リボルバー・リリー(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

リボルバー・リリー(ネタバレ)

※今回の記事は、本作が好きな方は確実に不快になると思うので、気をつけて!

※今回の記事は、「GOEMON」のネタバレに触れている&「GOEMON」が好きな方も不快になると思うので、気をつけて!

 

 

 

 

リボルバー・リリー

 

2023/日本 上映時間139分

監督・脚本:行定勲

原作:長浦京

脚本:小林達夫

企画・プロデュース:紀伊宗之

エグゼクティブプロデューサー:和田倉和利

ブロデューサー:高橋大典、石塚紘太、溝畠三穂子

キャスティング:杉野剛

音楽プロデューサー:津島玄一

ラインプロデューサー:竹岡実

撮影:今村圭佑

照明:中村裕樹

録音:伊藤裕規

美術:清水剛

装飾:田口貴久

衣袋デザイン監修:黒澤和子

ヘアメイクデザイン:稲垣亮弐

編集:今井剛

音楽:半野喜弘

シニアVFXスーパーバイザー:尾上克郎

スタントコーディネーター:田渕景也

出演:綾瀬はるか、長谷川博己、羽村仁成、シシド・カフカ、古川琴音、清水尋也、ジェシー、佐藤二朗、吹越満、内田朝陽、板尾創路、橋爪功、石橋蓮司、阿部サダヲ、野村萬斎、豊川悦司、アフロ、鈴木亮平

パンフレット:★★★★☆(1100円/誤植はあるけど、いろいろと情報&企画記事が詰まった良いパンフ

(あらすじ)
大正末期の1924年。関東大震災からの復興で鉄筋コンクリートのモダンな建物が増え、活気にあふれた東京。16歳からスパイ任務に従事し、東アジアを中心に3年間で57人の殺害に関与した経歴を持つ元敏腕スパイ・小曽根百合は、いまは東京の花街の銘酒屋で女将をしていた。しかしある時、消えた陸軍資金の鍵を握る少年・慎太と出会ったことで、百合は慎太とともに陸軍の精鋭部隊から追われる身となる。(以上、映画.comより)


予告編はこんな感じ↓

 

 

 

4点

 

 

宇多丸師匠の実にタメになる時評がアップされているので、ぜひ読んで聴いて!(9/23追記)

 

愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の課題映画になったから観た…というワケではなく(不要な書き出し)。確かTOHO系列あたりで流れてたメイキング映像を見て、「今どきこんなアクション映画を作るってことは、相当な勝算があるんだな ( ̄ー ̄) ニヤッ」と。そもそも綾瀬はるかさんは「ICHI」で“アクションができる人”というイメージがあるし、私的に作品自体は好きじゃないものの「レジェンド&バタフライ」でも頑張ってたし、行定勲監督も人間ドラマを描くことに関しては定評があるから、それなりに楽しみにしてましてね。公開初日の8月11日(金)、ユナイテッド・シネマとしまえんにて、会員サービスデーを利用して鑑賞いたしました。とてもつまらなかったです。

 

 

7番スクリーンにて、ホットコーヒーを飲みながら鑑賞。観客は40人ぐらいだった記憶。

 

 

お話を雑に書くと、大正末期の日本を舞台に、かつてスパイ組織「幣原機関」で”リボルバー・リリーとの異名を持つ敏腕諜報員だった小曾根百合が、陸軍資金の謎を握る少年を守って、陸軍や幣原機関の諜報員を相手に死闘を繰り広げる…ってな調子。正直、それなりな感じでは見られるので、不満を感じない人もいるかと思います。ただ、私は鑑賞中、かなり退屈だった…というよりは、あまりにつまらなすぎて、舌打ちが出そうなくらいにイライラしました。その理由はいくつかあるんですが、最大の理由はアクションがクソだったこと。「リボルバー・リリー」というタイトルで、陸軍を相手にするとなれば、どんなリボルバー使いをするか、期待するのが人情じゃないですか。特に中盤、店が陸軍に囲まれて籠城戦が始まった時は、こんな絶望的な状況をどうやって覆すのかとドキドキしてたら、元馬賊の女と適当に撃ち返すだけで勝っちゃうから、「マジかよ… (`Δ´;) ヌゥ」と。

 

いや、確かにガンアクション映画なんて主人公側に弾はあまり当たらず、敵がバタバタ死んでくのが基本ですけど、とはいえ、三八式歩兵銃を持った兵隊30~40人ぐらいに囲まれてるのよ? せめて爆薬を使うとか、途中で脱出するとか、何らかの策があるのかと思いきや、何もなく。だからといって、百合が超絶な動きを見せるワケでもなく。一応、元馬賊の女の手助けはあるにせよ、「スタイリッシュっぽく撃ち返したら、こっちの弾は当たったわ♪川o^-')b ヤッタネ」を繰り返すだけで(※決してスタイリッシュではなく「それっぽい」だけ)、そのまま陸軍の部隊をほぼ全滅させちゃう…って、さすがにバカバカしくないですかね(しかも主人公は不殺主義→すべて急所を外して撃ってるんだって)。あと、戦闘中に泣いた幼児が取って付けたようにしゃしゃり出てきて、それをかばった百合が撃たれる展開とか、目を疑いましたよ。いいですかみなさん、今どき、銃撃戦中に、しゃしゃり出てくるんですよ、泣いた幼児が! 信じられます、この陳腐な展開。いつの時代のストーリーテリングだよ。もうね、笑わせようとしてるのかと(実際、ちょっと笑っちゃった)

 

アクションを担当した方々がパンフレットで「今までにない斬新な画になりました」とか語ってる「霧の中のアクション」とやらもそんなにパッとしなかったしさぁ…。でも、一番酷かったのはクライマックス。海軍省の前に陸軍の部隊(100人くらい?)が陣取っている中を突破しなくちゃいけない…って、この場面設定自体がどうかと思うんですが、それはそれとして。一体どうするのかと思ったら、何の策もなく正面突破だから、「正気?Σ(゚д゚;)」って。一応、後から味方もくるけどさぁ。いや、この「正気?」は主人公の行動が無謀というだけでなく、この映画の制作者たち、よくこんな展開にGOサイン出したなぁと。この主人公、諜報機関にいたんですよね? なんか裏をかくとか作戦とかないのかよ。

 

とはいえ、これはアクション映画じゃ(老人のような語り口で)。まぁ、100歩譲って、そこで主人公が超絶なアクションを披露してくれるならノー問題じゃないですか。「ダークタワー」のイドリス・エルバみたいに、超スピードでリロードするのを見せたりしてくれるのかな…と思いきや、この映画の主人公は普通にモタモタ装填するだけだから、なんで陸軍に勝てるのかサッパリなんですよね。主人公がわざわざリボルバーを使っているんだから、「敵にも弾数がわかる→でも主人公はその裏をかいて勝つ」的な展開があるのかと思えば、特にそんなこともないし。もうね、「ほら、アイツまだ話しながらモタついて弾込めてるから、さっさと突撃して銃床でぶちのめせよ、杉元!( ゚д゚) ヤッチマエ!」と、すっかり陸軍サイドに感情移入して観ていたアタシ(突然、「ゴールデンカムイ」が混ざった文章)

 

 

最低限、このぐらいのリロード描写はほしかったです「ダークタワー」より)。

 

 

なんとなく「ダークタワー」の予告編も貼っておきますね↓

 

 

 

とはいえ、これはアクション映画じゃ(2回目)。じゃあ、1000歩譲って、幣原機関ではさまざまな銃撃戦を分析することにより、無敵の戦闘術「銃型(じゅうかた)」を開発。その「銃型」を取得した者は攻撃能力が120%向上して敵の弾は当たらなくなり…といった「リベリオン」ガン=カタ的な設定&ケレン味のあるアクション演出があるなら全然良いですよ。でも、本作の主人公は、適当に回りました程度の動きしかしないし、たまに棒立ちで撃ってたりもするし、なんで敵の弾が当たらないのかサッパリなんですよね…(さすがに終盤は何発か被弾しますが)

 

大体、スパイモノなら着飾った姿で戦うシーンもスムースに納得できるものですが(スパイとして潜入した先で戦闘が発生したりする感じで)、本作の主人公の場合、戦闘に挑む時にわざわざ防御力の低いドレスに着替えるんですよ。劇中では「美学」みたいな寝惚けた理屈を話してましたけど、ごめんなさい、私的には「このキャラクターはバカなんだな」としか思えなかったです「ジョン・ウィック」だっていちいちスーツを着て戦うけど、あれは防弾仕様だったりとか、世界観に合った最低限の理由付けがある)。結局、アクションに新鮮味がない上に、敵に勝つためのロジックもなく、力押しで上手く行くだけだから、百合が強く見えるのではなく、陸軍が弱く見えちゃうというか。この映画、「私、主人公だから勝ちましたわ♪川o^-')b ヤッタネ」でしかないんですよね。

 


私はこんな風に幣原期間のスパイたちが訓練するシーンが観たかったです(「リベリオン」より)。

 

 

いや、ひと昔前だったら、このぐらいのアクションでも満足できたかもしれません。でも、今の世の中、いろいろなアクション映画があり、さまざまな工夫を凝らしたアクションシーンが次々と生み出されているってのに、ちょっとした邦画の大作ヅラしてるくせにこのレベルのアクションって、観客を舐めてるとしか言いようがない。「豪華キャスト」にカネを使うくらいなら、アクションに回してよ、アクションに。私、本作を観て非常に連想したのが、昨年ぶっちぎりでワーストだった「バイオレンスアクション」でしてね。設定や作風は違うものの、「銃を撃ちまくるくせに“殺さない”設定」とか「それっぽいシーンをつないでるだけの凡庸なアクション」といった要素が似てるなぁと(どちらにも田渕景也さんが関わっているのも気になるところ)。そりゃあ「邦画の大作」といえど10億円程度の予算だし、ハリウッド作品なんかと比較したら役者さんたちがしっかり訓練できる時間は全然ないだろうし、出演者&スタッフは本作だけに長期間集中して携わってるワケでもないんだろうし。結果、この程度の映画になっちゃうのは仕方ない面もあるんでしょうけど…。

 

とはいえ、谷垣健治監督とか、下村勇二監督とか、坂本浩一監督とか、園村健介監督とか、”ちゃんとした人”がアクションを担当したら違ったんじゃないかなって。ドラマ部分は重くてつまらないとしても、どこかにハッとするアクションシーンを作ってくれたんじゃないかなって。もちろん私なんて所詮は単なる客だから、制作者たちの苦労なんてわからないし、このブログで垂れ流している不満は的外れなのかもしれません。でも、例えば超低予算だった「ベイビーわるきゅーれ」のアクションと比較して、恥ずかしくならないのかなって思う。ごめんなさい、私的にはかなり昔観た低予算アクション映画の「ハード・リベンジ、ミリー」の方が100倍面白かったです。

 

 

「ハード・リベンジ、ミリー」の予告編を貼っておきますね↓ 100倍は言い過ぎたかな… (´∀`;) エヘヘ

 

 

 

つーか、一応書いておくと、ドラマ部分もキツかった。変に重くて、説教臭くて、「私の嫌いなタイプの邦画」って感じ。例えば、お前は撃てないだなんだと陸軍将校が少年にダラダラダラダラ話す展開とか、百合が代わりに撃ち殺す流れがミエミエな割に長いから、「さっさと撃ってくれないかな… (´Д`;)」と思うところしきりでしたよ。死神っぽい後輩諜報員もなんだか観念的なことを言いだしてウザかったし…。そんな中、最もシラケたのがラスト。百合はそれなりに被弾しつつも、仲間の助けもあって少年を守りながら陸軍を蹴散らすと、海軍省の前で山本五十六に銃を突きつけるんですね。で、日本の未来がどーたら的なクソつまらない問答をダラダラダラダラ…。ハッキリ言って、ご都合的に勝っただけの主人公が偉そうにしてる感があって、全然乗れないというか。かつて「GOEMON」のラストで、バカみたいな突破力を発揮して徳川家康の前までたどり着いた石川五右衛門が「誓えー!」とか面倒くさいことを言いだした展開を思い出したりもして、なかなか不快になった次第。

 

エンドクレジット直前、殺し屋っぽい鈴木亮平さんをちょっとだけ出して、続編への色気を漂わせて終わるのもイラッとしましたね。そんなキャスティングに予算を使うなら、この1本をちゃんと作ってよ。その他、思うところを書くと、「合気道を取り入れたという徒手格闘描写、パッとしなかったな…(構えは良かった)」とか「狙われてるんだからガキを自由に外出させるなよ(案の定、さらわれる)」とか「位置関係の見せ方が下手」とか「あのドレス設定が逆にアクションの幅を狭めたのでは…(膝パッドとか付けられないわけだし)」とか「少年を殺したら元も子もないのに、陸軍は全体的にあまり気にせず銃撃戦してなかった?」とか「陸軍の兵士、撃たれても急所は外してくれてるんだから、すぐ反撃すべきというか、さっさと突撃して銃床でぶちのめせよ、杉元!( ゚д゚) ヤッチマエ!」とかとかとか。

 

行定勲監督、近作では「窮鼠はチーズの夢を見る」が私的には大好きな映画でしたけど、アクションは向いてないと思います。そんなワケで、綾瀬はるかさん自体は好きだから+1点、大正時代の美術は素敵だったから+1点、長谷川博己さんが見張りの頭をビンで殴って昏倒させるシーンはカッコ良かったから+1点、パンフレットは映画より面白かったので+1点の合計4点という評価。時間を無駄にしました。今、他に面白い作品がたくさん上映されているので、出演者や関係者に思い入れがある人じゃない限りは、違う映画をオススメします。おしまい。

 

 

 

 

長浦京先生による原作小説。面白いんでしょうけど、まったく読む気になれないです。

 

 

サントラがありました。ビジュアルは好きです。

 

 

読む気ゼロでしたが、宇多丸師匠の時評を読んで、ちょっとチェックしたくなりました。

 

 

3年前に観た行定勲監督作。これはとても良い映画でしたよ。

 

 

ちょっと思いだしたリボルバーアクション映画。私の感想はこんな感じ。

 

 

ちょっと思いだしたクリスチャン・ベール主演のSFアクション映画。愛してる。

 

 

時期は昭和になりますが、連想した黒沢清監督によるスパイ映画。私はこっちの方がはるかに好きです。
時期は昭和になりますが、連想した入江悠監督によるスパイ映画。賛否はありますが、私はこっちの方が好きです。