半世界(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

半世界(ネタバレ)

半世界



2018/日本 上映時間119分
監督・脚本:阪本順治
製作総指揮:木下直哉
エグゼクティブプロデューサー:武部由実子
プロデューサー:椎井友紀子
撮影:儀間眞悟
照明:宗賢次郎
録音:藤本賢一
美術:原田満生
衣装:岩崎文男
ヘアメイク:宮崎智子
装飾:石上淳一
編集:普嶋信一
音楽:安川午朗
音楽プロデューサー:津島玄一
スクリプター:今村治子
擬斗:二家本辰己
助監督:小野寺昭洋
製作担当:松田憲一良
出演:稲垣吾郎、長谷川博己、池脇千鶴、渋川清彦、竹内都子、杉田雷麟、菅原あき、牧口元美、信太昌之、堀部圭亮、小野武彦、石橋蓮司、岡本智礼、原田麻由、牧口元美、マレロ江口剣士朗、大浦彰希、大橋逸生、中津川巧、芳野史朗、上ノ茗真二、西沢智治、保科光志、井谷三枝子
パンフレット:★★★(720円/川本三郎さんのコラムが良かった! プロダクションノートの地図も好き)
(あらすじ)
山中の炭焼き窯で備長炭の職人として生計を立てている紘の前に元自衛官の瑛介が現れた。突然故郷に帰ってきた瑛介から紘は「こんなこと、ひとりでやってきたのか」と驚かれるが、紘自身は深い考えもなく単に父親の仕事を継ぎ、ただやり過ごしてきたに過ぎなかった。同級生の光彦には妻・初乃に任せきりの息子への無関心を指摘され、仕事のみならず、反抗期である息子の明にすら無関心だった自分に気づかされる。やがて、瑛介が抱える過去を知った紘は、仕事、そして家族と真剣に向き合う決意をする。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




70点


一応、「2019年2月の観たい映画の覚え書き」では「△」を付けた僕ですが(苦笑)、基本的にはアクション映画を好むタイプなのでね、スゲー地味なムードの本作を観る気はゼロだったんですけれども。今年の3月6日(水)、愛聴しているラジオ番組「アフター6ジャンクション」「映画の中の特訓シーン特集」に出演した後、Twitterを相互フォローしている方から「『半世界』で特訓シーンが描かれている」という情報を教えてもらいまして。ううむ、なんとなく気になってしまったので、4月8日(月)、アップリンク吉祥寺で鑑賞いたしました(その後、「オアシス」をハシゴ)。「本当に半分なんですか? (゚⊿゚)」と思ったり。


スクリーン1、1/3ぐらい埋まってたような。



最初にあらすじを超雑に書いておくと、もうすぐ40歳になる髙村紘(稲垣吾郎)は、とある地方都市で備長炭職人として生計を立てていたんですが、ある日、中学時代の親友で自衛隊員の沖山瑛介(長谷川博己)が帰ってきましてね。同じく同級生だった光彦(渋川清彦)と3人で飲んでみたり、炭焼きの仕事を瑛介に手伝ってもらったり、瑛介がいじめられている紘の息子・明(杉田雷麟)に自衛隊仕込みの護身術を伝授したり、光彦が経営する中古車販売店で暴れる客を瑛介がキレて制裁したりする中、炭焼き中に紘が死亡! 「無茶しやがって… (ノω・、(ノω・、)」といったムードで瑛介と光彦が中学時代に埋めたタイムカプセルを掘り起こしたりすると、明が備長炭職人兼ボクサーを目指すっぽい感じで、映画は終わった気がするんだ…(うろ覚え)。


なんとなく花山薫を張っておきますね(「範馬刃牙」より)。



まず、先に面白かったところを書くと、本作を勧めてくれた方が予想した通り、瑛介が明に自衛隊仕込みの護身術を伝授するシーンがストライクでした。ハッキリ言って、部下がいる立場の自衛隊員であんな乱暴な教え方は今どきやらないと思いますが(汗)、とは言え、その雑味も好みだったというか。中古車販売店でチンピラ相手に戦闘力を発揮する場面も含めて(なんと擬斗は二家本辰己さん!)、本作の長谷川博己さん演じた自衛隊員は大好きでしたよ。それと、なかなかハードな炭焼きの工程を紘役の稲垣吾郎さんが実際にこなしていたのはスゲー感心したし(あれはかなり大変だったと思う)、「備長炭ってこういう風に作られるのか」というトリビアを知れる楽しさもあって、とても良かったです。あと、観客的には「オープニングがタイムカプセルを掘り出すシーンから始まる→紘が死ぬことは折り込み済み」だったワケですけど、結構アッサリな死に際はリアルに感じたし、最後に明がボクサーを目指す展開については「阪本順治監督は本当にボクシングが好きなんだな (´∀`) アラアラ」と好感が持てましたよ。

ただ、微妙に感じたところを書くと、脚本が中途半端だった印象。僕が鈍いのかもしれませんが、「世界は市井の人々の小さな営みでできている」とか「諦めるには早すぎて、焦るには遅すぎるアラフォーの男たち」とか「男たちの友情物語」とか「自衛隊員のPTSD」とか「親子や夫婦関係」とか「地方都市で働くことの困難さ」とか、さまざまな要素を盛り込んだのは良いんだけど、どれも描き切れていなかったんじゃないかと。特に違和感を覚えたのは、池脇千鶴さんが演じた奥さん・初乃で、夫に理解がある&優しく見守るわ、同窓会に行くのを止めて営業するわと、あまりに「男が考えた聖女」っぽいというか、「ステレオタイプな“包容力のある妻”」に見えちゃって、少し苦手でした(いや、夫思いの良いキャラなんですけどね…)。

そして、一番気になったのが題名ですよ。パンフによると「半世界」というのは「日中戦争の時に従軍カメラマンをしていた小石清さんの写真展のタイトル」からとったそうで。「瑛介が知ったグローバルな世界」と「紘たちが生きている地方の小さな世界」を対比させつつ、「結局、お互い“半分の世界”にいる」という意味があるだけでなく、「もうすぐ40歳=人生80年だとすると半分生きた」ということでもあるそうですが…。確かに2018年の平均寿命は女性が87.32歳、男性が81.25歳ですけど、それって1940年代生まれの人たちの話じゃないですかぁ〜(突然、馴れ馴れしく)。正直なところ、本作の主人公たちのような1970年代生まれの場合、栄養価は高いわ、環境も改善されているわ、医学も発達しているわ、プロテインも安く手に入るわと、紛れもなく健康度は上がっているのだから、今の時代、我々(40代)が管理する肉体なら140年は生きられるのではないでしょうか。となると、40歳なんてまだ1/3も生きてないことになるワケで。「本当に半分なんですか? (゚⊿゚)」と思った…って、心底どうでも良い文章を書きましたな… (ノω・、) スミマセン


ごめんなさい、この画像が貼りたかっただけでした(「寄生獣」より)。



つーか、阪本監督がパンフのインタビューで「主人公の息子が、仲間の痰を飲まされるとか、あれ僕の経験です(笑)。でも今で言うような『いじめ』とは思わなかったですよね。というのも、あの頃の不良って、ある部分では妙に分別があったんです」なんて語っていたんですが、僕からすれば「痰を飲ませる行為」はどの角度から見ても「いじめ」以外の何物でもないし、その行為に分別があるようには思えないから、監督とはそういう“根本的な部分”が違うから乗れなかったのかなぁと思ったり。な〜んて文句を書いちゃいましたが、パンフで川本三郎さんが触れていたように(サラリと便乗した文章)、確かに少し「ディア・ハンター」っぽい雰囲気(“山”とか“変わってしまった旧友”とか)があって良かったし、自衛隊&炭焼き要素は好きだったし、トータル的には観て良かったです (・∀・) ヨカッタ! まぁ、東京国際映画祭では観客賞を受賞していたりと、結構評価が高いのでね、気になる人はチェックしてみてくださいな。




本作のノベライズでございます。



10月2日にはソフトが発売されるのです。



阪本順治監督の前作。興味がないワケではないんですが…。



阪本順治監督の代表作…って、ついこれを貼っちゃいがちなアタシ。



パンフによると、幼なじみとの再会要素はこの映画のオマージュなんだとか。



パンフで川本三郎さんが引き合いに出されていて納得した映画。名作ですな。