ヴァンサンへの手紙(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

ヴァンサンへの手紙(ネタバレ)

ヴァンサンへの手紙



原題:J'avancerai vers toi avec les yeux d'un sourd
2015/フランス 上映時間112分
監督・撮影:レティシア・カートン
編集:ロドルフ・モラ
音楽:カミーユ
出演:レティシア・カートン、ステファヌ、サンドリーヌ、ミシェル、パトリック・ブリサン、ジョジアーヌ、ヴァネッサ、レベント・ベシュカルデシュ、エマニュエル・ラボリ、カミーユ
パンフレット:★★★★☆(700円/コンパクトながらインタビューやエッセイが多数収録された良いパンフ。デザインも素敵)
(解説)
ろう者の友人バンサンが突然命を絶ってから10年、レティシア・カートン監督は「ろう者の存在を知らせたい」というバンサンの遺志を継ぎ、ろうコミュニティでカメラを回し始める。美しく豊かな手話や優しくも力強いろう文化など、バンサンが教えてくれた、知られざるろう者たちの世界に触れるうち、カートン監督はろう者たちの内面に複雑な感情が閉じ込められていることに気付く。社会から抑圧されてきた怒り、ろう教育のあり方、家族への愛と葛藤。現代に生きるろう者の立場に徹底して寄り添いながら、言葉にならない心の声を丁寧にすくい取っていく。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




70点


「2018年内に感想がアップできなかった映画シリーズ」の6本目。どんな作品かまったく知らなかったんですが、チラシを見たら“変なポーズの人”が気になったので、つい前売り券を購入しましてね。都内では10月13日から上映が始まったものの、忙しくて観に行けなかった…というよくあるパターンを経て、12月16日、横浜のシネマ・ジャック&ベティで鑑賞いたしました(その後、「斬、」をハシゴ)。「知ってるぞ、コレ… (°д° )」と思ったり。


チラシやポスターに載っていたこの人が気になりまして。


思わず前売り券を購入。特典は「特製オリジナルメモ帳」でした。


劇場には記事の切り抜きがありましたよ。


劇場はシネマ・ベティの方。30人ぐらいはいたような。



唐突ですが、贅沢ホリデイズの名曲「変なポーズマン」を貼っておきますね↓




タイトルから勝手に「ヴァンサンという人物に手紙を書く話なんだろうな (´∀`)」程度のヒネリのない予想をしただけで、あとはあえて予備知識ゼロで鑑賞してみれば、まずドキュメンタリーだったから驚いたし、さらにろう者やそのコミュニティを扱っていたから、観ているうちに「知ってるぞ、コレ… (°д° )」と。2017年、愛聴していたラジオ番組「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」内で放送された「あなたの知らない手話の世界特集」と、そこで紹介されたジャーナリスト・斉藤道雄さんの著書「手話を生きる――少数言語が多数派日本語と出会うところで」、その流れで観た韓国のドキュメンタリー「きらめく拍手の音」などの中で、訴えていたことや描かれていたことのフランス・バージョンというか。「手話を禁じられて口話を押し付けられたろう者たちの過去と現在、そしてろうコミュニティの未来への展望」を描いた作品だったんですよ。


鑑賞中の僕の気持ちを代弁する阿部心三首相を貼っておきますね(「刃牙道」より)。



映画は「聴者のレティシア・カートン監督が、ろう者の友人ヴァンサンの自殺を機に、ろうコミュニティを10年間取材した」という内容であり、原題は「J'avancerai vers toi avec les yeux d'un sourd(ろう者の視点であなたに寄り添う)」なんですけど、監督が「あなたがいたら喜んだと思うわ (´∀`し ウフフ」といったムードで、劇中のナレーションでヴァンサンにやたらと話しかけるから、「ヴァンサンへの手紙」という邦題にしたんでしょうな(東京ろう映画祭で上映された時のタイトルは「新・音のない世界で」だったとか)。ヴァンサンと親しかった人たちへのインタビューを観ていると「口話教育がどれほどろう者に寄り添っていなかったか」がビンビン伝わってくるし、「子どもに人工内耳を埋め込むべきかどうか」といった“リアルな苦悩”が映し出されたりもするので、なかなかヘビーな気持ちになりましたよ…。まぁ、ちょっと微妙に感じたところを率直に書くと、登場人物が多すぎる上に主張も被るから、「この人って、さっきも出てきた人だったっけ? (`Δ´;)」と混乱するところが少なくなかったです。


ろうでゲイだった友人ヴァンサンが自殺しちゃいまして。


レティシア・カートン監督は、彼と親しかった人や、彼が憧れていた人などに話を聞いていくのでした。



ただ、非常に感動したのが、ろうの俳優レベント・ベシュカルデシュ(映画を観る前に気になった“変なポーズの人”)が手話詩を披露するシーンでして。そりゃあ手話は言語なんだから「詩」という表現があるのは当たり前であり、そんなことに驚くというのは逆に「ろう者の世界」を舐めていたようで申し訳ない気持ちになったんですが(汗)、とても美しかったです。映画終盤、聴者である歌手のカミーユがろう者たちと繰り広げたパフォーマンスも素敵でしたねぇ…(しみじみ)。一応、最後の展開を書いておくと、「ろうコミュニティの戦いはこれからだッ!ヽ川`Д´)ノ ウォォォォッ!」ってな調子で終わってたんじゃないかしらん(うろ覚え)。


レベント・ベシュカルデシュのパフォーマンスは見事のひと言。マジで感動しましたよ。


たぶんジャン=クロード・ヴァン・ダムからインスパイアされたのでは…という電波な文章(「ブラッド・スポーツ」より)。


フランスの人気歌手カミーユとろう者たちとのパフォーマンスも素晴らしかったです。



なんとなく「リトルプリンス 星の王子さまと私」で流れたカミーユの素敵な歌を貼っておきますね↓




何はともあれ、素晴らしいドキュメンタリーでしたヨ (・∀・) ヨカッタ! 本編の上映後に手話言語学を専門とする森壮也さんのトークショーがあって、オトクな気分になれたのも良かったです。本当にね、「ろうの世界」は聴者の僕たちが思っている以上に「豊かな文化」であることがわかるので、機会がありましたらチェックしてみてくださいな。




ろうの世界を描いた有名なドキュメンタリー。本作はかなり影響を受けているそうな。



実にタメになる斉藤道雄さんの著作。詳細はこちらを読んで!



ずっと気になっている全編手話映画を貼っておきますね。



佐村河内守さんに密着した作品。僕の感想はこんな感じですが、後日談としてこの漫画を読むべし!m9`Д´) ビシッ