スマグラー おまえの未来を運べ(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

スマグラー おまえの未来を運べ(ネタバレ)

スマグラー おまえの未来を運べ※シネマハスラーへのリンクを追加しました(12/16)

三角絞めでつかまえて-スマグラー映画

2011/日本 上映時間114分
監督:石井克人
原作:真鍋昌平
出演:妻夫木聡、永瀬正敏、松雪泰子、満島ひかり、安藤政信、テイ龍進、小日向文世、高嶋政宏、我修院達也、阿部力、島田洋八
(あらすじ)
俳優への道をあきらめ、その場しのぎの日銭でしのいでいる砧涼介(妻夫木聡)は、借金返済のため、日給5万円という高額の運送アルバイトをすることに。砧はいそいそと初仕事にかかるものの運送屋とは名ばかりで、その内容は死体などのヤバイ荷物の運搬と処理だった。たった一度のミスすら命取りになる危険な世界に足を踏み入れた砧は……。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




55点


※今回の記事は、かなり読みにくいと思うので、気をつけて!

石井克人監督の映画は、「鮫肌男と桃尻女」が面白かった印象があって。「山のあなた 徳市の恋」も“草なぎ剛さんが手をブラブラさせながらダッシュするという奇行”に爆笑したし、原作・脚本で参加したアニメ「RED LINE」も勢いがあって嫌いじゃなかったし。今回の「スマグラー おまえの未来を運べ」原作漫画は読んだことがなかったけど、そこそこは楽しそうと思ってまして。ちょうどシネマハスラーの課題映画にもなったということで、新宿バルト9で観てきました。感想は「ちょいプラスかな… (´・ω・`)」って感じですかね。

冒頭、妻夫木聡さん演じる砧がパチスロの裏ロム絡みで警察に捕まって、チャイニーズマフィアの張(阿部力)に追い込まれるあたりは「ほほう、テンポが良いですな (゚∀゚*)」と若干うれしくなったんですけど、その直後に松雪泰子さん演じる“ゴスロリファッションの闇金業者・山岡”という超非現実的なキャラクターが出てきちゃったので、「ああ、こういうケレン味重視の世界観なのね ('A`)」と恐ろしくテンションが下がりまして…。映画中盤くらいまでは、うまく言えないんですけど、作品全体を覆う“雑音”に結構イライラしました。

例えば、ヤクザの取引現場に暗殺者の“背骨”(安藤政信)と“内臓”(テイ龍進)が乗り込んでくる場面。ヌンチャクを使って皆殺しにする“背骨”は超僕好みであり、「あら、素敵なメンズじゃないの!ヘ(゚∀゚*)ノ」と思ったんですが(誤解を招く表現)、その直前、過剰な演技の中で繰り広げられる“ヤクザがカエルを飲まされた話”とか“組長の禁煙話”には心底ゲンナリしたし、背骨の戦闘シーンでの“恐ろしく古さを感じる長いスローモーション&ヤクザの口からカエルが飛び出す面白演出”には悪い意味で唖然としてしまったりして…。高嶋政宏さんが演じるヤクザの河島もオーバーな演技がキツいしさ(いちいち部下に「ブスな彼女」とか言うのも気が利いてると思えない)、“背骨”と“内臓”の仲間割れバトルはなかなか良かったものの、「ううむ、この映画、面白くなるのかしら… (´Д`;)」と不安になってたんですよ。


安藤政信さん演じる背骨はカッコ良かった! 中国語も良かった!
三角絞めでつかまえて-背骨さん


ところが! 「砧のミスで、捕らえていた“背骨”が逃げる→砧が“背骨”に成りすます」ことになって、河島が砧をハードに拷問し始めると、さっきまでは面倒くさかった高嶋政宏さんの過剰な演技が意外と楽しくなってきたから、映画って不思議だよネ (o^-')b(馴れ馴れしく) その他、永瀬正敏さん演じるジョーと山岡とのスプリット画面での会話の安っぽさにはガッカリしたし、組長の女・田沼ちはる(満島ひかり)の万能振りとかはちょっと苦手だったし(可愛いんですけどね)、荷台からの脱出時&ジョーとの戦闘時における“背骨”のミュータント的な動きにも恐ろしく失望したし(アレはないと思う…というか、だったら“内臓”とのタイマンもそんな感じにすべき)、“背骨”が額を撃たれてからも会話するという演出にも残念な心境になりましたけど、徐々に好きな部分の方が多くなってきたというか。


最初はマジで面倒くさかったけど、拷問時の高嶋政宏さんの変態演技は好きでした。
三角絞めでつかまえて-高嶋兄


ジョーが片腕を犠牲にして“背骨”を倒すシーンはグッときたし(ここはスローにして良かったと思う)、砧が覚醒→背骨に成りきって河島を倒す場面も「おおっ!∑(゚Д゚)」と思ったし(何の障害もなく屋敷から脱出できたのは「ハァ?(゚Д゚)」って感じましたが)、最後、ジョーが退職金をくれて砧が涙ぐむあたりは「これで借金返せるね、良かったね~ (・∀・)」程度にはジーンとしちゃいましたよ(あんなハードな拷問受けた割には回復が早すぎるとも思いましたが)。


この覚醒シーンは結構好き。
三角絞めでつかまえて-覚醒!


で、見終わった後、未読だった原作漫画を読んでみたら、これが思った以上に面白くて。読んでから映画を振り返ると、映画が基本的に原作に忠実だったのでビックリ。その上で、“内臓”をゲイに設定することで、殺し合いにまで発展する仲間割れの説得力を増そうとしてたり、警官に職質されて演技するシーンで、砧が自ら血を垂らす&目を充血させることで、砧の演技センスを強調したり、ジョーが警察を殺さないことで、“悪党”に見えないようにしてまして。

拷問シーンを長くしていたのは、映画&妻夫木聡さんの見せ場を増やすためなんだろうし、その長時間の拷問に耐えさせるべく「砧の右耳が不自由な設定にして、拷問時に左耳を聞こえなくする→積極的なギブアップができないようにする」など、映画のオリジナル要素はいろいろ考えた感じはしました。ただ、それらがすべて功を奏してたとは思えないというか(拷問があれだけ長いと、いくら耳が聞こえなくても音を上げると思う)、「闇金業者の中年男性がゴスロリ女性に」といった雑音的な改変&演出はやっぱりいらなかったんじゃないかなぁと。原作のようにシリアスなムードに徹した方が良かったような気がしたんですけど…どうなんでしょうか。

あと、あの「ヤクザにキッチリ拘束し直されたりする危険性もあるけど、今、殺されるよりはマシなんだから、最悪、“背骨”に成りきって自力で脱出しろ」という超リスキーな作戦自体は好きなんですけど…。ちょっと希望を言うなら、せっかく序盤に砧が「野獣死すべし」を観てる場面を入れてるんだから、あそこでエアガンを使って真似したりする描写があったら、最後の“覚醒→脱出”に燃え&説得力が増したと思うので、そこは少し残念でした。

ってことで、僕的には不満もあったけど、トータルで考えるとプラス要素の方が少し多かったので「55点」になった次第です。正直、原作漫画の方が雰囲気が良くて好きなんですが(話にツッコミどころはあるんだけど、あまり気にならない感じ)、安藤政信さんの“背骨”はカッコ良かったし、最後の砧の覚醒からの脱出も気持ち良かったので、実写版もそんなに嫌いではない印象。積極的にはオススメできないけど、気になる人は観ても良いような気がしないでもないです。

逆の意味で石井克人監督の作品が観たくなってくるほど愉快な宇多丸師匠の批評がアップされているので、要チェックですぞ!




原作漫画。名言多し。ちょっと怖いけど、「闇金ウシジマくん」も読もうかしら。



石井克人監督作。結構面白かったような記憶。



映画主題歌。「スーパーフライ」と聞くと、ついジミー・スヌーカを思い出すのは昭和のプロレスファンの悪い習性。