龍玉のうなり声が続く中、二人は奥へと進んで行く
春雷「俺はこのためだけに一千元で雇われたんですかね。バラバラになったあんたの体を奉天の奥方や子供に届けて『総攬把はバクチに負けました』とでも言うんですかい」
張作霖「ハハハツ。(振り返り春雷の鼻先に松明を向けて)いいか春雷。俺は満州の民を飢えから救う自信はある。龍玉なんざいらねえ。だが俺が満州を苦労のない生活ができる土地に変えれば、人々はこぞって長城を超えてやって来る」
春雷「つまり、満州だけを変えても意味が無いと」
張「そうだ。自分だけが困らねえ幸せに何の意味がある。万一龍玉を抱いても俺の体が砕けなければ、いつか必ず四億の民が飢えずにすむ日が来る。だから今すべてを失くすか手に入れるかの博打を打つことにした」
扉の前に立ち春雷が閂を剣で開けると中からまばゆい光が広がった。正面には骨となった戦士が胡坐をかいて龍玉を抱えている。張作霖がゆっくり近づく
春雷「やめとけ総攬把!満州の王で十分じゃねえか」
張「そうはいかねえ(松明を春雷に渡し龍玉の前にひざまづく)俺は奉天の総攬把、張作霖。四億の民のために龍玉をいただく」
ゆっくりと龍玉に手を伸ばす
春雷「やめろー!!」
まぶしい光が放たれ落ち着くと張作霖が龍玉を抱いている
張「(立ち上がりながら)どうやら俺に天命とやらが下ったらしい」
春雷「(恐る恐る顔をあげて)総攬把・・」
張「春雷、おまえはこれからどうする」
春雷「どうするって、こうなりゃとことん付き合いますよ」
張「頼むぜ、一千元壮士さんよ」
声をあげて笑いあう二人であった