通りで買い物をする春雷の妻銀花(インファ)。新入りの一豆(イートウ)が軍服を着て付き添っている。

 

豆腐屋から好大人の声がする

 

好大人「さあさあ早くもっていかないと出来立てほやほやの豆腐が凍っちまうよ」

 

銀花は財布から小銭を出すと好大人が豆腐を新聞で包み差し出した

 

好大人「銀花、中へ入っていきな。兵隊さんもおはいんなさい」

 

3人は店の奥に入って椅子に座る

 

 

好大人「軍服が良く似合っているじゃないか」

 

一豆「俺は」北洋軍の兵隊何ぞになりたくないんです。白虎張(パイフーチャン)の子分がいいんです」

 

好大人「好。だが総攬把は革命派の幹部を皆殺しにしちまったんだ。新しい総督も真っ青だぜ。おかげで満州は中華民国に宣戦布告したも同然だ。俺も豆腐屋に戻りたいがそうもいかなくなった」

 

一豆「あなたは押しも押されぬ軍の副司令官です」

 

好大人「俺は生まれついての豆腐屋だ。うまい豆腐を作らせたら天下一だ」

 

一豆「戦をしても天下一です。総攬把が劉備であなたは関羽だ。そこへ諸葛孔明の王永江(ワン・エイジャン)が現れたとみんなが言っています」

 

好大人「その王永江が満州に俺たちの国を作ろうと言う。だがみんなは長城を超えて中原を目指せと言って耳を貸そうとしない。奴らの荒ぶる魂を鎮めることが出来るのは俺しかいない」

 

銀花「また戦争になるんですか」

 

好大人「ああ、この先は馬賊張作霖と中華民国の大喧嘩になるだろうね」

 

一豆「すげえや」

 

銀花は不安そうな顔をする

 

好大人「どうしたね銀花」

 

銀花「もう人が死ぬのはたくさん」

 

好大人「お前さんの亭主は『不死身の雷哥だ』春雷はいい男だ。(ふと気づいて)おまえさん、順天聖母様にお参りはしたかね」

 

銀花は黙って頷く

 

好大人「(肩を叩き)好、好。それなら心配はない。きっと丈夫な子が生まれるさ」

 

銀花「お願いよ好大人。もう戦争はやめて・・」

 

好大人「好、好。まずは明日の総督との会談でこれからの満州がどうなるかわかるだろうよ」

 

優しく銀花を抱いて励ます好大人であった