戦いの翌日、張作霖はわずかな手下を連れて奉天の総督府へ報告に向かった。

日露戦争後2年経つというのに奉天城の清国正規軍も場外に駐留する日本軍も匪賊と化したロシアの残兵を討伐できずにいた。それをたった一日で片付けたのである。

 

春雷「それにしても奉天にいる正規軍はなぜロシアの残兵を討伐しようとしなかったんでしょう」

 

麒麟「官兵は討伐などできない腰抜けどもだ。それに奴らは百姓たちを畜生か虫けらだと思っている。総攬把のあの小さな背中にしょっていなさるのは四億の民の苦労なんだ」

 

場内に入ると子供たちが口々に張作霖の名を呼びながら隊列の左右にまとわりついてきた

 

張作霖「総督に会うのは俺と麒麟と春雷だ。残りはここで待て。秀芳、万が一官兵が俺をどうこうするようなら帰って好大人と白猫に知らせるんだ」

 

秀芳「承知しました」

 

総督府の門の前で馬を止め、銃剣を持って並ぶ衛兵に到着を告げる

 

張作霖「張作霖だ」

 

途端に兵士は左右に分かれた。張作霖は馬を降りロシア将校の首を入れた袋を担ぎ中庭へ入っていく。麒麟と春雷が続く。無数の銃口が三人に向けられている。建物に入り総督室の前で

 

将校「コサック兵を皆殺しにしたとは本当かね」

 

張作霖「噂は早いな。昨日の今日だぜ」

 

将校「斥候から報告があった」

 

張作霖「斥候を出すなら軍隊を出せ!おかげで可愛い子分を30人も死なせちまったぜ」

 

将校「貴官の子分ではなかろう。官軍に帰順したからには清国陸軍の兵だ」

 

張作霖「俺に文句を言うならせめて10人殺してからにしろ!おまえさんの命の代わりにこいつをもらっておく」

 

将校の軍服に付いている勲章をむしり取り、かかとで総督室の扉を蹴り開ける。中には奉天総督の徐世昌(ジョ・シイチャン)が座っている。袁世凱の腹心である。

 

 

張作霖が官軍に帰属する理由は、正規軍に代わり匪賊を討伐することで報酬を要求し、馬賊や住民を養い貧乏で苦しむ者が無いようするためである。

さて、今回の交渉はどうなるか・・