠣 ホタルイカ 砂肝】

サンラサーを語る上で大切な要素としてアチャールがあります。

アチャールは簡単に言うとインドのお漬物。ピクルスのようなイメージ。

火を通した油とスパイスとお酢で具材を煮詰めて漬け込みます。

 

まりこさんのアチャールには、各材料の明確な分量を記したレシピはありません。

もちろん、なんとなくの配合はあるけれど、それはまりこさんの頭の中。

なぜなら、その日のカレーのメニューや、天気、気温、湿度、季節などによって配合を変えるから。

これはアチャールだけではなくって2種のカレーにも共通していることなんですけどね。

 

更に、この日はサンラサー上級者達が訪れるテストラン。

各回に招待しているお客様の好みや趣向も頭の中に入っているまりこさん。

そんな脳内データベースも網羅した、この日だけの特別仕様なアチャール達が並んでいました。

それぞれの具材ごとに異なったチューニングのアチャールベストセレクション!

みんな誇らしげに、お皿のその位置に居るのが良く分かりました。

 

ごぼうの香ばしい香りと、砂肝のマスタードの香りが特に好みでした。

 

 

【群馬 氷室豚 低音調理 マサラの香りで】

 

お品書きの写真を見て分かる通り、どのメニューよりもまりこさんの説明書きが長いです。笑

 

そこに書いてある文章を抜粋すると・・・

「豚組の國吉社長に取引先としてご紹介いただきました。

新宿の伊勢丹さんでも販売している超美味しいやつです。

難しいと言われていた豚肉の熟成ですが、日本古来の『寒ざらし』『寒仕込み』などの技術から知恵を借り、

25年以上かけて、豚肉を柔らかく旨味豊かに熟成することができるようになりました。

凍るか凍らないかの温度『氷温域』の庫内で熟成されているのが『氷室豚』の名前の由来。

豊かな風味と旨味が詰まった赤身。脂身はあっさりとしていて甘い。

今回は、アチャーリーローストポークには仕立てず、

氷室豚の甘さを感じていただけるようなマサラのチューニングで仕上げました。」

とのことです。

 

写真を見ていただいて分かる通り、脂身は透明に透き通っています。

赤身部分はほんのりピンク色。

 

ほおばると豚肉の甘みが口いっぱいに広がります。

特にこの日の氷室豚は神ロットで、

とっても柔らかくて噛み切れるほど。

味付けは最低限なのでお肉本来の味わいを存分に楽しめるチューニングになっています。

 

そうはいっても、こちらはカレーのトッピング。

スパイス料理と一緒に食べることを想定された塩分量でキッチリと味が決まっています。

うーん、、、、すごい!

 

 

【いつものコーヒー、おしゃべり店主のマシンガントーク】

この日は、1杯ずつ抽出できるマシンで、それぞれのお客様好みの食後の1杯を出してくれました。

私はコーヒーじゃなくってスリランカ紅茶をいただきました。

「カナはお茶にする?」って。

まりこさんエスパーかな?って思いました。

いつもはコーヒーだけど、この日はお茶の気分だったのです。

 

-

 

以上、ひとつひとつのメニューについてお話ししてみました。

 

まりこさんはこの日、

日ごろお店を支えてくれる大切なひとたち、

休業中にお世話になった人や、

出会った人々への敬意をこめて、

この一皿を構築したんだと思います。

 

そして、

「いつもありがとう。」の気持ちと、

「今の私はこうだよ。」の気持ちと、

「これからもどうぞよろしくね。」の気持ち、

そんなまりこさんの気持ちが、

目いっぱいこもっていると思いました。

 

まりこさんは、

ただ美味しいカレーを作るだけじゃなく、

そのカレーが持つ背景である、

インドの文化やそこで暮らす人々へのリスペクトと、

季節、気温、天気、

スパイスの効能、

食材がもつ栄養や生産者さんなど、

ひとつの料理に関わっている事柄
ぜーんぶを、とても大切にしています。

 

なので冒頭で申し上げたように、

サンラサーのお皿に乗ってる食べ物たちには、

ぜーんぶ、ちゃんと意味があるのです。

 

その意味に気付いた時、

お皿の上の料理たちが、

より一層キラキラ輝いて見えます。

より一層カラフルになります。

目の前にインドの風景や、

お野菜の育てられている畑が見えることもあります。

 

一皿で大冒険ができるんです!

 

しかも、

季節や気温などで毎日微妙にスパイスや塩分などの

チューニングを変えてらっしゃるので、

きっと、その日の自分の体調に合ったカレーに出会えると思います。

 

あ、辛さも、

そのカレーで美味しいと感じる最小限に抑えてくださることが多いので、辛いのが苦手な方も安心ですよ。

 

 

新鮮なスパイスがふんだんに使われているサンラサーのカレーは、

ひとくちひとくち味の表情が変わるのも面白いところです。

ホールスパイスという、パウダーにしないで丸のまま使うスパイスが、

比較的そのままサーブされることが多いのもその理由のひとつ。

 

カルダモンが苦手な方もいますが、私は大好き。

サンラサーの場合はしっかりじっくり火が通っているからなのか、

食べてもギャッとなったことはあまりないです。

 

辛いのが好きなら、じっくり煮詰まった赤唐辛子が入っていたらラッキー!

カレーの旨味を吸い込んだ唐辛子をぜひ食べてみてください。

 

香ばしいクミンやマスタードシードがふわ~っと香る瞬間もあります。

 

食べ進めていくと味に慣れてくるので、

「シナモンが効いてるなぁ」とか、気付いたりします。

 

まあ、そんなこと分からなくても、カレーは自由なので

「あ、今食べた一口、なんか分かんなかったけど美味しかった!」

でいいんです。

 

そして、全部を一口ずつ別々に楽しんだら、

今度は混ぜて食べてもいいんですよ!

むしろ、混ぜてみて、自分の好みの味を探してみてください。

 

この日のカレーだったら、

キーマにえびカレーのグレイヴィー(カレーのスープの部分をこう呼びます)をちょっとかけて、

混ぜて食べるとまた違った味わいで楽しいです。

 

アチャールとカレーをまじぇまじぇして食べても美味しい。

インドでは自分で好きなようにカレーや副菜を混ぜて、

自分好みの味にする食べ方は一般的です。

 

そう、目の前にあるその一皿は、

アナタにとっての宇宙なのです。

 

私はインドカレーやスリランカカレー屋さんに行くと、未だに

「うわ、これ食べたことない味だ!」という瞬間に出会えます。

 

それはその時のカレーと副菜で生まれる魔法のような味。

もう一度と思っても、同じようにならないこともあります。

それが面白い。

 

 

どうでしょう?
面白くないですか?

魅惑のカレーの世界。

 

通販の冷凍カレーも、

お店の再現性かなり高いし美味しいけれど、

ぜひ一度、いつか、サンラサーの店内で、

まりこさんが直接提供して下さる一皿を堪能してほしいです!

 

ただ美味しいカレーを食べるだけじゃない、+α(プラスアルファ)の体験が、アナタを待っています!

 

 

2020.06.13

オクムラカナ