『Jの神話』でメフィスト賞を受賞、推理小説家の乾くるみ氏の作品。
2年ほど前に映画化されていて、他の映画を観に行った時に予告だけは拝見して知っていたが読んではいなかった。
本作品はタロットカードをモチーフにした「タロットシリーズ」の一つでカードの種類は「恋人」。
内容は恋愛小説である。
だが、ミステリー作品のようになっていて、日本推理作家協会賞長編と連作短編集部門候補作になった。
賞ごとにタイトルがあり、80年代が舞台の話なので、その時代に流行った曲のタイトルが章のタイトルになっている。
2015年に映画が公開されている。
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静岡に住む大学生の鈴木は友人の望月から、メンバーが足りなくなったからと頼まれ参加した合コンで、繭子と出逢う。
初めて見た時から、彼女に惹かれていたが、彼女も鈴木を気にしていて、2人は仲間に隠れて交際を始める。(「side-A」)
6/19、総務部長から呼ばれ、東京への派遣の辞令が7月に正式に下り、遠距離恋愛になる鈴木と繭子。
週末は繭子と過ごすことに決め、毎週通うと約束したのだが…。(「side-B」)
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タロットシリーズの「運命の輪」がモチーフの『リピート』は読んだことあるのだが、話題になっていた本作品の方を後に読んでいる。
全体を大きく分けるとside-Aとside-Bの2部構成になっている感じ。
細部を記憶しておいて読むとside-Bで「?」が頭に浮かぶ部分が多い。
読んでない方のために、ただの恋愛小説ではないことだけはお伝えしておきたい。
(ネタバレは写真下に…読んでない方は読まないようにお願いします)
(ネタバレします)
まず少しずるい予想のようなもので、side-Aとside-Bだから主人公が違う、もしくは違う人物の視点からなのではないかな?と読み始めました。
Aを読んでいる時に随分合コンに出席してる女性・男性多いんで、浮気がどうとかはありそう…なんて思いながら。
Aの方は一途な鈴木くん、Bの方は繭子が二股している視点か、浮気相手が主人公なのかな?と思ってたら、「あらあら、鈴木って名乗ってるから社会人になってからの話か」と思い始めました。
でも、「うん?こんな会社名だったっけか?」というのが引っ掛かり、慶徳ギフト静岡の本社…?
あれ?富士通じゃなかったっけかな?
じゃあやっぱり…と思い当たる部分がいっぱい。
side-Aで夕樹を「タキ」で「たっくん」に「随分無茶苦茶なあだ名つけるな〜怪しいな、繭子」と思ってたので、鈴木はよくある名字とside-Aでも言ってたし、違う鈴木かぃ?と思い始めたけれども…。名前まではわからないまま、性格もside-Aとside-Bは全然違う。
Bは同僚に服のアドバイスしてやろうか?みたいなのとか、酔ったらキレちゃうみたいな。自分のこと人前のセリフでは「俺」(他の心の中の一人称はずっとAもBも「僕」。Aでは一回繭子の前で「俺」って言っちゃうあたりがひっかけでしょうか)。
ラストの二行は読まないでって言ってたよね。(最後まで我慢して読みませんでしたよ。もちろん。)
石丸美弥子がラストの二行で「辰也」って声かけしたってことで鈴木は辰也って名前の社会人だってことで。
そんなこんなでここに間違えたこと書いてもなんなんで、もう一回side-Aの何があった日ってのを書き出してー我ながらヒマ人だと思います(笑)ー確認。
でもカレンダー見ながらでも曜日が9月ではおかしい日があったので、あやしいかもですが…。
繭子へ初めて電話をしたのが8/9以降の夜なのだけれど、夕樹が日曜日で21時過ぎてると言ってる場面があって、ちょうど辰也の方で繭子に妊娠かもと言われた日が8/9で、口喧嘩して飛び出して車で東京に帰るところで、まだ晴天なんですね。
妊娠騒動の後に夕樹の初の電話をもらって
るのではないかな?当日だとしたら、繭子おそるべし。
繭子がルビーの指輪(タックンってあだ名より先に気になったのがコレ)をしてきた、しかも誕生石。
誕生石の指輪とかアクセサリーなんてのは自分で買わない(買う人もいるでしょうけど)。怪しい。
少しして外してるのも怪しい。
私の中では繭子は完全に悪女だったので…(理由はタイトルで恋愛モノだってだけです笑)夕樹にとっては初体験で、ルビーの指輪くれる人がいそうな繭子が処女のわけないのに痛そうってことは指輪だけ貢がせてんのか?とかまで思って(笑)。下品な話題ですみません。
だけど、side-Bで堕胎してるんですね。
辰也の方の日付は会社が忙しい時などはあまり書かれていなくて、でも肝心の繭子が産婦人科で堕胎手術を受けた日は日付はわからないけれども、「八月最後の週末」。
side-Aで夕樹が電話でデートをキャンセルされた曜日は金曜日で8/28。まさに八月最後の週末ですよね。
夕樹が繭子の部屋に初めて行って、一晩過ごすことになるのは、9/15敬老の日で祝日のテニスをして帰ってきた日。
夕方繭子から電話があって、盛り上がって、そのまま部屋に来てと言われたからだけれども。
んじゃ、痛いんだろうな。ってことで。
海の家(?)で夕樹が繭子に数学科ですよね?数字覚えるの得意ですか?って聞かれてる場面があって、数学科かー。へー(特に意味なく一応記憶。この辺りはまだ推理小説家の作品だからと疑いつつも、二股に発展していく恋愛小説だと思ってたので)。
で、繭子の部屋に物理の本があって、違和感を覚えている夕樹、side-Bのタックンは逆にハードカバーの本がいっぱいあるのを見て、「何だよこれは」って怒りまくってますね。夕樹の貸した本が文庫じゃないんだって繭子が言ってる場面があるので夕樹の貸した本ですね、きっと。
あと、辰也は舞台を観に行って美弥子の元恋人・天童に舞台の内容に物理学のちゃんとわかってる人が書いてるんじゃないか、物理学学科出身か?って話かけて、その程度なら専門の学生じゃなくても書けると言われちゃう。
「慶応大学出身は違いますね〜」を、「同じ物理学科でも」慶応大学出身は違いますね〜、という意味で言ってたとしたら、辰也は物理学科のような気がしません?
仮に物理学科でなくても、辰也が物理学に詳しい人というのはわかるので、(はっきり物理学科と言ってる場面は見つけられませんでした、ごめんなさい〜)繭子の部屋にあった物理学の本は、辰也のかな〜と思いました。
そんな感じで、普通の恋愛小説だなと思ったまま、「同じ鈴木くん」だと思ってたらいっぱい矛盾があるので、文章の下手な作家、くらいに思われてしまうかも…そこまではないか。
辰也が、11月半ばに入って(と辰也が言ってる)繭子と過ごそうと思ってたターミナルホテルに予約が入ってるのを思い出して、スカイレストランの予約と一緒にキャンセルしてるけど、同じくside-Aで11月の半ば頃に電話してると思われます。
夕樹は11/6に免許をとって、交付が1週間後、つまり11/13以降で、中古車を買って交付直後の週末デート後に、(つまり、11月半ば!でしょう?)クリスマスイブについて繭子と話して、
帰宅後すぐにターミナルホテルに電話していて、キャンセルが出たばかりで、レストランもホテルの部屋も予約できちゃう。
繭子が「今日どこかで失恋したカップルがいたってこと」だというけども、辰也が予約キャンセルしてたんだよー…と言うなんとも…。
でも繭子は(私にとって悪女だから)もしかしてターミナルホテルの辰也の予約を知ってたのかな〜。
ちゃんとしたホテルでクリスマスを過ごすといったら、「ターミナルホテル!」みたいなのがあったのかもです。
辰也が予約をしてたのを知らないのだとしたら、随分皮肉な…。
夕樹に近づいたのは「タックン」にできるからだよね(私の中で繭子は完全に悪女になっている…)?
お腹の赤ちゃんは堕胎手術で亡くなってるけれども、殺人事件の起きない推理小説ですよね。
よく練られてます。だけど、繭子の性格、彼女がいてもいいって言い切っちゃう美弥子、女性って、おぉコワイと思う男性作家の作品でした。
くるみちゃんって名前、純文学の女性作家みたいな名前ですよね。
1番騙されちゃうのは作家・乾くるみ氏の性別かもしれません。