夢売るふたり(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

夢売るふたり(ネタバレ)

夢売るふたり※シネマハスラーへのリンクなどを追加しました(11/11)

三角絞めでつかまえて-夢売るふたり

2012/日本 上映時間137分
監督・脚本:西川美和
出演:松たか子、阿部サダヲ、田中麗奈、鈴木砂羽、木村多江、安藤玉恵、江原由夏、やべきょうすけ、大堀こういち、倉科カナ、古舘寛治、小林勝也、伊勢谷友介、香川照之、笑福亭鶴瓶
(あらすじ)
東京の片隅で小料理屋を営む貫也(阿部サダヲ)と妻の里子(松たか子)。店は小さいながらも順風満帆だったが、火事で全てを失ってしまう。ある日、貫也が常連客と一夜を共にし、すぐに里子の知るところとなるが、里子は結婚詐欺で金をだまし取ることを考案する。結婚願望の強いOLなど寂しい女たちの心の隙につけ込んで、店を再開するための資金を稼ぐ二人。しかし、夫婦の関係に影が差し始め……。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




55点


※今回の記事は、女性や「夢売るふたり」が好きな人は不快に思う可能性があるので、読まない方が良いかもしれません。

西川美和監督の映画は「ゆれる」「ディア・ドクター」を観てて、どちらとも結構好きだったんですが…。今回の「夢売るふたり」は、「主人公夫婦たちが結婚詐欺をする」という物語に対して、憎悪がバーニングしそうだったから、観に行くのを躊躇してたんですよ。ただ、今週のシネマハスラーの課題映画に選ばれちゃったので、新宿ピカデリーで観て来ました。憎悪がバーニングしましたYO!ヽ(`Д´)ノ ナニコレ


劇場入口には著名人のコメントが展示されてました。
三角絞めでつかまえて-コメントの展示


まったく関係ありませんが、サバイバーの「Burning heart」を貼っておきますね↓




いや、良いところはたくさんあって、まず、役者さんたちは良かったです。特に奧さんの里子を演じた松たか子さんが素晴らしくて。心情を演技で表すのが見事だったと思うし、自慰行為シーンをこなした心意気も買いたいところ(「放尿→ナプキン装着」にはドン引きしましたが)。僕的には、浮気した夫にキレて風呂で問いつめるシーンが好みでした。この映画の彼女に関して文句をつける人はあまりいないのではないでしょうか。


健気な良妻だった里子が牙を剥くシーン。この手の女性って、旦那が浮気した時点で見限る気がしなくもない。
三角絞めでつかまえて-怖い松たか子


ウエイトリフティング選手のひとみを演じた江原由夏さんも素敵すぎ。てっきりガチのアスリートを連れて来たのかと思いきや、なんと女優さんだそうで。この映画のために4カ月トレーニングをしたとのことですが、大したモンだなぁと感心しました。僕はかなり好きなキャラクターであり、贅沢を書くと、「怪物だと思った? 川ノω・、) シクシク」なんて嘆かずに“己の怪物性”(これはこれで素敵な魅力)をキッチリ自覚した上で、範馬勇次郎がジャガッタ・シャーマンをこねたように、自分を騙した貫也をそのパワーでグチャグチャにしてほしかったですな。


劇中の設定では140キロを挙げられるひとみ。
三角絞めでつかまえて-江原由夏さん

できればこんな風に貫也をこねてほしかった…って、別の映画になっちゃうね (ノ∀`) テヘ
三角絞めでつかまえて-可哀相なシャーマン


その他、デリヘル嬢の紀代を演じた安藤玉恵さんも良かったなぁ。惜しみなくオッパイを出す姿勢が素晴らしいのはもちろんのこと、冒頭、客に必死に媚びてサービスする様子とか(場所はソープっぽかったけど、デリヘルと掛け持ち?)、チェンジのくだりとか、留学資金を貯めてる設定とか(ありがちで良し)、もう切なくて切なくて… (ノД`) あれでシングルマザー設定だったら即死してたと思います。最後、暴力的な元彼(伊勢谷友介)と元サヤに収まりそうになるオチは全然好きじゃないけど、強く生きてほしいものです。あと、探偵役の鶴瓶さんもなかなか胡散臭い&恐ろしくて、ぜひ「アウトレイジ48」あたりに参戦してほしいと思ったり。


意外と芯が強い風俗嬢・紀代。生でのサービス提供はリスキーだからやめてー!ヽ(TДT)ノ
三角絞めでつかまえて-安藤玉恵

鶴瓶さんの怖い役ってのは素晴らしいけど、背中に刺青が入ってるのはベタすぎでは。
三角絞めでつかまえて-怖い鶴瓶


演出的には、リアル一辺倒だとハードな作品になっちゃうからか、意外とコミカルに描く部分も多くて。映画序盤、貫也と里子が結婚詐欺で稼いでくシーンは、ちょっと愉快でもあるんですよね。例えば、貫也が咲月(田中麗奈)に電話している時に里子がカンペを必死に書いて渡していく場面は笑っちゃいましたよ。


夫が女性を騙す様子を近くで監視する里子の姿とかもユニークでした。
三角絞めでつかまえて-可愛い松たか子


終わり方も結構好きというか、「里子が図面などを片手にダッシュで逃げる→図面が手から離れていく→夢がなくなっていく…」というシーンとか、「刑務所に入った貫也と、魚市場で働く里子(フォークリフトの運転振りが最高!)が、つかず離れずに飛ぶカモメのつがいを見る」というシーンは、非常に良かったです(とは言いつつも、こちらで語っているラストシーンの方がグッときた気がする)。

ただ、乗れないところも結構ありまして。僕的には、貫也の“一夜の浮気”が発覚して、里子が腹いせの罰ゲーム的に始めたにせよ、なんで夫婦で結婚詐欺を始めるのかが全然ピンとこなかったんですよね…(今まで真っ当に生きてた割には葛藤もないし、そもそもお前らの痴話ゲンカに他人を巻き込むなって話なんですが)。大体、いくらファンタジーっぽい話だとしても、自分が働く店で露骨な結婚詐欺をするのって、バカなんじゃないかと。あと、貫也たちの共感能力のなさを表すにしても、虐待事件のニュースを見て「ひどい親だねぇ!」なんて言ったりするのは唐突だったような。包丁の使い方だって、「火事の時ですら手放さなかった包丁をほったらかしにしてた→滝子(木村多江)との暮らしを望んでる!?」って描写は面白かったけど、子どもが鶴瓶さんを刺す展開はどうかと思って。「以前はウソをつけなかった男が、詐欺を繰り返したことで、子どもを守るために上手なウソをつけた」って考えると良い話だけど、子どものあのレベルの傷害行為を「なかったこと」にするのって、かなり微妙でもあるじゃないですか…。


まぁ、ピエール瀧さんと漫$画太郎先生も「樹海少年ZOO1」でそれまでの展開を突然「なかったこと」にしてましたがー。
三角絞めでつかまえて-なかったことに…


で、ハッキリ言って、最も乗れない…どころか、ブチのめしたかったのが貫也の野郎ですYO!ヽ(`Д´)ノ ファック! 当然ながら演じた阿部サダヲさんは何も悪くないんですが、とにかくムカついてムカついて仕方がなくて。例えば「賭博黙示録カイジ」ライクな「私はアナタを騙しましたよ (`∀´) ザワザワ」「いえいえ、私こそアナタを騙したのです (・∀・し ザワザワ」的な騙し合いバトルだったら気にしませんし、悪党から金を騙し取ったりする分には「溜飲が下がる!ヘ(゚∀゚*)ノ ザマァ!」って感じですけどね、「結婚詐欺」ってのは本当に酷いと思うのです。


奧さんの指示に従ったら、結婚詐欺師としての才能が開花してしまう貫也。
三角絞めでつかまえて-ムカつく阿部サダヲ


「そうよ、あなたと腕を組んで祭壇に上る夢を見ていた私を!ヽ川TДT)ノ ナゼナノ!?」というのは結婚詐欺の歌ではありませんが、軽い気持ちで人心を弄ぶような奴は「くたばっちまえ!ヽ川`Д´)ノ アーメン!」ってことじゃないですか。恋心を利用して金を引っ張ろうなんて、100パーセント、クズの所業。一応は「奧さんがいる」と伝えることで、「向こうは不倫を自覚→人の旦那に手を出すような奴は酷い目に遭ってOK!(o^-')b シカタナシ!」って免罪符をゲットしてる気分なのかもしれませんけど、テメェたちからアプローチしてるんだから、そんな理屈はないですよ。

こういう詐欺って、たまに知った風な人が「夢を見た方も悪い!(`∀´)」なんてことを偉そうに言ったりしますが、「夢を見ちゃ悪いのかよ!ヽ(`Д´)ノ」と。悪いのはいつだって騙す方(キッパリ)。詐欺野郎に「あ、この人とならもしかして…」と思って金を貢いだ自分に絶望して、自殺しちゃう人だっているワケでさ。好みの問題ですけど、最後、被害に遭った女性たちが「それでも前を見て歩いてます 川・∀・)」みたいなムードだったのは、ごめんなさい、「おやおや、ずいぶん都合が良い話ですな ( ´_ゝ`) フーン」って思ったり。


なんとなく「ブラックエンジェルズ」での松田鏡二さんの怒りの叫びも貼っておきますね。
三角絞めでつかまえて-夢を見続けちゃ悪いのかよ!


そもそも貫也に関しては、序盤の“男らしくないにも程がある姿勢”も超イラ立ったし(仕事が上手くいかなくて腐るのは仕方ないけど、ラーメン屋をバカにしたのは最悪)、コイツの罪に関しては「咲月に凹られて刑務所に入った」程度のアマアマ処理ではまったく納得できないというか。例えば、被害女性の親がヤクザだったりして、「ほったらかしにした包丁を一生握れないように指を吹っ飛ばす」といったアミバの最後”風の処理を施してほしかったなぁ…(暴論)。


アミバの指が吹っ飛んだのは自分のせいなんですけどね(「北斗の拳」第4巻より)。指がなくては包丁も握れないか…。
三角絞めでつかまえて-可哀相なアミバ


つーか、今の世の中、結婚なんてシステム自体が良くないのかもしれません。劇中で咲月が言う「自分が結婚もできないような女だと思われるのがイヤなの… 川´・ω・`)」ってセリフは超リアルで、女性の結婚プレッシャーって半端じゃないんだろうなぁと。先日、AVライター・雨宮まみさんのコラムで「男だったら、35歳で独身で、仕事がうまくいってて『かわいそう』と言われるなんて、あり得ないと思うんです」という文章を読んで、すっかり「かわいそう!ヽ(TДT)ノ」なんて思ったワケですが(台無しな感想)、最近は女性の社会進出もめざましいし、離婚する夫婦だってスゲー多いし、「わざわざ結婚する必要なんてない」と感じる人が増えても不思議じゃないんですよね。これからの“結婚”は、プロレスで例えるなら「シングルで戦うレスラーもいれば、タッグで活躍するレスラーもいる」程度の気軽なイメージに変えていった方が良いのかもしれませんな(適当すぎる文章)。


映画とは関係ありませんが、僕がこよなく愛するタッグチームの動画を貼っておきますね↓ 素敵すぎ!ヽ(´Д`;)ノ ハァハァ




ううむ、何が何やらな感想になっちゃって、すみません…。僕的には主人公が生理的に合わなすぎて、「良さそうな映画だけど、あまり好きじゃない (´・ω・`)」って感じ。だから、そんなにオススメはしませんけど、人によってはハマる気がするので、気になる人は劇場へどうぞ~。

宇多丸師匠が実にわかりやすい批評をされてるので、聴いてみてくださいな~。




こんな関連書籍が出ておりました。



西川美和監督作。ラストがスゲー好きです。



西川美和監督作。結構好きです。



吉田大八監督による結婚詐欺師の映画。僕の感想はこんな感じ