里親候補はそれぞれ訳ありで、道真達は昭姫の店に戻ってきた
昭姫「(業平に)と、いう事なんですよ」
業平「なるほど。(赤子を見て)その子の里親を探していたのか」
長谷雄「お願いです。(手を合わせ)父上にも母親にも言わないで下さいいい」
業平「だが、おまえの子ではなかったのだろう?検非違使に届け出ればいいものを。子は国の宝、悪いようにはするまい」
長谷雄「でも、ちゃんとした親を探して託すまでが私の責任かなって。変な男に騙されるようになってはいけませんし」
道真「おまえは娘を嫁にやる父親のつもりですか」
長谷雄「縁っていうか、情がうつったって言うか、私がこの子を拾ったのも何かの巡りあわせですから」
客に応対していたフキが来て
フキ「姐さん、昨日のお薬湯が良かったからって初音さんが追加欲しいって来ていますよ」
昭姫「ああ、お待ち。業平殿、少々失礼を」
立ち上がって薬湯を取り、初音に渡し戻って来る
業平「今の客、権少納言様の奥方付きの初音ではないか?」
昭姫「ええ、そうです。よくお薬湯を買いに」
業平「あそこは確か去年の夏に生まれて間もない娘御をはやり病で亡くされてな。歳がいってからできた娘だったからか、それはそれはお力落としでな。奥方もまだ伏せっておられるとか」
昭姫「まあ、そんな・・。お薬湯も奥様の物かもしれませんわね」
業平「子を失くしてからひと月に一度、尼寺に経を納めに行くそうだ。亡くなった子の供養であろう」
長谷雄「じゃあ、里親にちょうどいいんじゃないですか」
業平「死んだ子をまだ忘れられないのに養子とはな・・」