音楽(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

音楽(ネタバレ)

※今回の記事は、本作のプロデューサーである松江哲明監督による「性行為強要事件」についての文章が多く書かれていて、ダラダラと無駄に長いので、そういうのが苦手な方は読まない方が良いです。
※追記しました(1/21)
※追記しました(1/22)








音楽



2019/日本 上映時間71分
監督・脚本・絵コンテ・キャラクターデザイン・作画監督・美術監督・編集:岩井澤健治
原作:大橋裕之
プロデューサー:松江哲明
アソシエイトプロデューサー:迫田明宏
協カプロデューサー:九龍ジョー
プロジェクトマネージャー:中島弘道
撮影・編集:名嘉真法久
音響監督:山本タカアキ
音楽:伴瀬朝彦、GRANDFUNK、澤部渡
ロトスコープミュージシャン:Gellers、ホライズン山下宅配便、澤部渡、安藤暁彦
劇中曲:GALAXIEDEAD、井手健介、野田薫、オシリペンペンズ
主題歌:ドレスコーズ
声の出演:坂本慎太郎、前野朋哉、芹澤興人、駒井蓮、平岩紙、山本圭祐、大山法哲、鈴木将一朗、林諒、早川景太、柳沢茂樹、浅井浩介、用松亮、澤田裕太郎、後藤ユウミ、小笠原結、松竹史桜、れっぴーず、姫乃たま、松尾ゆき、天久聖一、岡村靖幸、竹中直人
パンフレット:★★★★★(1000円/インタビューや対談が超充実しているし、大橋裕之先生の描き下ろし漫画も入ってて、本作が好きな人はマストの一冊)
(あらすじ)
楽器を触ったこともなかった不良学生の研二(声:坂本慎太郎)、太田(声:前野朋哉)、朝倉(声:芹澤興人)の3人は、思いつきで『古武術』というバンドを結成。そんな彼らに『古美術』のメンバー、森田(声:平岩紙)は坂本町ロックフェスティバルへの出演を薦め……。(以上、Movie Walkerより)

予告編はこんな感じ↓




90点


頭に来ました。


僕の気持ちを代弁する椎名一重を貼っておきますね(「餓狼伝」より)。



ううむ、当ブログは「映画批評ブログ」ではなく「映画“体験”の備忘録」なのでね、これから非常に面倒くさい長文を垂れ流しますよ。まぁ、2年前に「映画 山田孝之 3D」の感想の中で書いたことと被るんですけど(汗)、僕的には大事なことなので、まず、本作のプロデューサーの松江哲明監督について思うところを書きますね。松江監督については、僕が好きなアクション映画とは関係のないジャンルの人だから、2009年までは興味がなかったんですが、なんとなく「ライブテープ」を観てみたら、スゲー感動しましてね。それ以降の作品である「トーキョードリフター」「フラッシュバックメモリーズ 3D」は劇場に足を運んだし、著作も読んでスゲー感心したし、Twitterもフォローして「いいこと言うなぁ (´∀`)」と思ってましたよ。

で、松江監督のことを検索する過程で「出演者の加賀賢三さんが2007年に書いたブログ」を読んだら、そこには「童貞をプロデュース。」という映画で「性行為を強要されたこと」や「意に反して劇場公開されたこと」が書かれていて。これって男女を逆にすれば即大問題になっていた所業だし(という僕自身の文章が「男性が性被害を訴えることの難しさ」を表していたりもする)、僕もマチズモ全開だった職場で似たようなことがあったから同情はしたけれども。とはいえ、その後、定期的に上映されているっぽかったから、当事者間の問題は解決したんだろうなと。むしろ「いつか『童貞をプロデュース。』を観てみたいものだなぁ」ぐらいの気持ちだったから、2017年8月25日、10周年イベントの舞台挨拶で加賀賢三さんが牙を剥いた時「えっ、解決してなかったの!? Σ(゚д゚;)」と素直に驚きました。事件の詳細については「映画は人助けをしない」さんの「松江哲明『童貞。をプロデュース』舞台挨拶事件の背景にある2つの事件と関連性について」を読んでいただくとわかりやすいと思います。


2017年8月25日の舞台挨拶の動画を貼っておきますね↓




まぁ、いきなりガチを仕掛けられて対応できないのは仕方ないとしても、8月31日に松江監督&配給会社側が出した「8.25(金)「童貞。をプロデュース」 10周年記念上映中止の経緯・ご報告につきまして」という文章が驚くほど不誠実だからゲッソリしましてね…(しみじみ)。でも、僕はこの時点では「松江監督にも言い分がある」とは思っていたから、謝罪するにせよ、反発するにせよ、何らかの対応はするんだろうなと、2パターンの期待をしてた。ファン的な目線では、松江監督は普段から「ドキュメンタリーや映画制作についての意識が高い文章」をスゲー書いてたからさ、町山智浩さんが提案したように、今回の事件全体を総括するような作品を撮ってアンサーするんじゃないかと思っていたら、そんなことはなく。じゃあ、「音楽」という映画をプロデュースしている→公開時に「性行為強要事件」について騒がれることは目に見えているんだから、「本人的に加賀さんに謝りたくないとしても、作品(及び携わっている人たち)のために“大人として”何らかの対処はするんだろうな」と思ってみても、そんなことはなく。

結局、何にも起きずに2年経過。2019年12月5日、映画ライターの藤本洋輔さんによる「『童貞。をプロデュース』強要問題の“黙殺された12年”を振り返る 加賀賢三氏インタビュー」が公開されると、SNSでは2年前以上の話題となって。マズイと思ったのか、13日に松江監督&配給会社側が謝罪文をアップするも、それがまた「とりあえず謝ってみたよ」感が全開だったため、本当に幻滅したというね…。2年前、「加賀氏の一方的な主張を受けて一部で喧伝されているような、本作が暴力で作られた映画であるという風評は、すべて事実無根であり、明確に否定します」なんて書きながら、加賀さんのインタビューを読んでマジで反省したなら、それはそれで良いけどさ、ネットに文章をアップするだけで本人には直接謝らないって、「それで謝罪したことになるの?(°д°;)」というか(そんな対応で許される職場で働いてみたいわ)。結局、「自然消滅を待っていたら、また騒がれちゃったから、とりあえず謝罪文をアップしてみた」程度にしか見えないじゃないですか…。


ちなみにドキュメンタリー雑誌「f/22 第2号」にも加賀賢三さんのインタビューが載っております。



で、やっと本作の話。面白い音楽映画を撮ってきた松江監督ならプロデューサーという立場ながらも良い仕事をするだろうし、原作漫画は未読ながらも大橋裕之先生の絵は好きだし、岩井澤健治監督がスゲー地道に作っていた話を何かで読んで興味が湧いたから、つい生ラフ原画付きの前売り券を購入しまして。ただ、松江監督が携わったドラマ「このマンガがすごい!」については、松江監督への不快感でイライラして観られなかったから、できれば公開前には加賀さんに謝ってほしい…と思っていたけど、そんなことはなく。観るのは迷ったものの、作品としての評判は良いし、前売り券もあるし、たまたまタイミングも合ったから、1月17日(金)、新宿武蔵野館で鑑賞してみれば、これがまた超素晴らしい青春音楽映画だったというね… (`Δ´;) ヌゥ


諸々のgif。劇場は9割ぐらい埋まってましたよ。


僕の気持ちを代弁する寂海王を貼っておきますね(「バキ」より)。



控えめに言っても、ちくしょう、スゲー面白かったです。ストーリーは「ボンヤリした日常を送っていて、楽器を弾いたこともない不良たちがなんとなくバンドを結成して、地元の小規模なフェスに出演する」って感じでしてね。ロトスコープの手法で描かれた“素朴なテイストのキャラクターたち”が織りなすオフビートかつ独特なやり取りにかなり笑わされるだけでなく(僕的には敵対する不良・大場の子分が何度も拳を振り上げるくだりが好き)、主人公たちが繰り広げる「音楽」は初期衝動に溢れていて、「スバラシイッッ!ヽ(`Д´)ノ」としか言いようがなくて。さらに、劇中で使われる楽曲のクオリティも高くて(仲良くなるバンド「古美術」のボーカルが歌い始めると声が全然違うのが好き)、特にクライマックス、バンド「古武術」が繰り広げるパフォーマンスのスゴさと言ったら! ラスト、舞台上で笛を捨てた研二がソウルフルに歌い出した時の衝撃は凄まじいものがあって、エンドクレジットでその部分を岡村靖幸さんが担当していたことを知った時は爆笑しましたよ。


僕の気持ちを代弁する寂海王を貼っておきますね(「バキ」より)。



なんとなく岡村靖幸さらにライムスター「マクガフィン」を貼っておきますね↓




鑑賞後、未読だった原作漫画を買ってみたら、これもこれで素晴らしい作品だったし(思わず大橋裕之先生の他の漫画も買っちゃった♪)、その上で映画版が漫画の魅力を損なっていないどころか、「コマとコマの間」までも見事に映像化していることがよ〜くわかったというか。「この部分をこう映像化したのか!Σ(゚д゚;)」とか「あの部分はオリジナルなのか… (`Δ´;)」と、あらためて映画版に感心することも増えた…ってな調子。正直、また観に行きたいし、サントラが出るならほしいし、ソフトだってほしいし、間違いなく今年のベストの1本だと思ってるし、もう1度書きますけど、スゲー面白かったんですが、しかし。うーん、やっぱりダメだと思うんですよね…。


なんとなく徳川光成の画像を貼っておきますね(「バキ」より)。



公開されたばかりの作品に対してこういう文章を書くのは気が引けるんですが、残念ながら「性行為強要事件」をやった男が関わっている映画ってのは、相当気まずいですよ。いや、僕だって、仕事上のことで意図せずにパワハラをしていて、元部下とかに恨まれていることがないとは言い切れないし、叩けばホコリが出まくると思いますよ。そもそもモノ作り業界はやりがい搾取やパワハラと紙一重な部分があるんだろうし。でも、加賀さんが遭った被害は次元が別というか(インタビューによると作品を乗っ取られた被害もあるワケだし)。例えば、コカインで捕まったピエール瀧さんの映画は普通に上映すれば良いと思うし、大麻で捕まった高野政所さんの音源は普通に復活&流通させてほしいと思うけど、性暴力事件を起こした新井浩文さんはアウトじゃないですか。「台風家族」自体は面白い映画だったけど、やっぱり新井浩文さんの姿を観るとスゲー気まずいし、被害者は納得できないよなと。これって、加賀さんのケースだって同じことだと思うのです。

つーか、松江監督は映画なんて愛してないんじゃないですかね。映画を観客に届けるために日々働いている人たち(制作スタッフとか配給会社とか評論家とか)と比べたら、僕なんてゴミみたいな存在だし、その人たちの「映画愛」にはかなわないと思ってるけど(所詮、消費するだけなんだから)、とはいえ、本当に映画を愛してるなら、その作品を気まずい状態のまま公開すんなよって思う。鑑賞後、こんなツイートこんなツイートをしてみれば、そりゃあ「観ません」なんてリプをくれる人もいて、その気持ちは痛いほどわかる。内容も制作過程も初期衝動に溢れていて素晴らしい作品なのに、テメェ、なにやってくれてんだよという強い気持ち、強い愛。

もうさ、本作の協カプロデューサーの九龍ジョーさんの「松江哲明氏は加賀賢三氏に誠意ある謝罪をしてほしい」なんてツイートを読むとマジで可哀相すぎて泣けてくるし、本当にこの「音楽」という映画を愛しているなら、さっさと加賀さんが納得する対応をしてほしい。松江監督はこの映画にさまざまな貢献をしたんだと思ってるし、彼の書く映画評は好きだったし、(僕が観た範囲では)彼が撮った作品も楽しんで観たし、彼がプロデューサーとして携わった映画「音楽」は本当に素晴らしいと思っているから、観客を微妙な気持ちにさせないでほしい…って、伝わりますかね。


ここまで読んだ人の気持ちを代弁する宮本武蔵を貼っておきますね(「刃牙道」より)。



いや〜、よくわからない文章をダラダラ書いちゃいましたな…。何はともあれ、本作が超素晴らしい青春音楽映画なのは間違いないと思うんですけど、とはいえ、「性行為強要事件」の被害者に誠実な対応をしていない加害者がプロデューサーとして関わっている作品なので、不快感が先立つ人は観なくて良いと思うよ。おしまい。




大橋裕之先生による原作漫画。スゲー面白かった!



ワンカットで撮られた松江哲明監督作。スゲー良い音楽映画だと思います。









<追記(1/21)>
いつもお世話になっている「シネマトゥデイ」のニュースによると「配給会社の方が加賀さんと直接会って謝罪した」そうです。加賀さん側の声明次第ではありますが、やっと良い展開になってきたような気がします。


<追記(1/22)>
昨日、配給会社側の直井卓俊さんが出した謝罪文に関しては、社会人目線として、そりゃあベストではないけど、ベターではあると思っていて(加賀さんが納得するかどうかは別として)。松江監督も加賀さんに実際に会って謝罪して、このぐらいの謝罪文を出したなら、丸く収まらなかったとしても(ここのハードルは相当高いと思うので)、「関わっている映画を観るのも不快」的な状況からは抜け出せるんじゃないか。そんなふうに考えていた時期が僕にもありました。昨日、松江監督もnoteを発表していたんですね…。

『童貞。をプロデュース』監督・松江哲明より

まぁ、残念でした。「書かれていることの事実関係」については「法廷で白黒つけてほしい」という着地なので、「加賀さんの言い分」と対等に受け取るべきなんだろうし、加賀さんと松江監督の面会に同席した映画ライターの藤本洋輔さん「f/22」の川上拓也さんのツイートなどをチェックすると「実際はどうだったのか」はわかりませんが、そりゃあ加賀さんとの話し合いの場が「総括」みたいな状況だったのならその部分は同情するし、もし加賀さんが「松江哲明の映画業界引退」を要求してきたのなら、そこはさすがに反発して良いと思いますよ。

ただ、率直に書くと、哀れみを感じるレベルで失望しました。根本的な問題として、こんな文章をアップしたら火に油なのを理解していないことがショックというか。非常に“汚れきった大人目線”の文章を書くと、本当は謝罪したくないとしてもさ、「もう少し取り繕えよ」と。味方が5人ぐらいは増えたかもしれないけど、一気に5千人の敵が増えそうな文章じゃないですか…。まぁ、こういった問題の加害者になると、客観的な視点を持つのは難しいのかもしれませんが、正気とは思えないよなぁと。まさかここまでの悪手を打つとは思わなかった。今まで培ったレトリック全開で書いたつもりなんだろうけど、例えば「私はまるで『いじめている自覚のないいじめっ子』だったのか、と気づかされました」とか、「まるで」がいらないんだよって。アンタ、「いじめている自覚のないいじめっ子」だったんだよ、全然気づいてねーじゃんよ、のんきかよ、のんきくんかよ。謝罪自体はやたらと差し込まれているものの、ところどころ隙が多いんですよね…。

オチが「司法に委ねます」だから仕方ないんだろうけど、「当時の自分の視点及び誤解」と「加賀さんへの謝罪」に絞るべきだったと思います。正直、論点をずらそうとしているように見える部分が少なくないのが不快で、例えば、被害者という立場での加賀さんからの「電話での上映中止」を「あいちトリエンナーレ」で起きたような問題と一緒にするのは卑怯としか言いようがないでしょ。「映画を観ること自体が犯罪(同罪呼ばわり)に該当することは決してありません」といった部分も「そこ、論点じゃないだろ」感全開で気持ち悪いしさぁ…。最悪なのがラストで、こんな「自分の人生を左右するような大事な文章」の最後の最後に「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」から引用した一文を書くなんて、テメエに酔ってるとしか思えないじゃないですか…。この人、43歳の社会人なんだよね?

結局、真剣に考えていないんだろうね、加賀さんのことも、そして自分が携わった「音楽」のことも。反論するにしても、書き方、やり方ってあると思うよ? 今、あなたがプロデュースした映画が上映中なのに、なにガソリン撒いてるのよ、バカなの? バカなのかな? 昨日の僕は仕事帰りに練馬の「か和もっち」で飲みながら、たまたま店に来ていた映画仲間のナカさん(2019年のベストは「EXIT イグジット」)やひだっちょさん(2019年のベストは「イップ・マン外伝 マスターZ」)と「今年の1月映画の充実度」について話しながら、まだ観ていないナカさんやオーナーさんに「音楽」を勧めてたのにさぁ…。ちくしょう、気まずさ10倍界王拳じゃねーかよ。ただ、なんかここまでアレすぎると、映画を一生懸命作ってきた岩井澤健治監督たちがさらに可哀相になってきたので、できるだけ多くの人に「音楽」を観ていただいて、僕が味わっている「テメェ、こんな傑作に味噌つけやがって!ヽ(`Д´)ノ」気分になってほしいと思います。おしまい。