藁の楯 わらのたて(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

藁の楯 わらのたて(ネタバレ)

藁の楯 わらのたて

三角絞めでつかまえて-藁の楯 わらのたて

2013/日本 上映時間124分
監督:三池崇史
製作指揮:城朋子、ウィリアム・アイアトン
エグゼクティブプロデューサー:奥田誠治、小岩井宏悦
プロデューサー:北島直明、坂美佐子、前田茂司
原作:木内一裕
脚本:林民夫
撮影:北信康
照明:渡部嘉
美術:林田裕至
録音:中村淳
装飾:坂本朗
編集:山下健治
音楽:遠藤浩二
主題歌:氷室京介
助監督:渡邉武
音響効果:柴崎憲治
CGIディレクター:太田垣香織
キャスティングプロデューサー:伊東雅子
ラインプロデューサー:今井朝幸、善田真也
制作担当:堀岡健太、中島正志
警察監修:古谷謙一
出演:大沢たかお、松嶋菜々子、岸谷五朗、伊武雅刀、永山絢斗、余貴美子、藤原竜也、小沢和義、山口祥行、本宮泰風、新妻聡、山崎努、本田博太郎
パンフレット:★★★(700円/福岡ー東京間の地図が好きです)
(あらすじ)
孫娘を殺害された政財界の大物・蜷川(山崎努)が、新聞に「この男を殺してください。清丸国秀。御礼として10億円お支払いします」と行方不明の犯人殺害を依頼する全面広告を掲載。日本中がにわかに殺気立ち、身の危険を感じた犯人の清丸国秀(藤原竜也)は福岡県警に自首する。警察は警視庁警備部SPの銘苅一基(大沢たかお)、白岩篤子(松嶋菜々子)ら精鋭5人を派遣し、清丸を福岡から警視庁まで移送させる。しかし、清丸への憎悪と賞金への欲望にかられ、一般市民や警護に当たる警察官までもが5人の行く手を阻む。(以上、映画.comより)

予告編はこんな感じ↓




65点


※今回の記事は、原作小説「セブン」のネタバレにも触れているので、知りたくない人は気をつけて!
※ごめんなさい、今回の記事はダラダラと読みにくいので、そういうのが苦手な人は読まない方が良いです…。


この映画、かなり観たかったんですよ。「三池崇史監督のアクション映画はチェックする主義」というのもありますが、何よりもストーリーが面白そう。「逆境の中、悪党を移送していくうちに友情が芽生える」的な映画は「3時10分、決断のとき」とか「16ブロック」とかあったし、「子どもを誘拐された金持ち父さんが、貧乏父さんに上から目線のアドバイスをかましながら、犯人に懸賞金をかける」という「身代金」なんてのもあったし(一部、不要なウソ)、「『逃がしたら1億ドル』という賞金目当てのクズどもと戦いながら、麻薬王を護送する」という「S.W.A.T.」もあったワケですけど、「10億円の賞金が掛けられたクズの命を守らなくちゃならない!(;`Δ´) ヌゥ」というのは、なかなかフレッシュな設定だと思って。ユナイテッド・シネマとしまえんレイトショーで観て来たんですが、「もう少し頑張ってほしかった!ヽ(´Д`;)ノオシイ!」と思いました。


ユナイテッド・シネマとしまえんレイトショー割引、実に重宝しております。
三角絞めでつかまえて-ユナイテッド・シネマとしまえん


男の子と違う40歳中年男性って、「好き」と「嫌い」だけで「普通」がないワケですが(別に上手くない「デリケートに好きして」オマージュ)、どちらかといえば好きな映画ではあるというか。いや、よくよく振り返ると、ちくしょう、大好きではあるんですけど、スゲー微妙に感じるところもあって、引き裂かれる僕の心…(なんだこれ)。とりあえず、雑な個条書きでお話を書いておきますね↓(良かったところは赤字、微妙だったところは青字にしております)


① ロリコンクズ野郎・清丸が政財界の大物・蜷川の孫娘を殺害し、10億円の賞金が掛けられる!Σ(゚д゚) ナンデスト!
匿ってくれてた人に襲われて身の危険を感じた清丸は福岡県警に自首 ┐(´ー`)┌ ヤレヤレ
③ 警視庁のSPの銘苅や白岩他、計5人のチームで清丸を東京(警視庁)まで移送することに ( ゚д゚) メンドクセー
飛行機が無理になったので、高速道路を使って、大型輸送車で移送することに (`∀´) アンシンデスナ
ニトログリセリンを積んだタンクローリーが襲撃して「ダークナイト」っぽい場面に (・∀・) オマージュデス
⑥ 機動隊員の襲撃により、新幹線での移送にプラン変更 (´・ω・`) シカタナシ
⑦ なぜか新幹線に乗ってることがバレて、ヤクザが襲撃!→神箸刑事(永山絢斗)が死亡… ('A`) マモルカチ、アルノカヨ...
子どもを人質に取って清丸を殺そうとする中年も登場!→射殺した関谷刑事(伊武雅刀)が離脱… ('A`) ウンザリ
新幹線の線路上に障害物が!→静岡から徒歩で向かうことに (; ゚д゚) マジカヨ!
⑩ ヒッチハイクできた…と思いきや、運転手は清丸に娘を殺された被害者遺族→襲撃してきた!∑(゚Д゚;) タイヘーン!
⑪ 位置がバレてたのは、奥村刑事(岸谷五朗)のせいだったことが発覚→移送チームから排除 (`Δ´) ウラギリモノ!
⑫ 奥村のせいで清丸が刑事2人を人質に取っていることに→清丸への射殺命令が発動!(ノω・、) モウダメポ...
⑬ ところが、気の良いタクシー運転手のおかげで検問突破! そのまま警視庁へGO!(o^-')b ヤッタネ!
⑭ と思いきや、清丸が不意を突いて白岩を殺害! 銘苅が激怒して「セブン」のラストっぽいムードに! (・∀・) オマージュデス
⑮ 結局、銘苅は清丸を殺さず、警視庁まで移送完了 (´д`;) ツカレター
⑯ すると、そこに蜷川が登場! 仕込み杖で清丸を殺そうとするので、銘苅が説得開始 ( ゚д゚) ウゼー
清丸が仕込み杖をゲットし、蜷川を殺害しようとする→銘苅が盾に!Σ(゚д゚;) スッゲ...
⑱ 清丸の判決は死刑。どうせ死刑になるならもっと殺せば良かった (・ε・) チェッ
銘苅が白岩の息子を引き取ったムードでエンドクレジットに… (´∀`) オツカレサマデシタ


まず、野暮なことから書いていくと、「物語にリアリティを感じない」という雑音はあって。「殺人教唆で賞金はもらえないんじゃないの?」という疑問が湧くし、そもそも蜷川が関連する人や企業の社会的信用に大ダメージを与える行為だから、さすがに誰も蜷川に従わないような。つーか、裁判員制度が導入されている昨今、一度、強姦殺人で捕まった奴がまた同じような手口で少女を殺してたら確実に死刑だろうし、別に「情報提供者に1億円!ヘ(゚∀゚*)ノ」とかで十分だったんじゃないかしらん。

移動手段に関しては「飛行機に細工されたからって、次の便で行けよ(航空会社の威信にも関わるんじゃないの?)」とか「お偉いさんが乗って来たヘリで行けよ」とか思っちゃう。警察関連の描写では、「シングルマザーのSPって…」とか「警視庁の捜査一課の刑事にしては、永山絢斗さんは若すぎ」とか「なぜか防弾チョッキを着用せずに殺される神箸と白岩」とか。うるさいことを書くと、「序盤ですでに警官が留置場で清丸を襲撃している→単独行動をさせないよう、小隊長&分隊長&横の繋がりが監視してる」だろうから、機動隊員がああいう感じで襲う確率ってスゲー低いと思う(「ギャンブルで借金があって~」という動機はリアルだけど)。というか、警察上層部を操れるくらいなら、清丸殺害を依頼済みの警官で移送チームを組めば良かったのにねー。

な~んて言いつつも、こういう些末な部分は、アクションが良かったり、映画に勢いがあったりすれば、気にならないものでもありまして。実際、序盤の清丸vs匿ってた男・田中(新妻聡)のバトルから始まって、留置所の警官や病院の看護婦や機動隊員やタンクローリーなどが襲撃してくるあたりまでは、設定的に変だとは思いつつも、「なかなか面白いじゃん!(*゚∀゚)=3ムッハー」と普通に楽しめてたんです。


序盤、清丸がいろいろな人に襲われまくるのは良かったですな。
三角絞めでつかまえて-みんなが襲ってくる!


ところが、物語が進行するにつれて、いくら良い感じのところがあっても、それを上回る“変な部分”があるから、スムースに乗り切れなくなってくるんですよね…。例えば、映画後半。「逃走した清丸が寝ている少女を襲おうとする場面の不穏なムード」はスゲー良かったりするのに、その直前に優秀なSPであるハズの白岩が「あれ、なんですかね? (・ω・)ノ」「えっ、何もないじゃない…って、逃げられた!Σ(゚д゚;し イヤーン」というコントのような手口で騙されてたりするから、相殺されて素直に楽しめないというか。


この場面自体は、娘を持つ父親的には「早く逃げてぇー!ヽ(´Д`;)ノ」と凄まじくハラハラしたんですがー。
三角絞めでつかまえて-早く逃げてー!


例えば、クライマックス。白岩を殺されて激怒した銘苅が、「“妻が『人を守るのがアナタの仕事 川o^-')b』と言った”なんて話をしたけど、死人がそんなこと言うワケねーだろ!ヽ(`Д´)ノ」「お前を誰よりも一番殺したかったのはオレだぁぁぁっ!ヽ(`Д´)ノ」「このあらいを作ったのは誰だぁぁぁっ!ヽ(`Д´)ノ」と己の心の闇をぶちまける場面ですよ(1つウソ)。モロな「セブン」感に溢れつつも、迫力があってカッコ良かったんです、僕的には。


この銘苅が激怒してぶちまけるシーンはグッときた! 大沢たかおさん、見直しましたよ~。
三角絞めでつかまえて-怒った銘苅

そして高笑いする清丸=藤原竜也さんも心底ムカついて良かったんですけど、その直前の展開がなぁ…。
三角絞めでつかまえて-高笑いする清丸


でも、その白岩が殺されたのが、「優秀なSPのくせに、また清丸から目を離したせい」だから、何か呑み込みづらい心境。百歩譲って「母親の自殺を知って慟哭する清丸に“母として”同情した→隙が生まれた」と思ったりしてもさ、「そもそも防弾チョッキをなんで着てないの?( ゚д゚) バカナノ?」って、誰もが思うじゃないですか…。


スキがありすぎなSP・白岩。このキャラはちょっとダメだったと思います。
三角絞めでつかまえて-スキがありすぎな白岩(松嶋菜々子)


最も酷いのがラスト。銘苅が蜷川の盾になった場面自体は嫌いじゃないのだけれども、「清丸を放っておいて、蜷川とダラダラ会話する」のは茶番すぎ。周囲の警官たちが清丸を襲わないのはまだスルーするとしても、せめて身柄を確保しておくべきだし、「清丸が仕込み杖を奪って襲ってくる」なんて、バカバカしすぎてクラクラしてきちゃう。もうね、バキで言うところの消力が使えそうになるほど脱力しちゃいましたよ(わかりにくい例え)。その後の清丸の「どうせ死刑になるなら、もっと殺せば良かったナー (・ε・) チェッ」的な発言は好みだったし、白岩の子どもを銘苅が引き取って終わるムードは「良かったね… (ノω・、)」と思ったけどさ、マジで最後の銘苅×蜷川×清丸の展開は興醒めでした。


蜷川を説得する銘苅。左下には清丸もいるんですが、周囲の人たちは傍観しすぎだよなぁ…。
三角絞めでつかまえて-残念すぎる場面


って感じで、ダラダラと文句を書きましたけれども、そうは言いつつも、序盤の展開が良かったように、それ以外にもグッとくる場面はそれなりにあって。もうね、僕がこの映画で最も愛しているのが、小沢和義さん&山口祥行さん&本宮泰風さんの3人で編成されたチーム893による新幹線での襲撃シーン!ヽ(`Д´)ノ 僕が勝手に映画史に残ると思い込んでいる“「ハンテッド」の新幹線バトル”には及ばなかったものの、三池作品でお馴染みのコクのある顔の3人組が登場した時は「キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!」とテンションがガン上がりで、脳の血管が切れて死ぬかと思うほどでした(大げさな文章)。あの3人組は100点としか言いようがなく、「ああいう場面がもっとあれば良かったのに…」とつくづく思ったり。


白黒画像を貼っておきますね。素敵だけど、プライベートでは絶対近寄りたくない人たちですな。
三角絞めでつかまえて-チーム893


一応、貼っておきます。ニンジャ軍団が新幹線の乗客を虐殺していくシーンが観られるのは「ハンテッド」だけ!




それと、余貴美子さん演じるタクシー運転手のキャラクターが出てくるあたりは好きでしたね。なんて言うんですか、「大金で叩いたからって、言うことを聞くと思うなよ ( ゚д゚) 、 ペッ」という精神性って素敵だなぁと。清丸を襲撃した人たちの事情も明らかになったりしてさ(機動隊員以外は、同情できなくもない感じ)、「怪物と戦う者は、自らも怪物になってしまう」的な言葉のように、「憎悪するあまり、世間からすれば蜷川もクズになってしまった」というのが伝わる良い展開だと思いましたよ。まぁ、彼女がいつの間にかいなくなってたのはビックリしましたがー(「別に彼女がタクシーを降りる必要はなくね?」って、あとで白岩を死なせる展開のためなんでしょうけど)。


現実に「殺せば10億円」とか言われたとしても、この運転手さんみたいな人がほとんどな気がします。
三角絞めでつかまえて-タクシー運転手・由里(余貴美子)


最初の方で「警視庁の捜査一課の刑事にしては若すぎ」なんて書きましたけど、永山絢斗さん演じる神箸刑事の“熱さ”にも胸を掴まれました。彼が銘苅に「被害者の死体」について話す場面は本当にその通りというかさ。警察学校時代、授業でいろいろな事件の死体の写真を見させられたし、現実でも見ましたけど、「変わり果てた姿」ってのは本当に凄惨なものじゃないですか。特に子どもの死体なんて悪夢そのものなワケですけど、彼の演技からは「その悪夢を見た」感がしっかり伝わってきて、非常に良かったですね。


熱い男・神箸ですが、ヤクザに撃たれて死んじゃうのでした。なぜ防弾チョッキを着てなかったのか…(しつこい)。
三角絞めでつかまえて-神箸刑事(永山絢斗)


ちなみに昨日、急に思い立って原作小説を読んでみたら、これがスゲー面白い!ヘ(゚∀゚*)ノ この偏差値の低い感想文で「ここがおかしいんじゃないですかねぇ (`∀´) ケケッ」なんて偉そうに指摘していたところは、すべてそれなりに説得力があるムードで説明されてまして。さらに、おかしな要素はほとんど映画オリジナルなのがわかるというね(例えば、移送チームはみんな防弾チョッキを着てるし、白岩があんなスキを見せることはないし、そもそも白岩は独身男だし、神箸もオッサンだし、みんなが見守る中での三者面談シーンもない)。「藁の楯」の意味もやっと理解できましたよ(「戦場で藁の楯を持つ→意味がない=清丸を守る銘苅の行動に意味はあるのか?」ってこと…ですよね?)。

映像化するために工夫したところもあるんですが(「未遂でも1億円もらえる設定」とか、小説が書かれた2004年と現在のギャップをいろいろ埋めたりしてる)、正直、「移送完了直前に銘苅の説得を受けた蜷川が10億円の賞金制度を止める→安心してたら、それでも襲ってくる奴がいて、清丸が重傷を負う→『もう殺しても金はもらえないんだぞ!』と思いきや、被害者の父親だった!→銘苅は『でも、やるんだよ!』と瀕死の清丸を抱えて警視庁に乗り込む!ヽ(`Д´)ノ クソクラエ!」という原作のラストの方が全然良くて。「なんであんな改変をしちゃったのかなぁ」と思ったりした次第(ただ、小説に出てくる“サライヤ”という悪魔のようなキャラについては、そんなに好きじゃありませんが)。

ううむ、無駄に長々と書いて、読みにくくなっちゃいましたな…。この手のアクション映画が日本で作られること自体がありがたいと思っちゃうし、僕的に好きな場面は多いし、役者さんたちも頑張ってたのでね、「いろいろと惜しいなぁ… (´・ω・`)」と。確かに変なところが多いから、人によってはストレスが溜まるかもしれませんけど、期待値を下げて観る分には楽しめる…んじゃないでしょうか。時間と財布に余裕がある人は原作を読んでから観に行くと、劇中の“説明が足りなくて説得力が薄い部分”が補完できて、良い気がいたします (・ε・) オシマイ




木内一裕先生の処女作。予想外に面白くて、他の小説も読みたくなりました。
三角絞めでつかまえて-原作・藁の楯
藁の楯 (講談社文庫)


今回とは真逆の設定になる三池崇史監督作。僕の感想はこんな感じ
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サントラも貼っておきますね。
三角絞めでつかまえて-サントラ・藁の楯
藁の楯 わらのたて Original Soundtrack


リチャード・ドナー監督×ブルース・ウィリス主演作。それなりに好きです。
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ジェームズ・マンゴールド監督による「決断の3時10分」のリメイク。クライマックス、2人で走り出すシーンが死ぬほど好き。
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今、振り返ると、なかなかスゴい面子が出演しているクラーク・ジョンソン監督作。そんなに期待しない方が良いカモ。
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ロン・ハワード監督×メル・ギブソン主演作。劇場で観たのに、内容を全然覚えてないんですよね…。
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「重要な人をチームで守る映画」では、これがスゲー好き。僕の感想はこんな感じ
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一応、貼っておきますね。原田芳雄さんと夏木マリさんが素敵すぎる映画。フリードキン監督作と間違えないで!
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