プンサンケ(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

プンサンケ(ネタバレ)

プンサンケ

三角絞めでつかまえて-プンサンケ

原題:豊山犬/PHUNGSAN DOG
2011/韓国 上映時間121分
監督:チョン・ジェホン
脚本・製作総指揮:キム・ギドク
製作:チョン・ユンチャン
撮影:イ・ジョンイン
美術:イ・ジョンゴン
編集:シン・チョル
照明:イ・ビョンソン
音響デザイン:イ・スンヨプ
録音:キム・サンウン
音楽:パク・イニョン
特殊効果:キム・ソンテ
衣装:シン・ジヨン
セットデザイン:ヤン・フンソプ
出演:ユン・ゲサン、キム・ギュリ、キム・ジョンス、オダギリジョー
(あらすじ)
ウルとピョンヤンの間をたった3時間で依頼を受けた荷物を運ぶ謎の男(ユン・ゲサン)は、北朝鮮の煙草の銘柄にちなみ“プンサンケ”と呼ばれていた。男は軍事境界線を超え、北と南に別れた離散家族の手紙やビデオレターなどさまざまなもののを運ぶ。ある日、彼は韓国に亡命した北朝鮮高官(キム・ジョンス)の若い愛人イノク(キム・ギュリ)を運ぶ依頼を受けるが……。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




75点


今年観て面白かった「哀しき獣」に似たムードのポスターを見て気になった&予告編も良い感じだったので、ユーロスペースで観て来ました。まぁ、良かったですよ。


壁には記事の切り抜きが貼られてました。
三角絞めでつかまえて-記事の切り抜き


簡単に書くと、「韓国で『トランスポーター』を撮ったら、思った以上にヘビーになっちゃいました (・∀・)」って感じ。僕は恥ずかしながら、この映画に脚本と製作総指揮として関わっているキム・ギドク監督の作品を1本も観たことがないんですが、「映画秘宝 2012年 08月号」モルモット吉田さんによる紹介記事によると、チョン・ジェホン監督はお弟子さんで、この映画には“ギドクテイスト”がかなり盛り込まれているそうです(例えば、ギドク映画では“喋らない男”はお馴染みなんだとか)。

僕的に良かったのは、主人公である“プンサンケ”と呼ばれる謎の運び屋で、スゲー魅力的なキャラクターでしたよ。演じたユン・ゲサンが渋くてカッコイイ上に、「38度線を棒高跳びで越える」という発想がユニークだし、「自由の橋の短冊で依頼を受ける」のも「シティーハンター」の「掲示板にXYZ」っぽくて好きだし…。映画冒頭、「北朝鮮から韓国へ子どもを運ぶ(ここでプンサンケの“運ぶ手順”をわかりやすく描写)→無事届けた子どもに素敵な笑顔→タイトル」という流れで一気にハートを掴まれちゃった感じ。ちなみに、平壌とソウルが3時間程度で往復できるってのは結構ビックリしましたね。


本名も経歴も一切不明なプンサンケ。話さないのは失語症なのかと思ってたけど、そうではないみたい。
三角絞めでつかまえて-謎多き主人公

拷問されるシーンでは、鍛えられたボディが露わに! なかなか良いですな (´∀`) ウフフ
三角絞めでつかまえて-ナイスバディ!

依頼する時は自由の橋の短冊に書くそうです。
三角絞めでつかまえて-自由の橋にXYZ

韓国に亡命した北朝鮮高官の愛人イノクを北から運んだことで、運命が変わってしまうというね…。
三角絞めでつかまえて-キム・ギュリ

全然気付きませんでしたが、開始早々、オダギリジョーさんが北朝鮮の兵士役で数秒間カメオ出演されてました。
三角絞めでつかまえて-オダギリジョー


あと、クライマックスの展開が面白かったです。韓国の情報員と北朝鮮の工作員たちに翻弄された挙げ句、愛したイノクが無惨に死んでしまうと、プンサンケは超激怒。両者を1人1人拉致しては同じ部屋に閉じ込めていって、さらに武器を次々と差し入れていくというね…(いわゆる“ソリッド・シチュエーションスリラー”っぽい感じ)。このブラックユーモアたっぷりに描かれる“人間ゲーム”は、「結局、一度はお互いを信じようとしたのに、やっぱり信じ切れずに銃を向け合っちゃうのね ┐(´ー`)┌ ヤレヤレ」って感じで終了。最後は、38度線を越えようとしたプンサンケが銃殺されて、映画は終わってました。


韓国と北の工作員が閉じ込められた部屋でバトル! グダグダでしたな~。 
三角絞めでつかまえて-グダグダバトル


その他、「イノクが殺されそうになった時、プンサンケが声にならない声を出して、必死に止めようとする→キス」というシーンは、2人の愛情だけでなく、2つの政府に翻弄される男女の切なさが伝わってきて、胸が熱くなりましたね…( ;∀;) イイシーンダナー キャッチーだったのが、北朝鮮の機関が韓国の情報員におこなった長い棒による肛門への拷問シーンで、斬新すぎ&痛すぎて、非常に不穏な気持ちになりましたよ ('A`) ゲンナリ つーか、基本的にこの映画に出てくる情報員&工作員たちは、上司クラス以外は全員、精神性が低く描かれていたのも、政府の役人に手厳しい韓国映画っぽさが感じられて良かったです。あんなリアルな世界観で、諜報機関があそこまで残念に見える作品って、なかなかないんじゃないかしらん。


このキスシーンは超グッときました… (ノω・、) カワイソウ
三角絞めでつかまえて-キスシーン

北朝鮮で捕らえられた韓国の工作員。必死な顔をしているのは…。
三角絞めでつかまえて-拷問される工作員

手を弛めると、肛門に棒がドンドン入ってしまうから!Σ(゚д゚;) ヒィィ! これはマジで恐ろしかったです…。
三角絞めでつかまえて-肛門に棒が!


もうね、いろいろな暗喩に満ちているというか。例えば、プンサンケが「棒高跳びで38度線を越える」のは「本来は簡単に飛び越えられるべきモノなんじゃないの?」ってことだろうし。プンサンケが韓国側と北朝鮮側に拷問されるシーンがわざわざあったりするとか、クライマックスの展開とかは、同じ穴のムジナってことなんだろうし。最後に何度も38度線を越えるプンサンケの必死な姿は、国が分断されて今も苦しんでいる人々の焦燥感を反映しているのだと思ったし…(勝手な解釈かもしれませんが)。そういうのって、スゲー良いとは思うんです。


韓国も北朝鮮も、拷問時に同じことを聞くのが印象的でしたな。
三角絞めでつかまえて-南か、北か?


ただ、全体的にやりすぎにも感じちゃったというか。そういうドラマ展開にするためにキャラクターが行動しているように見えちゃったところもあって…。例えば、プンサンケは、素手で隠れ家に乗り込んで、韓国の工作員たちを全員ぶちのめすくらいの能力を有する割には、北朝鮮高官に背後から鉄パイプで殴られて昏倒したりとか(韓国の情報局を敵に回している最中&北朝鮮高官がプンサンケに敵意剥き出し状態なのに!)、ところどころマヌケすぎて納得がいかないんですよね。いくら追い詰められているとはいえ、北朝鮮高官のエキセントリックな嫉妬にも超イライラしたし、そもそもプンサンケとイノクが惹かれ合う展開も、かなり唐突に感じちゃったし…。役者さんとか設定とか物語自体は好きなんですがー。贅沢を書くと、アクション描写も、そんなに悪くはなかったけど、できればもう少しちゃんと見せてほしかったかなぁ。


この北朝鮮高官の嫉妬振りが唐突かつ異常で、ちょっと萎えましたよ。
三角絞めでつかまえて-キム・ジョンスの野郎!


って、文句を書いちゃいましたが、なんとこの映画って、主演とスタッフが全員ノーギャラで作った低予算映画なんだそうで。それでこのクオリティは相当頑張ってるのではないでしょうか。とにかく主人公が魅力的だったので、僕としては超惜しい作品という印象。「絶対面白い!ヽ(`Д´)ノ サッサトミロ!」とは言えませんが、韓国映画が好きな人なら一応はチェックしといた方が良いですぞ。




チョン・ジェホン監督作。未見ですが、評判は良さそう。
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ルイ・レテリエ&コリー・ユン監督×ジェイソン・ステイサム主演作。まぁ、愉快な映画。スー・チーが好き。
三角絞めでつかまえて-トランスポーター
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今年観たナ・ホンジン監督作。僕の感想はこんな感じ
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