奉天の駅前で机と椅子を置いて王永江(ワン・エイジャン)が易占いをして客を呼び込んでいる

 

王永江「天命を知らしめるのが私の務め。さあ、占っていかれよ!」

 

そこへ張作霖が一人で現れた

 

張作霖「総督閣下の片腕とまで言われたあんたが、どうして辻占いにまで身を落としたんだ」

 

王永江「(顔を見上げて驚き)張作霖か・・私にはこの商売が似合っているのだ。君こそ陸軍中将になったというのにいつまでそんな馬賊のなりでいるんだ」

 

張作霖「馬賊が馬賊のなりをしてどこが悪い。それに俺様は、はなから軍人じゃねえ」

 

王永江「一個師団を率いてもいまだに馬賊の頭目だと名乗るつもりか」

 

張作霖「当然だ。俺様は奉天の総攬把張作霖だ。だが、近々肩書を変えてやろう。満州王、満州王の張作霖だ。邪魔したな、先生よ」

 

去って行く張作霖の背中を見てゆっくり立ち上がり

 

王永江「俺の人生を変えるのはこの男だ」

 

王永江は迷うことなく駆け出して行った。

 

幕が閉まり吉永勝がメモを持って前に出る

 

吉永勝「こうして王永江は読み書きのできない張作霖を支える参謀となり、満州全域の清国軍と全馬賊に対する布告文を草案した。事実上の満州独立宣言である。(メモを書きながら)『張作霖は権力を欲さず、その期するところは民の平安なり。貧困を骨髄に知るからこそ、万民の楽土を期したり。私は彼を英雄と信ずる』」

 

幕が上がり布告分を持つ王永江と後方でせり上がる張作霖

 

王永江「(布告分を広げて)満州は我らが故郷の地たり。我、天命を奉じて起つ。服う者は敬して迎え、服わざる者は粛清する。目指すはひとえに満州の平安のみ」

 

張作霖「袁世凱だろうが孫文だろうが長城のこっちには来させやしねえ。俺様は満州の王、張作霖だ!」

 

        ー 幕 ー 

 

 

 

清国は列強の勢力に圧される一方で、国内では孫文らの革命勢力が台頭し混乱を極めていた

 

「満州の王」を名乗った張作霖は、やがては龍玉を掲げて長城を超え中原へ進出し中華を救う英雄となるのか