龍三と七人の子分たち(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

龍三と七人の子分たち(ネタバレ)

龍三と七人の子分たち※ムービーウォッチメンのリンクなどを追記しました(5/26)

龍三と七人の子分たち

2015/日本 上映時間111分
監督・脚本・編集:北野武
プロデューサー:森昌行、吉田多喜男
ラインプロデューサー:小宮慎二、加倉井誠人
アソシエイトプロデューサー:川城和実、福田太一、二宮清隆
撮影:柳島克己
照明:高屋齋
美術:磯田典宏
録音:久連石由文
編集:太田義則
音楽:鈴木慶一
キャスティング:吉川威史
助監督:稲葉博文
製作担当:里吉優也
衣装:黒澤和子
装飾:龍田哲児
メイク:宮内三千代
記録:吉田久美子
整音:堀内戦治
音響効果:柴崎憲治
出演:藤竜也、近藤正臣、中尾彬、品川徹、樋浦勉、伊藤幸純、吉澤健、小野寺昭、安田顕、矢島健一、下條アトム、勝村政信、萬田久子、ビートたけし、清水富美加、山崎樹範、川口力哉
パンフレット:★★★★☆(820円/「スゲー良いパンフだな~」と思ったら、中居雄太さんの仕事でした)
(あらすじ)
組長を引退したものの、ヤクザの性分が消えないために普通の老人として生きていけない龍三(藤竜也)。そんな毎日にいら立ちを募らせる中、彼はオレオレ詐欺にだまされてしまう。人々をだます若い連中を許すわけにいかないと、龍三はかつての子分たちを召集して世直しをすることに。年齢に関係なくまだまだいけるとオレオレ詐欺のグループを倒しに向かう彼らだが、行く先々でとんでもない騒動を引き起こしていく。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




78点


※今回の記事は、「ヒーロー・ネバー・ダイ」のネタバレに触れているので、気を付けて!

なんとなく前売り券を買ってしまったものの、予告編を見たら、それほど観に行く気がしなくなっちゃって。ちょっとツイッターを眺めてみれば、僕がフォローさせていただいている方たちもあまり好きじゃない人が多めだったりしたので、期待値はドンドン下降。とは言え、今週のムービーウォッチメンの課題映画になったので、今週、TOHOシネマズ新宿で観てきたんですが…。結構笑っちゃいました (・∀・) ヨカッタ!


「群盗」を観た後、TOHOシネマズ新宿へ。
TOHOシネマズ新宿

スクリーン3、そこそこ混雑してましたよ。
スクリーン3


なんで予告編を見て、観る気がしなくなった」のかと言うと、「安っぽい『RED/レッド』みたいな感じだったらイヤだなぁ」と。いや、「RED/レッド」みたいな老人活躍映画自体は嫌いじゃないものの、ある程度の予算があるアクション映画だから楽しいワケで。この「龍三と~」の場合、飛行機の場面とか見る限り、かなりチープでキツそうな印象。さらに「ジジイが最高!」というキャッチコピーも微妙というか、「今の半グレとは違って、昔のヤクザは義理人情があって良かった…」的な内容なのかなと思うと、「ALWAYS 三丁目の夕日」よりは「本当は怖い昭和30年代」派の僕的にはそれも好きになれなくて。まったく期待していなかったんですが、実際に作品を観てみたら、「こいつら、狂ってる!Σ(゚д゚;) ヒィィ!」としか思えない内容だったからビックリですよ。


なんとなくカイオウの電波発言を聞いて驚くリンの画像を貼っておきますね。
三角絞めでつかまえて-く、狂ってる!


この映画、基本的に“まったく共感できない元ヤクザたちのベタなコント”で構成されてまして(指詰め関連のギャグとか)。これは僕の好みの問題なんですが、昔ながらのヤクザコントみたいなのが大好きなだけに、この時点でツボに入りましてね。さらに、オレオレ詐欺といった老人たちを食い物にする犯罪行為を取り上げつつも、それに対抗する龍三たちもキッチリ「暴走老人!」として描かれているから、結構フェアに感じたというか。安易に「昔のヤクザは良かった…」的な描き方をするのではなく、「昔のヤクザも十分迷惑でタチが悪い」という風に見せていて、そのバランスに好感が持てたんですよね~。

それと、役者さんたちもスゲー良かった。特に主演の藤竜也さんの枯れた雰囲気には、ちょっとほだされたというか。僕的には「ベイシティ刑事」とかのイメージが強いんですけど、「もうおじいちゃんなんだなぁ」って思うとシンミリしたところもあって…。龍三たちはどう考えても迷惑な存在な人たちだし、決して近寄りたくはないんですけど、なんとなく劇中での活躍振りを微笑ましく観られたのでした。


藤竜也さん、良かったです。女装して歩くくだりは「バードマン」を連想しました。
龍三(藤竜也)

各々特殊スキルを持つ元ヤクザたちですが、意外なほど役に立たないというね。
8人の元ヤクザたち


僕的にグッときたのが終盤の展開。中尾彬さん演じる“はばかりのモキチ”が京浜連合に殺されてしまうワケですが、棺桶に入った死に顔がリアルで無残だったので、すっかり「ここから北野映画的な“凄惨な殺し合い”が始まるのか!?」と。殴り込みにモキチの死体を連れて行くのも「ヒーロー・ネバー・ダイ」のラウ・チンワンを連想させるし、やっとヤクザ映画的なカタルシスが始まるのかと思いきや! 敵味方ともにモキチの死体を攻撃するというコント的な展開が連発。僕は「新春かくし芸大会」ハナ肇さんの銅像コントが大好きだっただけに、ここで爆笑してしまって…(しみじみ)。というか、よくよく考えれば、若くて強い不良たちに老ヤクザたちが対抗するなら、その一番の武器は“狂気”しかないワケで。京浜連合の人たちが「こいつら、狂ってる!Σ(゚д゚;) ヒィィ!」と逃げ出す展開はスゲー納得&愉快だったのです。


なかなか凶悪なムードの京浜連合の人たちでしたが…。
京浜連合

結局、こんな感じで逃げ出してました(「漂流教室」第6巻より)。
三角絞めでつかまえて-逃げる子どもたち


何が素晴らしいって、最後は「お笑いウルトラクイズ」を彷彿とさせる“バスでのカーチェイス”になるんですけど、ここでも龍三たちは別に“正義”ではなくて。京浜連合と同じ…というか、それ以上に迷惑な人たちとして描かれてましてね(バスが通った後、後処理する人たちのヤレヤレ感がイイ!)。「1ミリも反省しないまま敵と一緒に逮捕される」という着地も清々しくて、「マッドな老人たちのマッドな物語」として予想以上に楽しんだ次第。


最後は警察が全員逮捕。アッケラカンとした龍三たちが爽やかなのです。
全員逮捕!


正直、乗れないところもあったというか。龍三が行動するたびオナラの擬音が入るのはどうかと思ったし、あまりにもオチが読める展開が連発されるので(競馬場の「5-5」のくだりとか)、ちょっと飽きるところもありましたよ。で、“早撃ちのマック”(品川徹)と京浜連合の佐々木(川口力哉)の「仁義を切る」くだりのやり取りもスゲーしつこいというか、佐々木がいちいちツッコミを入れるのが非常にウザく感じたんですけど…。もしかすると、あれは世代間の文化の違いを見せようとしたというか、「一億総ツッコミ時代」と言われる現代の無粋さを表したかったのでは…って、深読みですかね (・ε・) ウーン

まぁ、そんなワケで、思っていた以上に楽しんじゃいました。21世紀の北野武監督作は全部観ているワケじゃないんですけど(汗)、まさかこの作品を自分が「アウトレイジ」より気に入るとは思わなかったです。とにかくベタなヤクザコントが連発されるので、好みが分かれるところではありますが、気になる人は優しい気持ちで観ると良いザマス (´∀`) オシマイ

宇多丸師匠の的確な時評がアップされたので、聴いてみてくださいな。番組構成作家の古川耕さんが借りパクしていたという「忘れられぬ人々」も観なくては…。




映画のサントラ。もの悲しい雰囲気が良さげなのです。



北野武監督のコメディ映画といえば、これがありましたな。蝶天タッグが出てくるくだりは好き。



このビートたけし監督作は苦手でした…。