馬賊の浪人市場に壮士たちが馬を連れて集まっている。ひと戦30元が相場とされる中で銃の腕をあげ百元壮士となった李春雷に白い皮大依(かわおおい)を着た張作霖が子分を連れて近づく。彼は「白虎張(パイフーチャン)」と呼ばれる馬賊の総攬把(そうらんぱ)である。
張作霖 「(春雷の馬をなでて)これはお前の馬か」
春雷「ああ」
張作霖 「拳銃を見せてくれ」
春雷が銃を渡すと手にして確かめる
張作霖「いくらだ」
春雷「銃は売らない。おまえさんのモーゼルと引き換えでもな」
張作霖「銃の話じゃない。おまえはいくらだ」
春雷「(値をふっかけて)一千元」
法外な値に子分たちが驚きの声をあげる
張作霖「好(ハオ)。おまえを一千元で買おう」
周囲からどよめきの声が上がる
春雷「腕は試さなくていいのか」
張作霖「馬と拳銃を見ればお前の腕前はわかる。お前の名は」
春雷「一千元壮士でようござんす」
張作霖「真面目に答えろ。親からもらったおまえの名だ」
子分が金の入った革袋を置くと黙って革袋を馬に積んで答えない春雷
張作霖「変わった奴だ。それなら俺が先に名乗ってやろう。俺は奉天の総攬把、張作霖」
春雷「(驚いて振り向き)総攬把と言えば・・白虎張!」
張作霖「そうだ。その白虎張に名乗らせて一千元壮士はなかろう」
春雷「俺の名は李春雷(リ・チュンレイ)。一千元はお返しします。俺にはそんな値打ちはない」
張作霖「いや、俺の目に狂いはない。俺はな二十歳ばかりの時に占いのばあさんから馬賊の大頭目になるといわれてその通りになった。なんでも末は満州の王者になるらしい」
春雷「そりゃあたいそうなこって。だったら子分に雇われた俺もそれなりの出世ができるってことですかね」
張作霖「さあな。お前の命がそれまでもてばの話だ」
春雷「なんだってそんな話をどこの誰ともわからねえ俺になさるんで」
張作霖「さあな。俺は人と馬を見る目には自信があるんでね」
春雷「総攬把、一つ聞いてもいいか。あんたの敵は何だ。清国か」
張作霖「俺の敵はただ一つ。貧乏だ。この国の4億の民のうち3億9990万人は貧乏でひどい目にあっている」
春雷「俺の親父は、はやり病で死んだ。母は寝たきりの兄を看ていた。それなのに俺は年端もいかない弟と妹を凍てつく荒野にうち捨ててきたんだ」
張作霖「つらい事は忘れろ。俺もそうしている(肩を叩き)さあ、行くぞ」
春雷「行くって、一体どこへ行きなさるんで」
張作霖「天命を取りに行く」
春雷「なんです、そりゃあ?」
張作霖「(馬に乗り)黙ってついて来い。」
そう言うなり駆けだして行く張作霖を訳が分からぬまま追っていく春雷であった。
年端もいかぬ弟妹こそ、春児と玲玲でありました。