監督失格(ネタバレ) | 三角絞めでつかまえて2

監督失格(ネタバレ)

監督失格

三角絞めでつかまえて-監督失格

2011/日本 上映時間111分
監督:平野勝之
プロデュース:庵野秀明
音楽・主題歌:矢野顕子
企画・製作:甘木モリオ
音楽プロデューサー:北原京子
編集:李英美
整音:郷右近秀利
出演:林由美香、平野勝之、小栗冨美代、カンパニー松尾
(あらすじ)
1996年、映画監督の平野勝之は当時恋愛関係にあったAV女優林由美香と共に、東京から北海道への自転車旅行に挑戦する。最初の1週間は旅のあまりの過酷さに毎日泣き続けていた由美香だったが、ついにひと月以上をかけて礼文島に到着する。その後、2人は別れたものの、彼女の死の直前まで友人としての関係は続いており……。(以上、シネマトゥデイより)

予告編はこんな感じ↓




80点


※今回の記事は、かなりグダグダなので、そういうのが苦手な人は読まない方が良いです。

僕は映画秘宝という雑誌をこよなく愛してまして、立ち上げた町山智浩さんとか、その盟友の柳下毅一郎さんとか、編集の田野辺尚人さんとか大好きなワケですけど、そんな彼らがこの「監督失格」を超オススメしてまして(町山さんの紹介はこちらで聴けます)。さらには宇多丸師匠まで褒めてたとなれば、「これは観に行かねばならぬ!ヽ(`Д´)ノ」ということで、TOHOシネマズ 六本木ヒルズに行ってきました。何とも言えない気持ちになりましたよ… ('A`)

僕は平野勝之監督が撮った作品も、亡くなった林由美香さんの出演作も、1本も観たことがなくて。「由美香」の高い評価は映画秘宝で読んでたけど、そんなに観る気は起きなくて。柳下毅一郎さんが書籍を出されたりしてたけど、それでもそんなに興味が湧かなくて。一応、今回の映画を観るにあたって、「由美香」を観ておこうかと思いつつも、近所のレンタル屋には置いてないし、その元になったAVV&Rプランニングのサイトで観られるっぽいけど、わざわざ登録する気にはなれなかったりして。とりあえず「林由美香さんが死んだ時の映像が流れるっぽいね ヘ(゚∀゚*)ノヘラヘラ」程度の知識しかない状態で観たんですよ。

宇多丸師匠が「予備知識なくても全然大丈夫な作りです」とおっしゃってたのは確かにその通りで、特に序盤から中盤にかけては1997年に作られた「由美香」の再編集的な内容ということもあって、そこで「林由美香さんがどういう人だったのか」「そんな彼女を撮る平野監督はどんな人なのか」が、2人を知らない人にも分かるようになってるんですね。

「由美香さんはキュートな人だな~」「平野監督は面倒くさい人だな~」「あ、コイツ、手をあげやがった! 最低だな~」「確かに『由美香』は面白そうな映画だな~」なんて思いながら観てると、場面は2005年になって、由美香さんと連絡が取れなくなって。由美香さんのお母さんと部屋に入ったら、彼女の死体を発見してしまうというね。死体そのものは映らないんですけど、お母さんの慟哭が本当にキツい。廊下に置いたカメラがずっとその様子を撮影してたワケですけど、ここだけでも「よく撮ったなぁ…」と思いましたよ。

その後、平野監督は作品を作れなくなってしまって、彼女の呪いから逃れようと、今回の「監督失格」を作ることになるんですが、なかなか作業が進まなくて。で、最終的に「本当は由美香とお別れしたくなかった→彼女が取り憑いていたんじゃなく、自分が彼女に取り憑いていた!」という事実に気付いて、腰痛の状態で自転車をこぎながら、泣きながら「いっちまえー!」と絶叫して終了という。ううむ、僕もスゲー泣きましたよ。

ただ、正直、とにかくテロップがウザかったです。特にイライラしたのが終盤で、心情をいちいち文字にされるのが台無しにしてると思いました。あれ、どうなんですかね? ラストの自転車の疾走感と絶叫にはグッときてただけに、本当にガッカリしましたよ。

あと、ごめんなさい、由美香さんが死んだ後の平野監督の苦しみがもっと観たかったなぁと。これもまたテロップの説明が多くて、「ああ、苦しんだんですかそうですか」と、どこか冷めて観ちゃうというか…。予告編を観たり、インタビューを読んだりすると、かなり大変だったと思うんですけど、映像からはあまり伝わってこなかったです。庵野秀明プロデューサーとかに追い詰められて、苦しんだ末にこの作品がやっと出来たってことを映像で観たかったんですよね…。

大体、平野監督は奥さんがいるんですよね? 別に由美香さんとの不倫関係自体は良いんだけどさ、「死んでからの5年間、家庭はどうだったのか?」とかスゲー気になるじゃないですか。もちろん撮ってる側は頭の良い人たちだと思うので、“愛する人との別れの映画”である反面、“何か都合良く自分に酔ってる男の映画”でもあることはちゃんと自覚してると思うんですけど(最後に流れる歌が「しあわせなバカタレ」なのはそういうことかと)、だからこそ、そこも含めてムキ出しにしてほしかった…ってのは無茶振りなんでしょうか。僕は平野監督のことをあまり知らないだけに、そこら辺のこともやっぱり映像で見せてほしかったです。

って、文句をダーッと書いちゃいましたけど、それは僕的にスゲーもったいないと思ったからなんですよ。再編集した「由美香」の映像は面白かったし、由美香さんの部屋に入るシーンの緊迫感と衝撃度はハンパじゃないし、最後の自転車で疾走する姿は恐ろしく感動的だっただけに(状況はまったく違うんですけど、スティーヴン・キングの「IT」のラストを思い出したり)、いろいろなところが心底惜しいと思わされたというか…。

あと、これは非常に個人的な話ですが、僕自身、まだ「最愛の人が死ぬ」なんて経験はないんですけど、警察官だったころに仕事で“その現場”に立ち会うことは多くて。ああいう状況で、隣の部屋のベランダから入って、僕が死体を発見したこともあったりして、そういう時の家族の慟哭する姿は本当に厳しかったんですよね…。僕が警察を辞めた一番の理由は「そういう現場に耐えられない」ってことだったので、当時を思い出してかなり凹みました。だから、辞めて10年以上経つ現在、ちょっと警察をディスったりもしますけど、そういう仕事を日々こなしている現役の警察官はやっぱり尊敬してしまうというかね。まぁ、「それがなんだ」って話ですが。

ってことで、僕なりの不満点はあるし、全然好きな映画じゃないんですけど、“1人の魅力的な女性が亡くなってしまった現実”や“1人の母親が娘の死を噛みしめる場面”、“1人の男が愛してた女性にお別れをする姿”などを見せられると、どうしても胸を揺さぶられざるを得ないというか、「人が死ぬってのはどういうことなんだろう…」とか考えさせられたりもして、もう何が何やらな心境に追い込まれる映画なので、一見の価値はあると思います。以上!ヽ(`Д´)ノ




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松江哲明監督作。観るつもりだったんですけど、井口昇監督の批評を読んで、ためらいが…。
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