大腿骨頸部骨折とは?

 おそらく、ネット検索すると、色々な病院やクリニックが骨折の原因、治療法、手術件数など掲載していると思います。クリニックを開院して1カ月が経過しましたが、幸い今の所、当クリニックには1人も大腿骨頸部骨折の患者さんは来院しておりません。でも近い将来必ず来ることになると思います。来院した患者様全員、リハビリやお薬などで、症状を改善させたいと思っておりますが、この骨折に関しては、ほぼ手術が第一選択となるため、手術できる病院を紹介してあげることが私の仕事となります。
 ネットで調べると、頸部内側型、頸部外側型とか、関節包内、外とか、転子部とか転子下とか難しい言葉が出てると思います。詳しく書くと長くなるので止めときますが、要するに骨折の場所や、骨がくっつきそう(骨癒合)くっつく見込みがほぼない(骨癒合しない)のかより、手術方法が異なり、骨癒合しそうなら、金具で固定、骨癒合しない場所は人工骨頭という人工の骨と関節に置き換える手術となります。
 どちらも確立された手術方法です。私も昨年まで数えてないので正確な数字は分かりませんが、多いときは、1日3件位手術していました。普通の人なら、リハビリをしておおよそ1カ月程度で痛みも落ち着き、歩行可能になり、退院、日常生活復帰となります。普通でない人とは、どういう人かというと、精神疾患、認知症があり、医師、看護師、リハビリスタッフの言っていることが理解できない人、骨折する前から既に歩行能力が落ちていて頻繁に転倒する人、糖尿病、心臓病などの持病の状態が元々良くない人、透析してる人などが挙げられます。

 この骨折の予後について

 まず,生命予後から説明します。大腿骨頚部骨折および大腿骨転子部骨折後の死亡率は,欧米では11~35%程度と報告されていますが,日本では10%以下で欧米に比べて良好です。より高齢の人,入院期間の長い人,受傷前の歩行能力が低い人,認知症のある人,男性,心臓疾患のある人などで死亡率が高くなっています。手術中に患者さんが亡くなられる事は極めてまれです。しかし,術後には,精神障害,肺炎,循環器疾患などの合併症はかなり高い頻度で発生します。術後早期(入院中)の死亡例の原因としては肺炎が最も多いといわれています。

 次ぎに機能予後について説明します。
 大腿骨頚部骨折および大腿骨転子部骨折を受傷された患者さんに対しては,早期からの起立・歩行をめざした訓練が必要であり,手術翌日からベッド上での坐位訓練が行われるのが普通です。歩行能力の回復には受傷前の歩行能力と年齢が大きく影響すると信じられています。受傷前によく歩けていた人は,より回復しやすいということです。
 しかしながら,すべての患者さんが元通りの歩行能力を獲得できるかといえば,残念ながら答えは「いいえ」です。大腿骨頚部骨では,受傷前に屋外活動を一人で行うことが可能であった患者さんでも,半年から1年後に元通りに近い歩行能力を獲得できるのは,全体の50%程度にすぎません。本人のリハビリテーションに対する努力と,家族の励ましが重要です。

 大腿骨頚部骨折を受傷された患者さんは,反対側の骨折を生じるリスクが高いことがわかっています。したがって,受傷された患者さんには骨粗鬆症の治療をする方が理論的にはよいはずです。骨粗鬆症の治療法としては骨密度を上げる薬物療法が中心になっています。
 ただし,骨折を起こすリスクは骨密度低下だけでなく,転倒しやすさなど複雑な因子に関連します。したがって,骨粗鬆症に対する薬物療法がどの程度まで反対側の骨折を予防するのに有効かに関してはこれから研究していく必要のある課題です。たかが、足の骨折、死ぬ訳じゃないし、とか、骨粗鬆症って検査で言われたけど、別に体調いいから、大丈夫でしょとか、患者様から言われたことがたまにありましたが、確かに即死することはないのは事実ですが、確実にQOLは低下します。骨折させないようにするには、食事、運動習慣で、骨、筋肉を維持すること、骨密度が低い場合は骨粗鬆症治療することにつきます。
 あとは転倒しない対策として杖、シルバーカーの使用、白内障、緑内障などの視力低下で転びやすい方は、眼科、歩行が小刻みになって転びやすい方はパーキンソン病が疑われるので、神経内科の受診をお勧めします。体力が落ちた、以前より食が細くなり栄養が中々摂れないなどの方は当クリニックにご相談ください。