大学病院や以前の勤務先では、産婦人科で出産されたお子さんが退院する前に、新生児検診を必ず行なっておりました。これは、主に、先天性股関節脱臼(現在は発育性股関節形成不全)筋性斜頸、内反足といった疾患を早めに見つけ早期治療につなげるという目的で行います。筋性斜頸、内反足は比較的、見た目で判断できるのですが、股関節に関しては、新生児は下肢全体が、プニプニしていて、これは見た目だけでは分からず、実際に股関節を動かして、異常な音、感触を触知しないか、足の長さに違いがないか、可動域に左右差がないかなどをチェックします。

 1975年頃までは日本は1.5~3%の頻度でみられる脱臼多発国でしたが、だっこの仕方などの啓蒙活動により現在は0.3%程度まで低下しています。しかし、そのように脱臼の頻度が少なくなった結果、乳児検診等でも見つからないことが増えてしまい、2013年の多施設調査では1歳以上の遅診断例が15%、3歳以上まで診断されなかった例が3%と診断が遅くなった結果がみられました。

 診断が遅くなると手術など、より大きな治療が必要となり、後遺障害も大きく残ってしまいますので、早期診断が重要です。
リスクの高いお子さんの特徴として、
①女児(男児の3.8倍のリスク)、

②家族歴(ご両親やご兄弟が股関節脱臼や変形性関節症などの股関節疾患がある方)、

③骨盤位出生(いわゆる逆子で生まれた方)はリスクが高いです。また、第一子、秋冬生まれ、低体重出生などもリスクとされています。1か月検診、3か月検診で引っかからなかった場合でも、これらに該当するお子様は検診を受けられることをお勧めします。

 以前はX線検査による検査が行われることが多かったですが、新生児~乳児期にはX線に映らない軟骨成分が多いため診断が困難な例があります。また、繰り返し検査を行うことはX線被ばくの問題が危惧されます。

 当院では触診ならびに、超音波検査による股関節検査を行うことが出来ます。X線被ばくの心配がなく繰り返し検査を行っても安全で、また軟骨が多い股関節も超音波ならはっきりと描出することができます。現在、横浜市では小児科の先生方や地域の健診センターで生後4か月健診をおこない、股関節脱臼を検査しております。個人の産婦人科クリニックなどで出産されたお子さんはおそらく、検診していないことが多いと思います。もし心配であれば、いつでもご相談ください。