写真は石菖(せきしょう)。
ショウブ科(サトイモ科とも)の石菖です。
山野で普通に見かける草ですが、昔はショウブの代わりに「菖蒲湯」に使われることもあったらしいですね。
今でも神経痛や痛風の治療に使用されることがあるそうです。
まことに丈夫な草で、我が家にはドクダミ駆逐のために狭い角地に植えたのですが、今や天下を征服した趣。
同じ場所の淑やかな「山紫陽花」までも追いやり、「徐州徐州と石菖は進み」繁殖を続けているのです。
淑やかな山紫陽花嬢たちは押され押されてふくれっ面。
この分では山紫陽花の春の芽出しが影をひそめるのではと、思いやられます。
野放図に植えっぱなしにもできず、時折スコップをむざと押し込み、間伐を試みるのですが、掘り取った後にすかさず別群の石菖が転住。存分に肢体を広げるのです。
椅子取りゲーム、あざなえる人の世の抜け目なさによく似たり。
抜き取った石菖はそのまま捨てるわけにもまいらず、鉢に入れそれぞれ独立。
五寸鉢三寸鉢豆鉢など、その数雲霞の如し。
写真の石菖もそのうちの一つ。
指に足りない一寸帽子(誤植ではありませんぞ。帽子なり)、小さい体に大きな望み。
いつかは自由なる天地移住を夢見てござるのです。
石菖少将の強さは呆れるばかり、この状態で冬を越そうとしておられるのです。
アンタはエライ!
さようさよう、時々我が家を訪れて、盆栽学の蘊蓄を講じて去られる、あの爺様に「松には石菖がよく似合う」とか何とか講釈をぶち返して、五寸鉢三寸鉢は献上いたそう。
「セキショを越すには卯の花ではいけない、セキショだけに石菖をかざしになさい」
などと宇宙語を補足してね。
痛み止めとして湯に浮かべた石菖は、夏の季語だそうですが、豆鉢の石菖が凛として冬日を受ける様はいいものですよ。
拙句5句と腰折れ(腰砕け)1首。
冬日受く豆石菖の凛として
季を違え冬を越すかな石菖蒲(いしあやめ)
石菖を柚子湯の後に痛み止め
霜夜明け豆石菖の葉の強さ
石菖は霙の野にも似合ひけり
石菖は夏の季語なり眉顰む人は人なり冬を越すあり