ルース・エドガー(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

ルース・エドガー(ネタバレ)

ルース・エドガー

 


原題:Luce
2019/アメリカ 上映時間110分

監督:ジュリアス・オナー
製作:ジョン・ベイカー、ジュリアス・オナー、アンドリュー・ヤン
製作総指揮:ロブ・フェン、アンバー・ウォン J・C・リー
原作・脚本:J・C・リー
脚本:ジュリアス・オナー
撮影:ラーキン・サイプル
美術:リサ・マイヤーズ
衣装:ケリ・ランガーマン
編集:マドレーヌ・ギャビン
音楽:ベン・サリスベリー、ジェフ・バロウ

出演:ナオミ・ワッツ、オクタビア・スペンサー、ケルビン・ハリソン・Jr.、ティム・ロス、ノーバート・レオ・バッツ、アンドレア・バング、マーシャ・ステファニー・ブレイク、ブライアン・ブラッドリー

パンフレット:★★★(700円/監督インタビューと宇野維正さん&山縣みどりさんのコラムが分かりやすくて、補完にピッタリ!)

(あらすじ)
バージニア州アーリントンで白人の養父母と暮らす黒人の少年ルース。アフリカの戦火の国で生まれた過酷なハンデを克服した彼は、文武両道に秀で、様々なルーツを持つ生徒たちの誰からも慕われている。模範的な若者として称賛されるルースだったが、ある課題のレポートをきっかけに、同じアフリカ系の女性教師ウィルソンと対立するように。ルースが危険な思想に染まっているのではというウィルソンの疑惑は、ルースの養父母にも疑念を生じさせていく。(以上、映画.comより)


予告編はこんな感じ↓

 

 


80点

 

 

何かの時のポスターかチラシを目撃して、「魔少年モノなのかな?(・ε・)」ぐらいには気になってたんですよ。ただ、他に観たい作品も多いし、やっぱりスルーしよう…と思いきや。練馬の「か和もっち」で会った映画仲間のえすたかさんが本作をオススメしていて、ああん、スゲー気になっちゃったので、結局、観ることに決定。6月29日(月)、大事な打ち合わせ&仕事の帰り道、ユナイテッド・シネマ豊洲にて、会員サービスデー割引を利用して(※6月は中旬から月末まで適用されてた)、鑑賞いたしました(その後、「エジソンズ・ゲーム」をハシゴ)。「性根がなっちゃいねェ (゚⊿゚)」と思ったり。

 
 

当日のgif。11番スクリーン、6人でしたよ。

 

鑑賞後の僕の気持ちを代弁する柴千春を貼っておきますね(「バキ」より)。

 
 
「そんな話だったっけ?(°д°;)」と観た人が驚くレベルであらすじを雑に省略しつつ書いておきますと。高校生の黒人男子ルース(ケルビン・ハリソン・Jr.)は、エリトリアという国で少年兵だった過去を持つものの、7歳の頃に裕福なリベラル白人夫婦の養子になって、現在は「文武両道のスーパー優等生」として青春をエンジョイするエブリデイだったんですけれども。植民地支配を打倒するためには暴力革命も辞さないと主張する「フランツ・ファノン」のレポートを書いたがために、歴史教師の黒人女性ハリエット(オクタビア・スペンサー)の注意を惹きまして。彼女がルースのロッカーを調べてみれば「違法な花火」が見つかったので、養母エイミー(ナオミ・ワッツ)を呼び出して報告すると、エイミーは「プライバシーの侵害YO!川`Д´)ノキィィィッ」と怒りながらも、その心には「ルースったら大丈夫かしら… 川´・ω・`) シンパイ」と疑念の種が植え付けられてしまうのです。
 
そして、ルース的には、同じ部活だったものの大麻吸引が発覚して退部になった黒人男子デショーン(ブライアン・ブラッドリー)への塩対応が気に食わないのもあって、教師ハリエットと対立。あーだこーだあって、心を病んだ妹ローズマリー(マーシャ・ステファニー・ブレイク)が学校に来て全裸で大暴れしたり、自宅の壁に差別的な落書きをされたりしたのを「ルースの仕業では!? Σ(°д°し クワッ!」と考えたハリエットは、校長同席の元でエドガー一家と面談の場を設けるんですが、しかし。「ルースに性的暴行を受けた」と証言するハズのステファニー(アンドレア・バング)が姿を消してしまって校長からの信用が急降下した上に、なぜかルースが持っていた「違法な花火」が自分の机で爆発してしまって、学校を解雇されるというね… ('A`し イヤーン で、結局、すべてルースの仕業っぽいと知ったエイミーは愕然とするものの、仕方なく「なかったこと」にすることに決定。その後、ルースは学校で両親を讃えるスピーチをして、みんなが笑ってる&お日様も笑ってるんですけれども。とはいえ、フードを被ってランニングするルースは“負い目全開顔”なのでしたーー。
 
 
監督はルースの役作りとして、ケルビン・ハリソン・Jr.にウィル・スミスとバラク・オバマを手本にするよう伝えたそうな。
 
 
いや〜、非常に考えさせられました… (`Δ´;) ヌゥ 優等生(美形だったりもする)の周囲で「コイツが裏で糸を引いているのでは?」と思わせる不穏な事件が起きて、保護者的立場の人間が「良い子なの?悪い子なの?普通の子なの?(´Д`;) アァン」「欽ドン!」ライクに悩む…。そんな「魔少年モノ」(or「魔少女モノ」)はこれまで数多く作られているワケですが、本作はそこに「立場による権力と特権(白人の養父母のおかげでハリエットと対等に戦えるルース、ルースと違って守られないデショーン)」とか「黒人同士の世代間の対立(ハリエットvsルース)」とか「リベラルの建て前と本音(理想論を語りつつもルースを信用しきれないエドガー夫婦)」とか「ロールモデルの呪い(優等生でなければ生きられないルース、子どもを産めないことを暗に責められるエイミー)」とかとか、様々な問題を特盛りにしてきた印象。
 
中でも興味深かったのが「黒人同士の世代間の対立」で、パンフを読んで知ったんですが、「リスペクタビリティ・ポリティクス(差別されないように模範的な行動を取ること)」という概念があるそうで。今まで「善良で正義側の黒人キャラ」を演じてきた印象のオクタビア・スペンサーの役が「歴史教師」で「ハリエット」という名前ながら、ルースに断罪されてしまうというのは、非常にビックリいたしました。しかも映画終盤、ルースがハリエットに語る「模範的な行動を取らないと黒人が差別されてしまうなら、それは平等な社会とは言えない」みたいな主張(うろ覚え)は「そりゃそうだ!Σ(゚д゚;)」と、目からウロコだったというか。なんかね、それって非常に当たり前のことなんですけど(汗)、今まで気付いていなかった自分の差別意識を指摘されたようで、ちょっと恥ずかしくなりましたよ…(とはいえ、ハリエット側からすると「そうしないと生きていけなかった」ワケですがー)。
 
 
ここまでコテンパンにされて救いのないオクタヴィア・スペンサーは初めて観たかもしれません。
 
 
あと、グッときたのがラストのスピーチ。学校の講堂でルースが「両親が自分の名前を発音できないので代わりに『LUCE(光)』という名前を付けてくれました」という内容を感動的なムードで語るんですが…。それって「アメリカに連れて来られて名前を奪われた」ということでもあって。もしルースの人生が「優等生として生きること」しか許されないのなら、それはリベラル白人夫婦による「自己満足のための奴隷制と言えるのではないか…ってのは、ちょっと短絡的かつ極端な解釈ですかね (´Д`;) スミマセン まぁ、「子どもは親の願望を満たすツールじゃない」というのは、ルースみたいなケースだけでなくすべての親子関係で言えることなのでね、あらためて気をつけようと思った次第。
 
 
ルースの養父母を演じたナオミ・ワッツとティム・ロス、安定の演技力でしたな〜。
 
 
まぁ、一応、不満点を挙げておくと、ルースの仕掛ける罠が雑かつチート感があったこと(特に「ステファニーの性的暴行」については他の教師も事情聴取する可能性があるのでは?)と、「邦題の『エドガー』は余計では?」と思ったこと、そして何よりも意外とエドガー夫妻が頼りなかったこと。いや、劇中では何度も「やっとここまで信頼関係を築けたのにぃ (´Д`;し アァン」みたいなことを言って、ルースに「なぜロッカーに花火があったのか?」をなかなか聞けないんですが…。ハッキリ言って、「少年兵だったルースを引き取ってここまで育てたこと」自体が相当スゴいだけに、そんなことが出来た夫婦がその程度のことも聞けないのは不自然に感じましたよ。まぁ、僕の娘はまだ9歳なだけに、思春期を迎えた17歳の相手はまた違うんでしょうけど(汗)、正直、僕的には「性根がなっちゃいねェ (゚⊿゚)」と。「負い目のなさが勝ち目を呼ぶ」という柴千春の有名な言葉がありますが、逆に「負い目があると勝ち目を遠ざける」ワケで。やはり親が子どもに隠れて何かをすることで「負い目」を持ってしまうと、最終的には子どもに対しても良くない結果をもたらす気がするのでね、負い目、なるべく持たないようにしたいものです…って、なにこの文章。
 
 
ということで、僕の気持ちを代弁する柴千春を貼っておきますね(「バキ」より)。
 
 

その他、思ったことを書いておくと、「本作の元になった戯曲を観てみたい」とか「オクタビア・スペンサーの目力が半端なかった」とか「ティム・ロスは“弁が立つ役立たず”役がよく似合う」とか「ちょうど盛り上がっているブラック・ライヴズ・マターと重なる部分もあって考えさせられた…」とか「監督がパンフでウィル・スミスを高評価していて非常に納得した」とかとかとか。何はともあれ、普通に面白かったし、「リスペクタビリティ・ポリティクス」という概念を知ることが出来て良かったです (°∀°)b ヨカッタ! まだ公開している劇場もあるみたいなのでね、興味のある方はぜひ観てみてくださいな。

 

 

 

 

 

本作のサントラでございます。

 

 
ジュリアス・オナー監督による「クローバーフィールド」シリーズ第3弾。観なくちゃ…。

 

 

ちょっと思いだした魔少年モノ。僕の感想はここの5本目。

 

 

ちょっと思いだした魔少女モノ。僕の感想はこんな感じ。

 

 

魔少女モノで一番好きなホラームービー。超オススメ!(o^-')b オススメ!