写真は檜。品種名は石化檜。
石化檜(せっかひのき)とは面白い名前ですね。
普通種檜との違いは、①葉の形状 ②樹姿
の二点です。
①葉の形状は、先端が丸まって萎縮したように見える。
②樹姿は矮性。
拙老は、この檜をあまり好まなかった。
葉の先端が萎縮して固まったように見えるところが、どこか定年後の「毎日日曜日爺さん」を見るようで、愉快にはなれなかったのです。
例えば、「津山檜」の火炎の力強さはなく、普通種檜の伸びやかさも見られない。
空財布を抱えて縁日を背中を丸めてうろつく金欠爺の愚老を見るようで、石化檜を見るたびに狼狽致したものです。
人も物も歳月を重ねると、どこか他とは異なる、光る部分が見えてくるものですね。
普通種檜のように、「伸びたいだけ伸び、拡げたいだけ葉を拡げ」る我が儘放題、自己中心の生き方とは正反対、他者との共生を考えているような気がするのです。
控えめに枝葉をそっと出す「生き方」が「もののあはれ」を教えてくれる。
なあんてね。
鉢植えの木がさようなことを教えますかね。
伸びやかな木は伸びやかな性質の木、萎縮した木は萎縮した性質の木。
これこそが「唯我独尊」=「世に独りしか存在しない、かけがえのない私」でありましょう。
駄句5句と愚歌1首。
冬時雨石化檜に冷やで出す
冬時雨石化檜を洗ひけり
一年の塵を洗ふや冬時雨
冬時雨檜の緑深めけり
冬時雨冷ややかに降りて火の木消す
冬時雨石化檜に氷雨なり傘差しかけて檜労ふ