張作霖と春雷は雪の中馬を走らせ、清国の祖ヌルハチを祀る山の裾にやってきた。参道の入り口の下馬碑の前で馬を止めて
張作霖「(下馬碑を見て)春雷、字は読めるか」
春雷「聞くだけ野暮ってもんですよ。だが「下」と「馬」って字はわかります」
張「俺よりはましだな。ここで馬を降りろと言うわけか」
二人は馬を降りて雪の降り積もった参道を歩き出す
春雷「ヌルハチ公の墓参りに来たんですかい」
張「いや。おまえは龍玉の伝説を知っているか」
春雷「代々の中華皇帝が持っていた王者のあかしってやつですか」
張「ああ。乾隆帝がどこかに隠してからこの国は衰亡の一途をたどっている。俺はその龍玉が清国の祖ヌルハチが眠るここにあると思う」
春雷「それを探してどうするってんです」
張「龍玉を持つものは天下の覇者となる。だが持つべからず者が触れればたちまち身体は粉々に砕け散るらしい」
張「やめとけ総攬把!悪い事は言わねえ」
不意に雪雲が晴れ、わずかに光が降り注いだ
張「見ろ春雷。天が寿いでいるぜ。(モーゼルを抜き頭上に揚げて)俺様は奉天の総攬把張作霖!四億の民の命を救うために万の命を奪ってきた。文句があるなら今一度光を隠せ!褒めてくれるなら蒼穹を現わしてみろ!(銃を撃つ)」
銃声が辺りに響き渡り、さらに陽光が差して明るくなる
春雷「好(ハオ)!やったぞ。あんたは王者だ」
しばらく進むと唐松と楡(にれ)の大木が生い茂るお堂の前に来た。張作霖が楡の木に近づく
張「ここだ。この横に伸びた根は龍の手だ。龍の手が地下の龍玉を掴んでいる」
剣を抜き大理石を引きはがすと地下から風が吹きあがり龍玉のうなる声がした
春雷「龍玉が唸っている。やばくないですか」
張作霖「嫌ならここで待っいるんだな」
張作霖は木の枝に襟巻を巻き、懐から小瓶を取り出して油をかけ松明に灯をつけてゆっくりと墓穴を降りて行った。仕方なく春雷もあとに続く。