家族を想うとき(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

家族を想うとき(ネタバレ)

家族を想うとき



原題:Sorry We Missed You
2019/イギリス、フランス、ベルギー 上映時間100分
監督:ケン・ローチ
製作:レベッカ・オブライエン
製作総指揮:パスカル・コーシュトゥー、グレゴリア・ソーラ、バンサン・マラバル
脚本:ポール・ラバーティ
撮影:ロビー・ライアン
美術:ファーガス・クレッグ
衣装:ジョアンヌ・スレイター
編集:ジョナサン・モリス
音楽:ジョージ・フェントン
出演:クリス・ヒッチェン、デビー・ハニーウッド、リス・ストーン、ケイティ・プロクター、ロス・ブリュースター
パンフレット:★★★★☆(720円/コラムが充実! 是枝裕和監督との対談も素晴らしい!)
(あらすじ)
イギリス、ニューカッスルに暮らすターナー家。フランチャイズの宅配ドライバーとして独立した父のリッキーは、過酷な現場で時間に追われながらも念願であるマイホーム購入の夢をかなえるため懸命に働いている。そんな夫をサポートする妻のアビーもまた、パートタイムの介護福祉士として時間外まで1日中働いていた。家族の幸せのためを思っての仕事が、いつしか家族が一緒に顔を合わせる時間を奪い、高校生のセブと小学生のライザ・ジェーンは寂しさを募らせてゆく。そんな中、リッキーがある事件に巻き込まれてしまう。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




90点


ごめんなさい、ケン・ローチ監督作は1本も観たことがなくて。そりゃあ「社会問題を扱った作品」にも興味がなくはないものの、基本的には「戦闘力の高い人たちがアグレッシ部に殺し合う映画」などを愛している僕ですよ(微笑)。「ケン・ローチ監督作を観るぐらいなら、ケン・ロー出演作を観るよ(『酔拳2』とか)」派であり、当然ながら今回の新作も興味ゼロだったんですが、しかし。愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」の週刊映画時評コーナー「ムービーウォッチメン」の今週の課題作品になりましてね…。1月9日(木)、「仕方ねぇな (゚⊿゚) チッ」と舌打ちをしながら(感じの悪い文章)、横浜のシネマ・ジャック&ベティで観てきました(その後、「ハルカの陶」をハシゴ)。「…重!!! Σ(°д°;) !!?」と思ったり。


メンズデーを利用して鑑賞。平日の真っ昼間なのに、客席は8割程度埋まっててビックリ。


ちなみに、新宿武蔵野館にはこんな展示がありましたよ(「野獣処刑人 ザ・ブロンソン」を観た時に撮影)。


僕の気持ちを代弁する渋川剛気を貼っておきますね(「週刊少年チャンピオン2020年新年4+5号」掲載「バキ道」より)。



まず、若干のウソを交えながあらすじを雑に書いておきますと、舞台はイギリスのニューカッスル。ターナー家の父リッキーは夢のマイホームをゲットするために、介護福祉士として働く妻のアビーの車を売却して運送用の車をローンで購入。「ガッツリ稼ぐぜ! (o^-')b」とフランチャイズの宅配ドライバーとして働き始めるんですけれども。あまりに忙しすぎて家族と過ごす時間が取れなくなってしまい(妻もバス移動になったため時間の余裕がなくなる)、長男の高校生セブはケンカや万引きをするわ、小学生のライザはおねしょし始めるわと、次々と問題が勃発! みんなが精神的余裕を失ってしまい、仲良しだった家族は険悪ムードになっていくのです ('A`) ウヘェ


超仲良しだった家族が、忙しすぎて、徐々に崩壊していくというね。



「リッキーが『オレは食事抜きでハエのように飛び回っているのに!(`Д´)ノ』と激怒すると、とうとうアビーも『私だって食事抜きYO!ヽ(`Д´し』と怒鳴り返し、雪印乳業の社長が『私も寝てないんです!!! (´Д`;)』と切実に訴える」とか「セブの野郎がスマホを没収された腹いせに車のキーを盗んだと思ってビンタしたら、『家族が元に戻ると思ったの… (ノω・、し ゴメンナサイ』というライザの仕業だったぜ ('A`) イヤン」といった世知辛いイベントが起きる中、リッキーったら暴漢に襲われて荷物を強奪された挙げ句、負傷&尿まみれになりましてね…。そんな状況なのに、本部のマロニーは「壊れた端末と盗まれたパスポート2冊は自己責任なので、賠償金は合計1500ポンドになります (°∀°)b ハラッテネ」とほとばしるほどの鬼対応だから、アビーの怒りが頂点に!川 ゚д゚) ブッコロス! 実は元特殊空挺部隊所属だったアビーは、そのスキルを解禁してマロニーを丁寧に殺害してから、本部ビルを爆破。「オレたちの戦いはこれからだッ!(`Д´)人(`Д´し」ってな感じでエンドクレジットに突入すると、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン「Wake Up」が流れるのでしたーー。


って、ごめんなさい、終盤の中二展開は、僕が観た夢だったり(「範馬刃牙」より)。



なんとなくレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの「Wake Up」を貼ってきますね↓




すみません、なぜあらすじの終盤にウソを書いてしまったのかというと、あまりに救いがなかったから…。実際の展開では、アビーは電話越しにマロニーを罵るも自己嫌悪に陥るだけであり、最後はケガまみれにもかかわらず、リッキーったら「1日休むと100ポンドの罰金をとられる&借金を返すため」に家族の制止を振り切って仕事に向かう場面で終わるから、「マジか!(°д°;)」と。もうね、「Sorry We Missed You」という原題からキツいワケですけど(「不在連絡票の文面&家族への想い」のダブルミーニング?)、本作はストレートに重い一撃をドスンと食らわせてくるのではなく、真綿で首を絞めるようにジワジワと重量を増してくる印象というか。あまりの重さに鑑賞後の僕のソウルジェムはすっかりどんよりと濁ってしまって、立派な魔女が誕生しそうなレベル。お金を払ってこんなダウナーな気持ちにさせられるなんて、何の罰ゲームなのかと思うほどでしたよ。


体感的にはこんな重さの映画でした…って、伝わりにくいな(「週刊少年チャンピオン2020年新年4+5号」掲載「バキ道」より)。



だがしかし! 本作がスゴいのは、こんな話なのに面白いんですよ。上手く書けないんですけど、是枝裕和監督の作品を連想いたしました(パンフで両者を対談させた企画はスゲー良いと思った)。なんて言うんですかね、社会問題を扱いながらスーパー世知辛い話を描いているにもかかわらず、ところどころ笑えるシーン(駐禁ギャグやサッカー口論、小さめの自転車をこぐシーンなど)や美しい日常の場面があるため、ついつい引き込まれちゃうんですよね…。まぁ、それゆえ、どうしようもないラストがまたヘビーなんですがー。特に娘との配達シーンは笑いつつも涙が止まらなかったし、「娘を連れて配達するなんて何事だ」とか「消防車でうどんを食べに来ている」といったクレームを入れるクズは即座に舌を噛み切って死んでほしいもの、ですな(どことなく偉そうに)。いや〜、ケン・ローチ監督、この1本で一気に尊敬したし、絶賛されている前作「わたしは、ダニエル・ブレイク」も観なくちゃなぁと思ったり、思わなかったり (・ε・) ドッチダヨ


娘との配達シーンは「1日100件がノルマ」というハードな配達事情をコミカルに描いていて、素晴らしかったです。


そして、この美しいシーン! たぶん親はこういう瞬間のために働いているんでしょうな。



考えさせられたことは2つあって。1つ目は、下請け業者として働く自分のこと。本作のリッキーほどのハードワークではないものの(こんなブログを書く暇があるしね!)、現在の立場は個人事業主だったりするので、「何かあっても自己責任で!(゚⊿゚)」「ウチのルールはこうなっているので!(゚⊿゚)」的なムードはわかるなぁと(一昨年は、足の骨を折ってやろうかと思った奴がいた)。「税込」で処理されているから消費税が上がった分、こっちが損をさせられていたりとか、商品が売れないこと自体は関係ないのに担当者の給料が減るワケでもなく下請けへの予算が削られたりとか、そういうのもストレスが溜まるしさぁ…。そもそも仕事と趣味が忙しくて精神的な余裕がなくなっている気がするし、もしケガでもしたら収入が一気になくなるし。本当に妻子のことを考えるなら、こんなブログはやめて仕事も変えた方が良いのかな…なんてね。2つ目は、配達する人の苦労について。例えば、「ヤマトを蝕む『ノルマ地獄』」なんて話もあるワケで、とりあえず「消費者が出来ること」として、荷物、ちゃんと受け取ろうと思いました(小並感)。


本作で搾取するマロニー。こういうフランチャイズ地獄って普通にあるんですよね…。



結局、人間に一番大事なのは「心の余裕」なんでしょうけど、それって「十分な生活ができるお金」があってこそだったりもするワケでさ。僕の“残念な父親(故人)”も、もう少しお金があって心に余裕があったなら、「I am a father」的な人生を歩めたのかな…なんて思ったり、思わなかったり (・ε・) 2カイメ 何はともあれ、「車のスペアキーはないのかよ ( ゚д゚)」と思ったので90点という着地ですが(信用できない評価基準)、いろいろと考えさせられる上に、ちくしょう、面白い映画なので、多くの人に観てほしいし、パソナの竹中平蔵はできるだけ苦しんで死んでほしいと思っております(唐突に噴出した憎悪)。おしまい。




ケン・ローチ監督の前作。観なくては… (`Δ´;) ウーン



ケン・ローチ監督も参加したオムニバス作品。昔、観たものの、内容はまったく覚えてないというね。



ラストにレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの「Wake Up」が流れる映画を貼っておきますね。