三人は昭姫の店に

 

業平「(道真に)本当にあの奥方を里親にするのか?」

 

道真「権少納言様は藤原京家の流れです。子が無かったせいもあって政治の争いとは無縁の穏健派のようですし」

 

業平「たしかに安泰ではあるが・・・」

 

道真「情さえわけば環境としては最高です。実の親より万倍もいいでしょう」

 

長谷雄「そうですよ。紀長は母親が死んだことだって知らないし。知っていても何とも思わない人ですよ!あいつ何とかしましょうよ!(勢いよく立ち上がる)」

 

フキ「ちょっと、長谷雄様!手が空いてるんなら代わってくださいましな」

 

長谷雄「えっ、でも私、赤ん坊何て・・」

 

フキ「何言ってるんです!ご自分が拾って来たんでしょ。ヨリちゃんは自分の子だっているんですからね(泣いている赤子を渡す)」

 

長谷雄「ああ、よしよし(あやしているが、泣き声は大きくなる)」

 

昭姫「あーそれじゃあ危ないよ。落っことさないで下さいましよ」

 

長谷雄「は、はい。すみません」

 

ヨリ「すみませんねえ、うちの子の夜泣きがうつったようで」

 

道真「赤ん坊ってこんなにずっと泣いているものなんですね」

 

ヨリ「夜中でもしばらく泣いて表を歩かないと泣き止まないんですよ」

 

道真「(何か思いついたように)ヨリさん、今夜から夜中のお守りは長谷雄がしますので寝て下さい」

 

長谷雄「え、ええーっ!管三殿、そんなの無理ですよ」

 

道真「それと昭姫、夜に人を貸してください」

 

昭姫「ええ、それは構いませんが、お代は業平様に?」

 

業平「(道真に)お前は本当に私を何だと思っているんだ!」

 

昭姫「あら、女性が困っているんですよ。お得意でしょう?」

 

業平「女と言っても赤子だろうが!」

 

みんな大声で笑う中、一人思案する道真であった