車を降りると少し肌寒かった。


久住の花の村のゲートをくぐったら、
赤いコキアが目に止まる。


緩やかな坂を下るとベゴニア畑が広がっている。
鮮やかな赤いカーペットの様だ。


その先のローズガーデンを抜けたら、
園内のグランピング施設が見えてきた。


グランピング客の久住連山の眺望は
さぞや贅沢で素晴らしかろう。


カムイには今のところ
利用する程の余裕が無い(ヾノ・ω・`)ムリムリ


不思議なドアの横を通り過ぎて……


やがてマリーゴールドの丘に辿り着いた。


こんな景色が見たかった。


なだらかな斜面を
マリーゴールドが埋め尽くしている。


まだ満開とは言えないらしいが、
カムイには程良い咲き具合。


しばし佇み、マリーゴールド畑と
その丘の上に広がる秋空のコントラストを
眺める。


少し冷たい風にそよぐ小さな花達が
過ぎ行く季節に震えている。


素敵な景観はいつまでも見飽きないが、
この後の大切な目的の為に移動する。


様々な花で彩られた道を進む。


コスモス畑は台風14号襲来によって、
かなり被害を受けたようだ。


ただ天を目指して、
健気に咲こうとしている花達を秋風が揺らす。


そしてお目当てのフジバカマの群生地へ向かう。


「今朝は寒かったせいか、
アサギマダラは一匹も
飛んでいませんでした。」


受付の女性スタッフの気掛かりな言葉に
足取りが重い。


不安な気持ちで
フジバカマの咲くエリアへと入っていく。


「いないか……。」


名も知らない小さな蝶だけが1匹。


期待薄の気分で、
更に奥へと足を踏み入れる。


大きな蝶がヒラリと舞い降りてきた。


アサギマダラの飛来。


フジバカマの花めがけてフワリと止まる。


まるで深呼吸でもしてる様に、
羽根を開いたり、閉じたりしながら、
花の蜜を吸っている。


嬉しい事に、4匹程のアサギマダラが
フジバカマの周りを舞っている。


「また今年も会えて良かった。」


後ろの方からご婦人の声が聞こえた。


数名の観光客がカメラやスマホで、
蝶を追いかけている。


アサギマダラは快適で温暖な気候の土地を
目指して、
秋には南下し、初夏には北上する。


我々の想像よりも遥かに高い飛翔力と
移動性を持ち、
上昇気流に乗り、日本を縦断するとか。


時には国境を越え、海を渡り、
旅する距離は数千㎞にも及ぶらしい。


か弱そうに見える旅人は
我々より遥かに多くの景色を
見て来たに違いない。


人が近付いても気にする様子も無く、
主役はフワリフワリと優雅に花を選んでいる。


神秘的で美しい姿につい見とれて、
際限無くスマホを向ける。


いつまでもここで
蝶と共に過ごしたいところだが、
この後の予定がある。



逞しい蝶達が来年ここに帰ってくる頃に、
また会いに来よう。



花の異邦人の休息を邪魔せぬ様に、
カムイはそっとその場を離れた。


何だか元気を貰った気分で、
花公園のゲートを出る。


本日のキャンプ場のチェックインにはまだ早い。


カムイは「カフェボイボイ」へと向かった。


……続く






前回の夏のくじゅう花公園はコチラ↙️